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平和実現のために日本社会と企業ができること

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SB国際会議2023東京・丸の内

関根氏(左)、高橋氏

Day2 ブレイクアウト

SDGsの目標16は、「持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する」こととしている。だが、ロシアによるウクライナ侵攻や、中東地域で続く紛争などにより多くの人の命が奪われ、難民として生活をしなければならない状況が、今なお続いている。こうした世界状況を背景に平和実現のために、日本社会と企業は何ができるのか、それぞれのジャンルで活躍するエキスパートらが、7回目にしてSB国際会議初となる「平和」セッションに挑んだ。(蒼井海)

ファシリテーター
関根健次・一般財団法人PEACEDAY理事
パネリスト
大川哲郎・大川印刷 代表取締役社長
瀬谷ルミ子・認定NPO法人REALs(Reach Alternatives) 理事長
高橋悠太・KNOW NUKES TOKYO 共同代表

まず、「企業としてどのように平和貢献できるのか?」をテーマに、ファシリテーターを務める関根健次氏が自身の事業について紹介。関根氏は、「戦争や紛争も、文化的、経済的、国際的交流を通じて予防できる」という信念のもと、自社や財団を通じ、ワインを通じて内戦から逃れたシリア難民の仕事起こしや自立支援、SDGsをテーマとした映画の配給や上映会サイトの運営事業などに取り組んでいる。

ロビー活動をもとに制作したアプリ「議員ウォッチ」

こうしたビジネスを通じた平和貢献への取り組みで、忘れてはならないのは、平和な社会の実現に向けて活動するNGO団体の存在だろう。それぞれが掲げる目標を実現するために、具体的にどのように取り組み、必要とされる支援をどのように行うのかを知れば、企業としての平和貢献の在り方が自ずと見えてくる。

現役の学生が運営しているKNOW NUKES TOKYOの高橋悠太氏は、団体の目標である「核兵器のない世界を作る」ために大切なのは、何より「政策を決める人たちと直接会って対話をする中で核軍縮を進めていくこと」だと断言する。

KNOW NUKES TOKYOは、政策決定などに影響を与え得るアドボカシーを含むロビー活動を中心に展開。そうした活動で収集した情報を元に「議員ウォッチ」というアプリを制作した。各議員が核兵器の問題にどういう立場をとっているかが、スマートフォンでわかるようになっている。政治家の核軍縮への向き合いや、有権者の投票行動にも影響を与え得るものだ。

大事なのは争いの芽をつむこと

一方で、中東やアフリカ、アジアで、テロや内戦などの争いを現地の当事者の人々と共に未然に防ぐ支援に力を入れるREALs(リアルズ)の瀬谷ルミ子氏は、平和に貢献する支援の在り方について、主に二つの側面があると話す。既に災害や争いが起きてしまった場合の「緊急支援」、つまり救助や食料支援、国外退避支援など生き延びるための術に関わる支援と、事前に争いの予兆を察知し争いの芽をつむ「予防のための支援」だ。

瀬谷氏は、「被害が起きてから壊れたものを直す復興支援のほうが見た目にもわかりやすく、そうした方に支援が集まりやすい。だが、被害が起きる前に争いや災害を防ぐ支援に力を入れている」と話す。戦争などが起きてしまうと、加害者と被害者との間で憎しみなどが生まれ、何世代にも渡って負の連鎖が続いてしまうからだ。さらに「そうした人々の心は、争いごとを再燃させる政治的なプロパガンダにも利用されやすい」と語る。

瀬谷氏
大川氏

「平和」を意味する手話をパラパラ漫画にして配布

高橋氏と瀬谷氏が共通して訴えていたのは、「ほかの誰かではない、私たち一人ひとりが行動すること」の重要性だった。そのことを、ビジネスの立場で体現しているのが、大川印刷の大川哲郎氏だ。1881年に創業し、142年の歴史のある同社は、自然再生エネルギーを100パーセント利用した「風と太陽で刷る印刷」で知られている。

同社は、広島の平和祈念公園に世界中から数多届く折り鶴を、平和の願いのこもった再生紙として蘇らせ、その由来を一部に印字して、人々の平和への思いを届けていくといった取り組みなども行っている。また、アフガニスタンからの難民申請者を雇用したり、ウクライナとロシアの平和を願い、両国の「平和」を意味する手話を、パラパラ漫画にしてイベントなどで無料配布したりしている。

大川氏は、「平和貢献の神髄は、SDGsといったトレンドの先にある。ビジネスで平和貢献をしようとする自分たち企業家は、その本質をしっかり理解しないといけない」と力説する。

セッションは、「支援のハードルを低くして、それぞれの企業に合ったさまざまな取り組みができればいい」と結論付けた。最後に大川氏は、「愛国心を持つなら、地球に持て。魂を、国に管理させるな」という米国のギタリスト、ジミ・ヘンドリックスの言葉を紹介し締めくくった。