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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

サステナビリティ先進国のデンマーク企業に共通する「事実を伝えること」の重要性

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SB国際会議2023東京・丸の内

左から萩原氏、Nassehi Nejad氏、リネマン氏

Day2 ブレイクアウト

大量消費型のビジネスから持続可能なビジネスへ、化石燃料から再生可能燃料への移行が喫緊の課題と叫ばれている中で、企業は事業としての収益性や持続可能性と同時に、人々のウェルビーイングな暮らしを考えていかなければならない。デンマークはサステナビリティで世界トップクラスの国となっており、デンマーク企業から学ぶことは多い。(井上美羽)

ファシリテーター
青木茂樹・SB国際会議 アカデミックプロデューサー / 駒澤大学 経営学部 教授
パネリスト
Sara・Nassehi Nejad・Vestas Wind Systems A/S Group Sustainability Sustainability Specialist
萩原あずさ・ノボ ノルディスク ファーマ 人事本部 人材組織開発部 部長
フィリップ・ リネマン・Kontrapunkt Executive Creative Director

サステナビリティは経営戦略と密接に結びつける必要があるため、社内でムーブメントをつくりだすことが重要だ。セッションには、サステナビリティへの移行を成功させたデンマーク企業3社のパネリストが登壇した。ブランド戦略やロゴやホームページのデザインなどのビジュアルアイデンティティを手がけるコントラプンクト、世界88カ国に風力発電機を設置し、2030年までにカーボンニュートラルを目指すベスタス、糖尿病を中心とした病を克服するための医療器具や製薬の開発を世界展開しているノボ ノルディスク ファーマだ。

「一般的なマーケティングとサステナブルマーケティングの違いは何か?」という青木茂樹氏の問いに対して、コントラプンクトのフィリップ・ リネマン氏は「サステナビリティ戦略を持つことです。サステナブルマーケティングとは売り込みではなく、知識を共有するためのコミュニケーションであり、マーケティングというよりはむしろ、ジャーナリズムと言えるかもしれません。事実に基づいて伝える上で、クリエイティビティを要し、ビデオやグラフィックスを使い、シンプルなメッセージで感動させなければなりません。ストーリーを創造するのではなく、事実を伝えるのです」と明確に答えた。

この意見にノボ ノルディスクの萩原あずさ氏も同意し、「売るのであれば製品のアピールをしますが、サステナブルを考える時は透明性、まずは自分達が何者なのか、どのようなフィロソフィーのもとにこの商品をつくって、CO2をどのくらい排出しているのかといった、良い面も悪い面も含めて真実を語っていく必要があります」と応じた。

そして、ベスタスのSara・ Nassehi Nejad 氏も、「グリーンウォッシュは避けなければいけない」と強調した上で、「透明性が鍵になるので、サステナビリティレポートがあることは大切です。サステナビリティに関する数字、データ、政府からの情報も開示する。ランキングや格付けなどの客観的事実も含めて、投資家はその企業のパフォーマンスを見ているので、適切なデータを開示することは必須です」と続けた。

次に、「サステナビリティの実現のために、社内の全ての部署を巻き込むことは可能なのか?」と言う青木氏の問いに対して、Nassehi Nejad 氏はこう答えた。「私たちの会社で言うと、どうすれば風力タービンの羽をリサイクルできるのかという課題に対し、財務部、調達、法務部、セールス、マーケティングなど全ての部署が責任を共有することで解決に導きました。これらをすべて統括し、サステナビリティのゴールと財務的なゴールをリンクさせるのがサステナビリティ部署の役割です」。

また荻原氏は「サステナビリティをいかに経営の本質に結びつけるかは人事にとっても重要」と話し、日本支社としてノボ ノルディスクのバリューやカルチャーを共有し、社員一人ひとりがサステナビリティを自分事化していく仕組みが社内にしっかりとあることを説明。「顧客には未来に働く社員も含まれています。ですから、私たちのバリューに共感できるかどうかを入口の段階から発信し、自社のフィロソフィーを伝えます」と採用時からのコミュニケーションの重要性についても言及した。

最後に「サステナブルマーケティングの実現はライフタイムの価値を最大化することと似ていると思うが、そのための課題は」という質問が会場から出され、リネマン氏が「透明性をもってすべてをオープンに話すこと。課題も学びも弱みについてもきちんとデータを開示し、共有すればそれが安心につながる」と強調し、セッションを終えた。

井上美羽 (いのうえ・みう)

埼玉と愛媛の2拠点生活を送るフリーライター。都会より田舎派。学生時代のオランダでの留学を経て環境とビジネスの両立の可能性を感じる。現在はサステイナブル・レストラン協会の活動に携わりながら、食を中心としたサステナブルな取り組みや人を発信している。