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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

JSBIトップランキング企業のコミュニケーション戦略は「エンゲージメント」と「次世代アプローチ」

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SB国際会議2023東京・丸の内

(左から)江戸氏、飯塚氏、釣流氏、秋月氏

Day2 ブレイクアウト

企業はサステナビリティへの取り組みをただ発信するだけではなく、きちんと情報を伝え、生活者を巻き込んだ取り組みにしていくことが重要である。その手段のひとつが、事業戦略を併せて伝えるステークホルダーとの対話を軸にしたコミュニケーションだ。サステナブル・ブランド ジャパンが生活者の視点からSDGsに対する企業の取り組みとブランドイメージを調査した「ジャパン・サステナブルブランド・インデックス(JSBI)」で上位にランクする住友林業、セブン&アイ・ホールディングス、ウォルト・ディズニー・ジャパンが、コミュニケーションをテーマに議論。「エンゲージメント」と「次世代アプローチ」がキーワードとして浮かび上がった。(松島香織)

ファシリテーター
江戸克栄・県立広島大学大学院 経営管理研究科 ビジネス・リーダーシップ専攻長 教授
パネリスト
飯塚優子・住友林業 執行役員 サステナビリティ推進部 サステナビリティ推進部長
釣流まゆみ・セブン&アイ・ホールディングス 執行役員 経営推進本部 サステナビリティ推進部
秋月希保・ウォルト・ディズニー・ジャパン コーポレート・コミュニケーションズ エグゼクティブディレクター

住友林業は森の大切さや木の価値を伝え続ける

2022年2月、住友林業は脱炭素社会の実現に向けて、自社のあるべき姿を長期的な事業構想に落とし込んだ長期ビジョン「Mission TREEING 2030」を策定した。その長期ビジョンの主軸となるのが、森と木を最大限に活かした脱炭素化とサーキュラーエコノミーの確立だ。日本の森林は国土の7割を占め、土砂災害防止やCO2吸収など公益的価値があると飯塚優子氏は強調し、「森の大切さや木の価値について伝えることが、当社のコミュニケーションでは非常に重要なことだ」だと述べた。

同社がステークホルダーとのコミュニケーションで大切にしていることは、「他の会社にとってお手本になれるような目標を立て、それに向けて具体的な成果を出していくこと」だ。また社員に対して「自分の所属部署が何に貢献しているのか、意外と腹落ちしづらいかと思う。広告や生活者の評価を見て、これで勇気づけられ、会社に誇りを持ってくれれば」と続けた。

また飯塚氏はJSBIについて、「3年前から1位ずつ順位が上がっている。テレビCMや新聞広告はそれほど出していないので、必ずしも広告で印象が良くなっているわけではないと思っている」「小学生向けの教材に当社の事例が入っていたり、幅広く森の価値を伝えていることや未来図を示していることに共感していただけたのではないか」と話した。

セブン&アイ・ホールディングスのコミュニケーションツールは「商品」

(SB国際会議資料より)

セブン&アイ・ホールディングスの店舗には、1日当たり2000万人以上が来店するという。「このことを大切に考え、どのように未来につなげていくか、どうしたら当社がサステナビリティを目指した社会のハブになれるかを考えている」と釣流まゆみ氏は力を込める。同社は2019年5月に「環境宣言GREEN CHALLENGE 2050」を発表。「CO2排出量削減」「プラスチック対策」「食品ロス・食品リサイクル対策」「持続可能な調達」の4つのテーマで推進している。

釣流氏は「生活者の方々の行動変容ということも小売業の責任だと考えている」と話し、大切なコミュニケーションツールとは「商品」だと強調した。「例えば商品の包装プラスチックを削減することが、地球環境にとって良いのだと思っていただいたり、『それって何?』と考えるきっかけになったりしてほしい。特に次世代の方々に理解していただくことが非常に重要」だという。

一昨年からSDGs教育が正式に始まり、学校から出前授業の依頼が来るようになった。釣流氏は「原産地がどこで、どのような工場で作っているかなどを理解してもらいながら、未来につながる皆さんと一緒にやっていくという思いを込めてエンゲージしている」と話した。

巻き込み力と自分事化が大事――ウォルト・ディズニー・ジャパン

(SB国際会議資料より)

ウォルト・ディズニー・ジャパンの事業ターゲットは「子どもたちと家族」と明快だ。CSR推進では「インプット」「アウトプット」「アウトカム」の3つの視点を大事にして取り組み、「当社は物語の力を通じてインスピレーションを呼び起こし、希望や勇気や感動を与えていくことを大切にしている」と秋月希保氏は説明する。そして「コミュニケーションは発信力がもちろん大事だが、自社だけでは何もできない」と続けた。

同社も次世代育成に力を入れており、昨年、映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の公開に合わせて水族館と連携して地元の小学校向けに特別講座を実施した。「イベントを開催しただけで終わったら意味がない。やはりコミュニケーションにおいては、双方において巻き込み力、自分事化をしてどうやって行動に落とし込むかが大事」と力を込める。

最後に、JSBIの調査設計を担当する江戸克栄氏は、「JSBI の上位にランクする3社の方々に話を伺い、エンゲージメントや自分事化がコミュニケーションとして大事なのだと納得した」と感想を述べた。

松島 香織 (まつしま・かおり)

サステナブルブランド・ジャパン デスク 記者、編集担当。
アパレルメーカー(販売企画)、建設コンサルタント(河川事業)、
自動車メーカー(CSR部署)、精密機器メーカー(IR/広報部署)等を経て、現職。