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企業価値向上へ 「MYパーパス」を起点に進化するSOMPO独自のアプローチ

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SB国際会議2023東京・丸の内

Day2 プレナリ―

下川亮子・SOMPOホールディングス グループCSuO 執行役

自社の存在意義である「パーパス」を明示し、それを軸に経営を進める企業が増える中、多くの企業が同様に抱える悩みがある。自社のパーパスをいかに社員に浸透させるか、だ。そこでSOMPOグループが打ち出した「MYパーパス」というアプローチに注目が集まっている。

「いま、いろんな会社がパーパスを掲げているが、会社が『このパーパスでいきます』と(社員に)言うだけでは、なかなか自分事化しない。また何か会社が言ってきたな、という感じになってしまう」

セッション前半、下川氏はそんな問題意識を共有した。SOMPOグループは国内の損害保険事業を中心に29カ国・地域で事業を展開し、「“安心・安全・健康のテーマパーク”により、あらゆる人が自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことのできる社会を実現する」とのパーパスを掲げている。国内外にいる約7万4000人の社員に、パーパスをどう浸透させるか。そこで起点とするのが「MYパーパス」の取り組みだ。

MYパーパスとは、働く意義や生きる目的を考え、自らを突き動かす志であり、社員一人一人が作成する。「MYパーパスと会社のパーパスを並べて、重ね合わせる。そういう作業をしないと(会社のパーパスが)自分事化しないのではないか」と下川氏。その先には、内発的動機に基づいて社員がチャレンジし、いたるところでイノベーションが生まれる企業文化への変革を描く。

同社はパーパスの浸透を(1)トップの発信、(2)現場の取り組み、(3)浸透(進捗)の測定――の3つの柱で進めている。このうち(1)については、昨年のSB国際会議でグループCEOの櫻田謙悟氏がタウンホールミーティングを通じて社員とマイパーパスについて語り合う場面が紹介されたが、その後、このタウンホールミーティングをアップデートする形で、各職場のマネージメント層がCEOとパーパスマネジメントの重要性について意見交換。さらに全世界のグループ社員との間でも対話を広げた結果、MYパーパスの理解が進んだだけでなく、グループの一体感の醸成にも寄与しているという。

そして現場、つまり職場では、上司がコーチングスキルを高める研修を受講しながら、部下との「1on1」の対話を通して一人ひとりのMYパーパスを策定し、同社のパーパスと重ね合わせる実践を継続することで、部下のチャレンジを引き出している。昨年度からはグループを横断する「草の根」のパーパス導入研修・ワークショップも計23回行われ、約4500人が参加するなど、その輪は着実に広がっている。

さらに「チャレンジを応援し、賞賛する企業文化へのきっかけづくり」として新たに始めたのが、「SOMPOアワード」だ。「すべての挑戦に、エールを。」とのコンセプトの下、すぐに数字につながらないものや、失敗を含めた挑戦なども表彰するという。

これらの取り組みのゴールはどこか。下川氏は「企業価値の向上」とし「自己満足で終わってはいけない。企業価値の向上につながらないと、ステークホルダーからも評価されない」と強調する。そこで同社が作成しているのが「価値創造サイクル」だ。そこでは、MYパーパスを起点とする人的資本向上の取り組みが、ビジネスの質向上や新しい価値の創造にどうつながるか、簡易なイメージ図を示している。加えて財務価値・企業価値につながる経路をインパクトパスとして可視化し、統合報告書で取り組みの効果を発信している。

最後に下川氏は「MYパーパスを起点に個人が変わり、1on1の対話を通じて上司と部下が変わり、組織が変わり、最終的に持続可能なより良い社会の実現になるようリードしていきたい」と力を込めた。パーパス浸透に向けたSOMPO独自のアプローチ。今後の展開や成果に注目が集まりそうだ。(眞崎裕史)