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サステナブル・チョコレート――児童労働のないカカオ調達への挑戦

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SB国際会議2023東京・丸の内

左から寺門氏、白木氏、河合氏

Day2 イノベーションオープン

ファシリテーター
小野美和・デロイト トーマツ コンサルティング合同会社Smart X Lab / Social Impact Office アソシエイト スペシャリスト リード
パネリスト
寺門雅代・独立行政法人国際協力機構(JICA)ガバナンス・平和構築部 企画役
白木朋子・認定NPO法人ACE 副代表/共同創業者
河合辰信・有楽製菓株式会社 代表取締役社長

西アフリカのカカオ生産地で、児童労働が深刻化している。こうした問題を解決し持続可能なカカオ産業を推進するため、日本では2020年に独立行政法人国際協力機構(JICA)が、「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム(以下、プラットフォーム)」を創設した。同プラットフォームに参加している有楽製菓、認定NPO法人ACE、デロイト トーマツ コンサルティング、そして事務局のJICAが、持続可能なカカオの調達のために何をするべきなのかを議論した。(とがみ淳志)

コートジボワールやガーナなどの西アフリカ地域は、世界の7割を占めるカカオ生産地だ。現在このエリアで問題となっているのが、子どもに義務教育を受けさせずに危険で有害な労働に従事させる、いわゆる「児童労働」だ。

プラットフォームは、2020年に設立し現在メンバーはチョコレートメーカーなど、団体・個人合わせて150以上になる。事務局を務めるJICAの寺門氏は、「経済社会開発、責任ある企業行動・消費行動といったさまざまな問題に取り組む必要があり、協創が必要になる」と説明。ユニセフなどの国際機関とも連携しながら、取り組んでいるという。

ファシリテーターを務めた小野氏

続いて、2009年から現地で活動しているACEの白木氏が発言。「日本が輸入を依存するガーナではカカオ生産農家の55%に当たる77万人が児童労働に従事」「小規模な家族経営ゆえ、子どもの労働に頼らざるを得ない。場合によっては人身売買さえ行われている」「10年以上活動してきたが、根本的な解決には至っていない」と、厳しい現状を吐露した。

デロイト トーマツ コンサルティングの小野氏は「こうした事実にショックを受けてしまい、チョコレートを手放しでおいしい、と思えなくなってしまった」と話し、「まずこういった事実を消費者に知ってもらうことが、解決の第一歩になるのではないか」と続けた。

現地の子どもたちの笑顔を犠牲にしてはならない

昨年9月のニュースが、日本のチョコレート業界に大きなインパクトを与えた。チョコレート菓子「ブラックサンダー」で知られる有楽製菓が、2025年までに全商品のカカオ原料を児童労働に配慮したものに切り替えるという。

大英断を下した同社社長の河合氏は、「恥ずかしながら、2018年にACEの白木氏に教えてもらうまで、児童労働について知識がなかった」と告白。しかしそれを機に「消費者を笑顔にする代償として、現地の子どもたちの笑顔を犠牲にするのはあってはならない」と決意したという。

河合氏は自ら生産地に赴き、現状を把握した上で原料の切り替え目標を設定し、調達先を変更するなど踏み込んだ対策を講じた。結果、2022年9月中旬までに、主力商品のブラックサンダーの原料をサステナブルなものに切り替えることができた。

原料調達はサプライチェーン全体に影響が及ぶが、まず生産地では「所得ギャップ」が根本的な問題としてあると白木氏は指摘する。チョコレート製品の価格が低過ぎるため、生活に必要な所得水準と実際の所得水準との間に大きな格差があるというのだ。

では、適正な価格とはどれくらいなのか。小野氏がある試算をスライドで紹介した。それによると、児童労働や環境破壊などの対策コストは、板チョコレート一枚当たり約33円。本来その金額が市場価格に上乗せされるべきだという。これを受けて白木氏は、「生産地から消費地までを一つのシステムとして捉え、そのどこかに属する私たち一人一人が少しずつ意識を変えて、全体を改革していくことが必要」だと述べた。

最後に寺門氏は、持続可能なカカオ調達への取り組みについて、「プラットフォーム事務局で具体的なアクションプランを作成した。その実施もサポートしている」と企業・団体の参加を呼びかけた。


開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム