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ユヌス博士が提唱する「3 ZERO Club」を広げよう! ――炭素排出ゼロ、富の集中ゼロ、失業ゼロの世界を目指して

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SB国際会議2023東京・丸の内

オンデマンドセッション

貧困層への少額融資を行う「グラミン銀行」を構築したムハマド・ユヌス博士が、サステナブル・ブランド国際会議2023東京・丸の内にビデオ登壇した。ユヌス博士は、若者の創造的な力を生かして「炭素排出、富の集中、失業」の3つのゼロを実現するイニシアティブ「3 ZERO Club」を提唱し、世界各地でその試みが動き始めている。日本国内での「3 ZERO Club」の動きを紹介すると共に、それはどのような仕組みでどう世界を変えようとしているのか、博士との対話から明らかにする。(環境ライター 箕輪弥生)

パネリスト
ムハマド・ユヌス博士 第14回ノーベル平和賞受賞者
青木 茂樹・SB国際会議 アカデミックプロデューサー/駒澤大学 経営学部 教授
秋沢 淳子・TBSテレビ/TBSテレビホールディングス 総務部CSR推進部 部長
白石 克孝・龍谷大学 名誉教授
河原 裕子・特定非営利活動法人アース・アイデンティティー・プロジェクツ

ソーシャルビジネスを後押しするグラミン銀行

「グラミン銀行は、大きないらだちから始まった。飢餓、貧困などで苦悩するバングラデシュの村の人たちのために問題を解決したいと」

ユヌス博士はセッションの冒頭でグラミン銀行設立の始まりについて話した。それは高利貸しからの返済で悩む人たちに、少額の融資を自らが行ったことが始まりだったという。

同銀行は、貧困層の人や女性たちに少額融資を行い、それにより、彼らは新しいビジネスを始め、融資は99%戻ってきた。融資を受ける人は5人1組のグループをつくり、互いに相談ができるようにした。

SB国際会議アカデミックプロデューサーの青木茂樹氏はグラミン銀行の提示したビジネスモデルはこれまでの銀行のモデルと全く異なると、解説する。

まず、借り手は、貧困から抜け出そうとする人たちだ。既存銀行が資金額や担保など過去の信頼で貸すのに対し、グラミン銀行は担保も契約書もなく、借り手の未来のために貸す。

これまでにない全く新しい銀行のシステムであり、金融そのものがソーシャルビジネスとして機能していると青木氏は分析する。

1983年にスタートしたグラミン銀行はユヌス博士が出版した書籍によれば、2017年度には900万人の女性に25億ドルの貸付を行い、住宅や衛生設備の整備、再生可能エネルギー、栄養の改善などさまざまな分野の新規事業につながった。今では世界各地でグラミンモデルが広がっている。

若者の創造力で3つのゼロを実現しよう

グラミン銀行から多くを学び、次にユヌス博士が提唱したのが「3 ZERO Club」だ。これは、「炭素排出ゼロ・富の集中ゼロ・失業ゼロ」の3つのゼロを若者たちの創造的な力で実現していこうというものだ。

ユヌス博士によれば、世界の人口の半分の人が持っている資産と、わずかトップ8人が持っている総資産が一緒という、大きな富の偏在があるという。これをなくし、貧困をなくすのが「富の集中ゼロ」だ。

「失業ゼロ」や「炭素排出ゼロ」も世界が生み出した解決すべき大きな問題だとユヌス博士は言う。

仕組みは5人の若者が一つのグループをつくり、サポートしあう。またそれぞれのグループは他のグループともつながり、センターをつくる。グラミン銀行で成功した仕組みを踏襲している。

青木氏が「なぜ5人なのか」と問いかけると、ユヌス博士は、「5人は、お互いをしっかりと理解しあえる人数。一緒に課題を解決し、達成感を味わえるため」と答えた。

「3 ZERO Club」は基本的に12〜35歳の若者が参加でき、興味関心のある分野を目標として設定する。ユヌス博士によると現在、40カ国で525のクラブができているという。そのうち150のクラブが「炭素排出ゼロ」をテーマにしている。
  
「新しいシステムを構築すれば古いものを破壊することができる。若い人たちは新しい考え方ができ、技術を使いこなすことができるため、新しい世界を構築できる」とユヌス博士は若者の創造的な力に大きな期待を寄せる。

日本の大学や企業も3つのゼロを追求して社会貢献

2019年6月には、龍谷大学と、ユヌス博士が所長を務めるユヌスセンターとの合意のもとに「龍谷大学ユヌスソーシャルビジネスリサーチセンター」が創設された

日本にもすでにいくつかのクラブができていて、webサイトで検索して登録し、仲間を集めることで誰もが活動を始められる。

中でも龍谷大学は、2019年に「龍谷大学ユヌスソーシャルビジネスリサーチセンター」を立ち上げ、大学が社会貢献に役立つ仕組みとして「3 ZERO Club」を機能させようとしている。

その中心的役割を担う同大の白石克孝名誉教授は、「ソーシャルビジネスで大学が社会課題に取り組むことができることに大きな意義がある」と話す。

龍谷大学では、「3 ZERO Club」に参加する前に、学生が社会課題に気づき、学び、ビジネスプランを考えるためのさまざまな指導プログラムを展開しているという。

秋沢氏、河原氏、青木氏、白石氏( 左から時計回り)

一方、企業も「3 ZERO Club」のコンセプトで社会貢献を始めている。

TBSは、地域の子ども食堂の活動に参加したり、放送時のCO²を削減するためにグリーン電力を利用するなど、3つのゼロを意識した企業活動に力を入れる。

秋沢淳子CSR推進部部長は「TBSはメディアとして人と人をつなぐことができるので、3ZERO Clubを推進するハブのようなものになれたら」と意欲を語る。

同社は、文化交流による平和推進事業を進めるアース・アイデンティティー・プロジェクツと龍谷大学が共催するユヌス博士のオンラインセミナーを後援するなど、ユヌス博士の活動を広める活動も行う。

アース・アイデンティティー・プロジェクツの河原裕子氏は、龍谷大学に3ZERO Clubを紹介し、龍谷大学内のセンター立ち上げに協力した。「今後は年齢に関係なくこの活動に参加できる仕組みを立ち上げたい」と話す。

最後に青木氏から今の若者たちへのメッセージをと問われたユヌス博士は「温暖化、経済、戦争、平和もすべてつながっている。武器に費やす費用や防衛費を平和のために使えないのだろうか」と問いかけ、「今の世界は平和という植物に水を与えていないようなものだ」と杞憂を表した。

本オンデマンドセッションは、3月31日までSB Online(アーカイブ視聴サイト)でご視聴いただけます。
※ご参加登録者様限定
https://sustainablebrandsonline.jp/login

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/