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年間1000トンの食品廃棄削減を目指す「フードレスキューセンター」をオイシックス・ラ・大地が本格稼働

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オイシックス・ラ・大地のフードレスキューセンターが入っている倉庫(神奈川県海老名市)

有機・無添加食品やミールキットのサブスク販売を行うオイシックス・ラ・大地は、フードロス削減の推進を目的とした「フードレスキューセンター」を神奈川県海老名市で10月より本格稼働した。同社はこれまでに、不揃い食材の再利用やアップサイクルなどで年間310トンのフードロス削減を実現しているが、同施設の稼働により、今後3年間で年間1000トンの削減量の積み上げを目指す。このプロジェクトを取材すると、流通の川上から川下まで関与する食品会社の、フードロス問題に対する責任と覚悟が伝わってきた。(いからしひろき)

同センターがあるのは、小田急線海老名駅から車で10分ほどのところにある工業団地。同社の物流センターから約6キロメートルの場所にある。実はこの距離もポイントで、このプロジェクトの責任者である東海林園子執行役員は、「なるべく食材の移動距離を縮めることで、輸送にかかるCO2の排出や鮮度の劣化を抑えたい」という。

床面積は6290平方メートル。約200人の従業員が、食品の選別や加工などに従事する。室内は常時10度以下に設定されているが、空調を含む全ての電力はグリーン発電によるもので賄われている。

サブスクモデル活用し、流通におけるフードロス率0.2〜0.3%を実現

同社は2010年に「サステナブルリテール(持続可能型小売業)」を標榜し、「農業生産での温室効果ガス削減」「ラストワンマイルでの温室効果ガス削減」「包装の脱プラスチック推進」「フードロス削減」の4つの課題に対応する施策を制定した。

その施策は①独自のグリーン基準導入②配送車のグリーンエネルギー実装実験を開始③商品パッケージのさらなるグリーン化④従来のフードロス削減の取り組み強化⑤アップサイクル食品の販売推進の5つで、今回のフーレスキューセンター新設は④と⑤に該当する。

食品のサプライチェーンにおけるフードロスの機会は、主に生産、流通、家庭の3つのフェーズに分けられるが、同社によれば、サブスクモデルを活用した需給データマッチングで流通におけるフードロス率は、0.2〜0.3%とほぼゼロに近い数字を実現(一般小売店は約5〜10%)。家庭での食材廃棄も、ミールキットなど食材使い切りサービスの提供により約3分の1にまで減少した。

今回の取り組みについて説明する東海林さん

問題は生産現場だ。同社では「畑のフードロス」と呼ぶが、不揃い食材の再利用やアップサイクル製品の販売などにより、昨年1年間で約310トンのフードロス削減を実現した。しかし東海林さんは「まだまだ削減の余地はある」といい、「食に携わる企業として“捨てれば楽”という悪しき習慣を業界全体で無くしていく責任がある。新設したフードレスキューセンターで、今後3年間で年間1000トンの削減の積み上げを達成したい」と意気込む。

年間1000トン削減の積み上げを実現するために、同社は同センターを拠点に、廃棄されている食材のさらなる再活用、新たなアップサイクル商品の開発、品質保持期限の延長技術の研究に取り組んでいく。現在は野菜だけだが、「今後は肉や魚も対象に加える」(東海林さん)そうだ。

レスキュー食材25%使用プレートの味は?

レスキュー食材を25%使ったプレート(試作品)

工場視察の後、フードレスキューセンターで加工した“レスキュー食材”を25%使ったミートプレートを試食。例えばソースにはネギの青い部分、ピラフの具には玉ねぎの皮は細かく刻んだもの、サラダの具材には検品ではじかれた柿が使われているが、言われなければ全く分からないし、長ネギの濃厚な風味や玉ねぎの皮のパリッとした食感など、むしろ非常に美味しく感じた。

ネギの青い部分や玉ネギの皮を手作業で選り分ける
(左)選り分けた食材を焼成し、下加工する
(右)下加工したものを、食感を損なわないようアルコール冷凍機で急速冷凍する

ただし、そうした規格外の食材の選別や加工は通常のラインからは外れ、基本的に手作業となる。また、万人の味覚に合うような商品に仕上げるには、それなりの研究開発コストが掛かるだろう。ある程度の価格転嫁はやむを得ないが、主に一般家庭で消費されるものだけに、価格を抑える努力も必要だ。

その上でどう消費者に “フードロス削減に貢献している”ことを商品価値として提供できるか。それが、年間1000トン達成の試金石になるに違いない。

いからし ひろき

ライター・構成作家。旅・食・酒が得意分野だが、2児の父であることから育児や環境問題にも興味あり。著書に「開運酒場」「東京もっこり散歩」(いずれも自由国民社)がある。