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映画『長崎の郵便配達』 戦後77年のいま考える、子どもたちに残すべき世界とは

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©︎坂本肖美

1945年8月6日の広島に続き9日には長崎にも原爆が投下され、谷口稜曄(すみてる)さんは郵便物を配達中に被ばくした。背中一面に大やけどを負う瀕死の状態だったが、一命を取り止めた谷口さんは、生涯にわたって「未来に生きる者たちに青い地球を残すため、核兵器は一発も残してはなりません」と訴え続けた。英国人作家のピーター・タウンゼンドさんは谷口さんと出会い、友情を育みながらノンフィクション小説『長崎の郵便配達』を著わした。映画は作家の娘であるイザベルさんが、父の小説をもとに長崎を訪れ「どのような世界を子どもたちに残したらいいか」を模索するドキュメンタリーだ。(松島香織)

©︎坂本肖美

ピーター・タウンゼンドさんは第二次世界大戦中、英国空軍のパイロットだった。退役後は英国王室に仕え、エリザベス女王の妹マーガレット王女に出会い、2人は恋に落ちた。しかし周囲の猛反対で成就せず、映画『ローマの休日』のモチーフになったといわれる。その後ひとりで世界をまわり、長崎で出会ったのが谷口さんだった。

タウンゼンドさんは「戦争は常に無垢な人びとを傷つける。私にはそれがはっきりわかった」「核戦争は絶対に起きてはいけない」と谷口さんを取材しながら、自分の思いを取材テープに残していた。そして谷口さんの物語を書き、長崎で起きたことを証言するのは、作家としての義務だと考えた。

1984年に父が『THE POSTMAN OF NAGASAKI』を出版した頃、娘のイザベル・タウンゼンドさんは、まったく無関心だった。当時、ラルフ・ローレンと専属契約を結ぶなど世界的に活躍するモデルだったイザベルさんは、パーティーや旅行で忙しかった。そんな娘を見ていた父から「ぼくが亡くなってから君は本を読むだろう」と言われ、当時は腹が立ったが実際にそうなってしまったと苦笑する。

23年ぶりに聞く父の声に導かれたイザベルさんは「ここで起きたことを理解しなくては」と、長崎平和公園、爆心地、谷口さんが被ばくした住吉神社周辺などを熱心に訪れた。はじめは父がなぜ長崎を訪れたのかを知るためだったが、長崎の風景を見て、人びとに出会う中でイザベルさんの心は変化していった。今は亡き父と谷口さんの平和への思いを引き継ぎ、次の世代に受け継ぐメッセンジャーとなることを決意する。

終戦から77年が経ち、戦争の記憶は薄れつつある。なぜ戦争を起こしていけないのか、なぜ核兵器は必要ないのか、イザベルさんの旅を通して改めて考えたい。

8月5日(金)より、シネスイッチ銀座ほか全国で公開。公開に合わせてイザベル・タウンゼンドさんが来日し、川瀬美香監督とともに東京と長崎で舞台挨拶をする。舞台挨拶の日程はこちらから。

『長崎の郵便配達』
https://longride.jp/nagasaki-postman/

松島 香織 (まつしま・かおり)

企業のCSRや広報・IR部署を経て、SDGs、働き方改革(ダイバーシティ)、地方創生などをテーマに取材中。