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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

岐阜と淡路島で始まったリジェネラティブな取り組み

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古田氏、阿部氏、田中康輔氏、田中信康氏(左上から時計まわり)

リジェネレーションは、人の心や地域、文化も再生発展させていくことを目指すべきではないかーー。サステナブル・ブランド国際会議2022横浜では、岐阜県と淡路島で進行中の2つのプロジェクトを通し、地域において、自然、社会、人という重要な資本をどのように回復・再生していくのかという大きな問いをテーマに議論が展開された。そこから見えてきたのは、強烈なパッションを持った人々が声を上げて発信し、つながることの重要性だ。(井上美羽)

ファシリテーター
田中信康・サステナブル・ブランド国際会議 ESGプロデューサー
パネリスト
阿部 剛・CCCメディアハウス メディアプロモーション局 局長
田中康輔・パソナ農援隊 代表取締役
古田菜穂子・furuta & associates代表

「偶然の連鎖」が100%岐阜産の和綿の服を完成させた

「皆さんが着ている服も、誰かが種を蒔き、糸を紡いでできたわけですが、そうした背景を普段思い出すことはあまりないでしょう」と語る古田菜穂子氏の話は聞き手を引き込む力がある。

2016年から始まった『tomoniつながる和綿プロジェクト』は、岐阜で受け継がれてきたわずかな和綿の種を守るため、アート、デザイン、ビジネス、福祉、農業、環境の分野を掛け合わせ、活動の輪を広げている。

土づくりと種まきに始まり、最終的には全て手作業にこだわった100%岐阜県産の和綿の服が完成するまでには、たくさんの「偶然」の連鎖があった。さらにはリトアニアでリネンを復活させる活動との出合いもあり、国内の他の地域の和綿生産者との交流も進めているという。

「自然循環を原則としたエリアづくり」を淡路で

パソナグループは「自然循環を原則としたエリアづくりを実際にやってみよう」(田中康輔氏)という思いから、2021年10月、淡路島に農業や食の体験型施設「Awaji Nature Lab & Resort(淡路ネイチャーラボ&リゾート)」を開設した。

既にオープンしている有機栽培が体験できる農園と、再生紙と木でつくられ、茅葺き屋根の農家レストランに加え、今後は自然とテクノロジーをうまく組み合わせた宿泊施設と「自然と暮らし研究所(ラボ)」を建設・稼働させる計画だという。

田中氏は「訪れる人がここで感じる心地良さはなぜなのかと考え、その理由が環境に配慮された製品やテクノロジーにあると気づいてくれれば。『やっぱり自然循環型が大切だよね』という形で、生産者と消費者の意識と行動が変わっていく起爆剤にしていきたい」と話した。

鍵を握るメディアプロモーション

『Pen』や『ニューズウィーク日本版』などの広告や淡路ネイチャーラボ&リゾートのプロモーションにも携わる阿部剛氏は「最近の情報発信の仕方は、社会課題が先にあり、その社会課題をわれわれは何々で解決していきますという、『コンテンツ発想』にシフトしていっている」と指摘。「今後はより企業のPR戦略が重要になってくる」とメディア視点での連携の可能性に言及した。

「社会の中での必然性がないと、プロジェクトは実行しません」(古田氏)、「思いを発信し続け、人とつながって初めて形になる」(田中康輔氏)という言葉に大きくうなずく会場の参加者ら。

ファシリテーターの田中信康氏は、「リジェネラティブな取り組みを共に推進していくためには、生産性・効率性よりも価値観の一致がより重要視される。企業だけではなく個人のパーパス(存在意義)が求められてくるのかもしれない」と述べ、セッションを終えた。

井上美羽 (いのうえ・みう)

埼玉と愛媛の2拠点生活を送るフリーライター。都会より田舎派。学生時代のオランダでの留学を経て環境とビジネスの両立の可能性を感じる。現在はサステイナブル・レストラン協会の活動に携わりながら、食を中心としたサステナブルな取り組みや人を発信している。