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コミュニティは生き物 「横浜をつなげる30人」のメンバーが考える地域イノベーション

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櫻井氏、加藤氏、品川氏

コミュニティとは生き物であり、常に動いて発信することが大事――。サステナブル・ブランド国際会議2022横浜では、横浜で2020年にスタートした産官学民の地域プロジェクト「横浜をつなげる30人」の中心メンバーが登壇し、横浜にゆかりのある多様な人材が集まるなかでの関係性の在り方や、イノベーションを生み出すための課題について、「街の同級生」をコンセプトに活動するメンバーの視点で討論がなされた。そこから見えてきたのは、変化に柔軟性を持って対応し、地域を巻き込んで新しい風を吹かせる、多様で緩やかなコミュニティの姿だ。(三谷真依子)

ファシリテーター:
品川 優・An-Nahal 代表取締役社長 
パネリスト:
加藤優子・コクヨアンドパートナーズ サービス開発部 ワークスタイル創出グループ サービスマネージャ
櫻井怜歩・G Innovation Hub YOKOHAMA ディレクター、リスト CSR推進チーム 主任

「横浜をつなげる30人」のコンセプト、「街の同級生」とは

「横浜をつなげる30人」は、行政と企業と市民団体が一緒に街づくりの課題に取り組む対話型・継続型・実践型のプロジェクト。任意団体「横浜未来機構」と、「挑戦都市横浜」をビジョンの一つに掲げる横浜市の一事業の位置付けで、1期目には農家と連携して横浜の野菜を盛り上げたり、横浜の中で多文化協働を増やしていくための仕掛けづくりなどの動きが生まれた。

セッションはこの「横浜をつなげる30人」の1期生である品川優氏がファシリテーターを務め、同じく1期生の加藤優子氏、2期生の櫻井怜歩氏と対話する形式で進行。3人とも普段から横浜を拠点に、人と人とのつながりを生む橋渡し的な仕事に関わっている。

「横浜をつなげる30人」のコンセプトは、「所属を超えた『街の同級生』をつくろう」というもの。討論はこの「街の同級生」とはなにか、というところから始まり、横浜で暮らす一個人として参加したという加藤氏は「いろいろなバックグラウンドの方々と利害関係がなく、心理的安全性が保たれた状態で出会えたことが大きい」、櫻井氏は「所属を超えて1つの目標に向かっていくような感覚。仕事で何か新しいチャレンジをしようという時にも、ちょっと助けてくれない?と気軽に言える仲間づくりができたことがありがたい」と、所属や肩書きを超え、人と人との関係性が構築されていることを強調した。

強力なセカンドペンギンが生まれてくる

だがそれだけに、「仲良しクラブで終わらせず、どう事業につなげていくか」(品川氏)が課題だ。

ここで品川氏は、1社のみでは難しいが、サポートチームがいることで実現した事例として、ダイバーシティの推進を目的に人材育成やコンサルティングを行う自身の会社との連携によって生まれた「多文化協働プログラム」を挙げ、課題に対して強いリーダーシップを持つメンバー(ここでは品川氏)とビジョンを共有し、場所の提供やふさわしいゲストの提案などをしてくれるメンバー(加藤氏のこと)がいることで、事業が進んでいることを説明。

さらに「ファーストペンギンが一人でいると何も生まれないが、(「横浜をつなげる30人」のプロジェクトとして進めるうちに)強力なセカンドペンギンが生まれてくる」と続け、イノベーションを引き起こす最初の一人のことを、集団で行動するペンギンの群れから魚を求めて海に飛び込む勇敢な一羽になぞらえて呼ぶ“ファーストペンギン”の言葉を用いてコミュニティの持つ力を表現した。

より地域とつながった活動の事例としては、櫻井氏が昨年11月に「みらい創造マラソン」と題して行ったアイデアソンについて報告。横浜・関内エリアにある企業や商店街の関係者と住民らが参加し、「自分たちの街でどんなサービスやアイデアが出てくればいいのかということを濃密に約3時間議論した」という。

議論の中からは「本当にファーストペンギンのような形で、『私、これをやってみたいんだけど』という人」も現れ、協力の輪が広がったそうで、櫻井氏は、「商店街にどう人を呼び込むかといった具体策を引き続き地域で模索していくことが、持続的にビジネスが生まれる仕組みにつながるのではないか」と話した。

コミュニティは常に変化する生き物。常に発信し、新しい風を

産官学連携によるさまざまなセクターの人たちが集まるコミュニティとして、イノベーションが起き続ける、あるいは起こりやすくするためにはどんな課題があるのか。

これには「コミュニティの流動性」というキーワードが挙がり、加藤氏が「コミュニティは常に変化する生き物だ」と指摘。だからこそ柔軟にプランを変え、その流動性を楽しむこと、そして「みんなでその都度、方向性を決めていく。常に動いていることを発信し、新しい風を吹かせることが大事だ」と強調した。

「横浜をつなげる30人」の良いところは、転勤などで一度退会した人とも緩いつながりを持ち続け、いつでも戻って来られる、まさに「同級生」のような関係性が保てるところ。一方で「内輪感」を打破し、新しく参加する人が街の課題を自分ごととして取り組めるよう、「さりげなく扉を開いて入ってこられる空気感を常につくる」(加藤氏)ことが求められる。

最後に品川氏は、「大事なのは、覚悟を持って多様性を取り入れるということ。ともすると声を掛けやすい人だけに声を掛けていないかということを改めて自問し、覚悟を持って、新しい遺伝子を取り入れていく行動が必要なのかなと思う」と述べ、セッションを締めくくった。

三谷真依子 (みたに・まいこ)

高知県出身。文芸創作を経てフリーライター。都内の大学に在学中、友人の誘いで、関東で高知をPRすることを目的とした学生団体の立ち上げに参加。同団体で、高知の食文化をはじめ地域で働く人々の想いや地方の持続性に触れ、記事執筆を始める。