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企業は「未来」にどう備えるか メガトレンドをふまえてESG経営の基盤を強化する 

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金田氏、杉本氏、三浦氏

社会経済に構造的な変化をもたらすグローバル、ローカルな事象“メガトレンド”。企業はどのように捉え、対策をしていくべきなのだろうか。それには、ESG経営の基盤強化が不可欠だ。サステナブル・ブランド国際会議2022横浜で行われたセッション「メガトレンドをふまえてESG経営の基盤を強化する」では、サンメッセ総合研究所(Sinc)の川村雅彦氏がファシリテーターを務め、ESGメディアと先進企業2社をパネリストに招き、メガトレンドの認識とそれをふまえたESG経営の基盤強化の現状や課題を議論した。(岩﨑 唱)

ファシリテーター:
川村雅彦・サンメッセ総合研究所(Sinc) 所長/首席研究員
パネリスト:
金田晃一・NTTデータ 総務部 サステナビリティ担当 シニア・スペシャリスト
杉本淳・シェルパ・アンド・カンパニー 代表 CEO、ESG Journal Japan 編集長
三浦仁美・積水化学工業 ESG経営推進部 担当部長

ファシリテーターの川村氏は冒頭で、企業が「未来」にどう備えるかを議論する本セッションの論点として、「経営環境の変化が激しいVUCAの時代に、メガトレンド(外部環境の非連続的な構造的変化)をどのように認識するか」「中長期の時間軸の中で重視するメガトレンドは何か、またそのインパクト(リスク・機会)は何か」「将来に向けた価値創造能力の担保のためには、ビジネスモデルや事業ポートフォリオの転換とともに、ESG経営の基盤強化が不可欠である」の3つを挙げた。そして、人口動態、エネルギー・資源、地球環境、技術、経済・地政学、価値観の6つのトレンド領域が重なり合いながらメガトレンドが形成され、今後もますます大きく変わっていくのではないかと語った。

ESG経営に影響を与えるメガトレンド

サステナビリティ・ESGに特化したニュースメディア『ESG Journal Japan』を運営している編集長で、シェルパ・アンド・カンパニー代表の杉本淳氏がESGメディアからみた今後のESG経営に影響を与えるメガトレンドについて説明した。

杉本氏は「企業視点で中長期的にインパクトがあるメガトレンド(気候変動、生物多様性、資源不足、森林、水、食料危機、労働・人権、感染症、人口動態)には、技術・政策・市場の3つの視点を掛け合わせて捉えることが重要」と話す。

技術においては、「メガトレンドへの対応は技術抜きには語れない。低炭素化・脱炭素化を進めるイノベーションやサプライチェーンの透明化を実現するAI・ブロックチェーン技術はさまざまなメガトレンドに大きな影響を与える」とした。政策では、「メガトレンドは各国の政策と密接に結びついている。脱炭素化への移行のためのインセンティブ、カーボンクレジット市場の設立、非財務情報の開示など政府主導によるルール設計は日々進化している。これらをしっかり把握することでメガトレンドの全体像をつかむことができる」。さらに市場においては「ESGが大きく取り上げられるようになったのも市場の力が大きい。今後もサステナブル・ファイナンスなど調達手段の多様化や新たな金融商品が生まれてくる。企業は、ESGを市場、投資家との対話という観点で捉えていく必要がある」と述べた。

製造業から見たメガトレンドとESG経営

積水化学工業の三浦仁美氏は、製造業の立場から見たメガトレンドの捉え方と取り組みについて説明した。同社はメガトレンドをふまえてESGの重要課題を設定している。

三浦氏はまず、「すべての課題解決にはイノベーション、特にIT技術の進展がカギとなる。DX(デジタル・トランスフォーメーション)をESG経営の重要課題と定め、ガバナンス、ビジネスプロセス、ビジネスモデルの3つの変革を実現するために、ESG経営の基盤となるITシステムを刷新していこうとしている」と話した。

重要課題の一つと位置付ける環境課題に関しては、「2050年を見据えた“SEKISUI環境サステナブルビジョン2050”を定め、2050年にGHG(温室効果ガス)排出ゼロ、サーキュラーエコノミーの実現といった長期ゴールの達成を目指している」と説明。資源循環に関しては、「2021年度に、カーボンニュートラル実現のための戦略にもなる資源循環方針・戦略を公開した。非化石由来の原材料への転換や、製造段階で排出する廃棄物を再資源化し資源循環を実現できるように、ビジネスを見直し、イノベーションを推進することが重要」と述べた。

最後に、三浦氏は「このようなメガトレンドに先駆けて、ごみから微生物の力でエタノールを生み出す技術を確立。これを社会実装してカーボンリサイクルを通じたサーキュラーエコノミーの実現を後押しすべく、現在、岩手県久慈市と取り組んでいる」と紹介した。

AIガバナンスがESG基盤の強化には重要

続いて、NTTデータの金田晃一氏が情報産業におけるメガトレンドの認識と対応について説明した。同社では、最新のテクノロジーのトレンドをまとめた「NTT DATA Technology Foresight」を毎年発表している。「当社自身もそのトレンドを念頭に、新しいビジネスの創出や社会全体の変革に貢献するよう取り組んでいる」と語った。

一方で、金田氏は「ITには光と影がある。その影の部分が少しずつ浮き彫りになってきている」とし、AIによる差別や個人情報保護の問題についても言及した。その上で、「トレンドに対応したESG基盤の整備としては、AIガバナンスが重要だ。2019 年には『NTT データグループAI 指針』を策定。その後、AI開発の方法論を体系的に整理し、外部の有識者が参加するAIアドバイザリーボードを設置した。指針には基本的人権の尊重を盛り込み、人間を中心に据えたAIの活用を推進している」と説明した。

また、ビジネスや社会貢献活動を通じて取り組む社会課題解決に向けた事例も紹介した。防災の課題に対しては、AIやドローンなどの技術を生かし、災害対策時に必要となる関係機関間でのリアルタイムでの情報連携を支援するプラットフォーム「D-Resilio(ディーレシリオ)」を提供している。また、日本のNPOによるIT利活用を促進する「Social Technology Officer(STO)創出プロジェクト」を支援するだけでなく、インドのチェンナイ政府やグローバルNGO、研究所、現地のスタートアップと協働し、結核のAI画像診断プロジェクトを進めるなど、デジタル・フィランソロピーを推進している。

川村氏の「メガトレンドから最もインパクトを受ける事象は」という質問に、金田氏は「個人的には、やはりAI倫理。安心・安全なサービスをお客さまに提供して信頼を得るために重要な事象だ。時間の経過とともに、テクノロジーは進化し、人々の倫理観も変化する。バリューチェーンの川下部分での人権への影響を念頭に置きながら、AIを中心としたITガバナンスの強化を模索していきたい」、三浦氏は「どの企業にも共通でインパクトが大きいのはDX。製造業においては、モノをつくる上で必要な資源やエネルギーに関する気候変動と資源循環だ」と答えた。

岩﨑 唱 (いわさき・となお)

コピーライター、准木材コーディネーター
東京都豊島区生まれ、日本大学理工学部電気工学科卒。いくつかの広告代理店、広告制作会社で自動車、IT関連機器、通信事業者などの広告企画制作に携わり、1995年に独立しフリーランスに。「緑の雇用」事業の広告PRに携わったことを契機に森林、林業に関心を抱き、2011年から21018年まで森林整備のNPO活動にも参画。森林を健全にし、林業・木材業を持続産業化するには、木材のサプライチェーン(川上から川下まで)のコーディネイトが重要と考えている。