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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

オカムラ、パーソル、日立、LIFULLの「ストーリーで語るサステナビリティ」 

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井上氏、美濃氏、佐藤亜紀氏、佐藤喜一氏 (左上から時計まわり)

企業経営の中核課題となったサステナビリティへの取り組みを社内外に伝えるには「ストーリーで語ること」が有効だ。何のためにどのように取り組んで、どのような未来を描けるのかを語り、共感を得られればそこから起きた行動は次のストーリーへとつながっていく。サステナブル・ブランド国際会議2022横浜で行われたセッション「ストーリーで語る サステナビリティ」の内容を紹介する。(松島香織)

ファシリテーター:
足立直樹 サステナブル・ブランド国際会議 サステナビリティ・プロデューサー
パネリスト:
井上高志・LIFULL 社長
美濃啓貴・パーソルホールディングス 執行役員 CHRO
佐藤亜紀・日立製作所 サステナビリティ推進本部 企画部部長
佐藤喜一・オカムラ 上席執行役員 コーポレート担当

全世界で「はたらいて、笑おう。」の実現を目指す

パーソルホールディングスのビジョン「はたらいて、笑おう。」は当初、CMのキャッチコピーだったが、社内からの賛同が多く企業ビジョンになった。「コピーが持つストーリーを社員が真剣に考え、非常に生きたビジョンになっている」とCHRO(最高人事責任者)の美濃啓貴氏は笑顔を見せた。

同社は「はたらいて、笑おう。」を一人ひとりが実現できる社会に向け、世界の人々が実際にどれくらい「はたらいて、笑っているか」を調査。世界116カ国・地域の1カ国あたり約1000人を対象にした国際世論調査(Gallup World Poll)に以下の3つの設問を加える形で行ったという。

  • あなたは、日々の仕事に、喜びや楽しみを感じていますか?
(日本は116カ国・地域の中で95位)
  • 自分の仕事は、人々の生活をより良くすることにつながっていると思いますか?
(日本は116カ国・地域の中で5位)
  • 自分の仕事や働き方は、多くの選択肢の中から、あなたが選べる状態ですか?
(日本は116カ国・地域の中で31位)
全世界の調査結果・詳細はこちら

この調査を毎年行い、さらにオックスフォード大学とも連携するなどし、全世界で「はたらいて、笑おう。」の実現を目指す。「ぜひ他の日本企業や顧客と共に、継続して取り組んでいきたい」と意欲的だ。

COP26への出展で学んだ、ストーリーを伝える重要性

日立製作所サステナビリティ推進本部 企画部部長の佐藤亜紀氏は、ストーリーの重要性を実感した経験を共有した。「昨年のCOP26にブースを出展した際、対話を通してストーリーで自社の方向性を示すことが重要だと学んだ。COP26の会場で、日本のブースは製品・技術の展示とセミナールームを設けていたが、EU諸国などのブースはセミナー会場のみで対話を重視していた」と振り返った。

同社は、社会課題につながる社会イノベーション事業を推進することで、顧客企業の価値向上と、関わるすべての人のQoL(クオリティー・オブ・ライフ)向上を目指している。最近では、投資家から「それを目指すとどう戦略につながるのか」と質問されることや、社員に対してもそれを明示する必要が増えてきたという。佐藤氏は「事業戦略をストーリーで伝え、社内外にさらに上手く発信していきたい」と力を込めた。

ストーリーを伝えるために重要なのは、社員の実感

オカムラは2018年に岡村製作所から社名を変更し、働き方が変化するなかで、モノづくりからコトづくりのソリューション企業へと事業転換している。1980年にオフィス研究所を設立した同社は、2015年に「はたらく」を変えていく活動「WORK MILL(ワークミル)」を発足。共創による価値創造や、多様な働き方が認められそれが日常となる社会の実現に向けて、ビジネス誌の発刊やイベントの開催などを行う。上席執行役員の佐藤喜一氏は、同社が目指す「人が活きる」場づくりへの思いを語った。

これから自社のストーリーをどのように語っていくかについて、佐藤氏は「仕事を通して、社員が社会に貢献していると自ら感じることで、その実感したことが社会に伝わる。そのためにも、社員の思いを一つにしていくことが重要」と話した。

「つくりたい未来」をストーリーにして見せることが大事

不動産ポータルサイト「ホームズ」を展開する LIFULLの井上高志社長は、唯一の創業社長として、自らの言葉で理念と共にストーリーの重要性を説いた。同社は社会課題解決型企業の代名詞になることを目指し、ブランディングに積極的に取り組み、ブランドメッセージ「しなきゃ、なんてない。」を発信。「自分らしく生きること」「自分にとっての幸せ」について問題提起し、あらゆる人が自分らしく生きられる未来の実現を目指している。こうしたブランドメッセージの発信は効果を生んでいるそうで、サービスのCMを見た人よりも、サービスには全く触れていない企業CMを見た人の方が利用意向率が高いという結果も出ているという。

さらに、このブランドメッセージにより、社員の80%以上が社内アンケートで「会社の目指していることが分かった」と回答。社外の企業認知度では2021年6月に40%以上に上昇し、インターブランドジャパンが主催する「Japan Branding Awards 2021」では最高賞の「Best of the Best」を受賞した。「当社はつくりたい未来・社会のビジョンからバックキャスティングして事業展開している。つくりたい未来をストーリーにして、みんなに見せることが大事」と井上社長は締め括った。

ファシリテーターの足立直樹氏は「つくづく思ったのは、これから企業は“素”で勝負する時代だということ。どんな思いがあり、どんな思いで活動をしているのかということを社内外に正直に話し、行動することが一番大事で、その一つひとつがストーリーになっていく。そして、ストーリーに自分の“居場所”があると感じられることが重要になる」とセッションを振り返った。

松島 香織 (まつしま・かおり)

サステナブルブランド・ジャパン デスク 記者、編集担当。
アパレルメーカー(販売企画)、建設コンサルタント(河川事業)、
自動車メーカー(CSR部署)、精密機器メーカー(IR/広報部署)等を経て、現職。