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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

ファンづくり、コミュニティづくりから広げる「共感マーケティング」

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SNSの普及で誰でも手軽に情報を発信できるようになった昨今、企業は顧客とどのようにコミュニケーションを取ったらよいのだろうか。サステナブル・ブランド国際会議で、顧客に商品のファンになってもらい、ファン同士のコミュニティを広げる形で共感を呼ぶマーケティングの在り方について考えるセッションがあった。造園業にクラフトビール、生活協同組合と、全く違う分野でそれぞれに「共感マーケティング」に力を込める面々が登壇し、「顧客に共感してもらえれば、経営は必ずうまくいく」と力強いメッセージも発信されたやりとりの一部を紹介する。(松島香織)

峰村氏、佐藤氏、石井氏

ファシリテーター:
高島太士・NEWHERO 
パネリスト:
石井直樹・石井造園 代表取締役 
佐藤潤・ヤッホーブルーイング よなよなピースラボUnit(CRM設計/CXデザイン) Unit Director
峰村健史・日本生活協同組合連合会 デジタルマーケティング部 部長 

横浜市の石井造園は「ついでに無理なく達成感のある活動」をスローガンに年間20~30の地域貢献活動をしている。本業を通じた小さな活動を時間と経費をかけ過ぎずに数多く展開することがファンづくりやコミュティの形成につながり、石井直樹社長は、「経営を含めてうまくいっている」と語る。例えば工事代金の下三桁の金額を基金とし、それと同額を同社が上乗せした「緑化基金」は年間約50万円になり、地元で緑化活動を行う複数の団体に寄付している。それによって知名度が上がってファンが増え、さらに基金を通じて団体同士がつながる好循環を生み出しているという。

クラフトビール製造・販売のヤッホーブルーイング(長野・軽井沢)のミッションは「ビールに味を!人生に幸せを!」。同社が製造・販売する「よなよなエール」は、一時店頭に置かれない時期があり、売上高が減少したが、顧客に支えられてEC事業で売上を伸ばした。よなよなピースラボUnit ユニットディレクターの佐藤潤氏は「商品のリピーターと、ファンとの違いは、ミッションに共感し、仲間になってくださるかどうかにある」と言い、ファンイベントを何百回と開催したり、醸造所見学ツアーや経営課題を共有したワークショップなどを通じて、顧客との絆を強めていることなどが紹介された。

もう一つの事例は、日本生活協同組合連合会デジタルマーケティング部部長の峰村健史氏から報告された。同連合会(コープ)の母体は、19世紀の英国で、食料危機や食の安全について意識をもった生活者の共同購入から始まり、日本では1960年代に導入された。現在は個人向け宅配を主流に、顧客をコミュニティとして事業が成り立っているが、「新しいコミュニティに若い世代がいないこと」が課題だという。そこで近年は若い世代の顧客を得るために、商品について語り合うコミュニティサイトを立ち上げたり、SNSを通じて今までにない層に呼びかけたり。また商品サイトに口コミ機能をつけてレビューを活性化させるなど、DXを活用した戦略に力を入れている。

最後は企業の顧客からファン、その先の深化したコミュニティについて、「社会を大きく変える、なくてはならない原動力になる」(峰村氏)、「まずコミュニティの中心として地域企業が『君臨』し、地域で利益を出すことが必要」(石井氏)、「マーケティング手法ではなく、企業の源泉。そう言える企業が増えるといい」(佐藤氏)とそれぞれが展望を語り、セッションを終えた。

松島 香織 (まつしま・かおり)

サステナブルブランド・ジャパン デスク 記者、編集担当。
アパレルメーカー(販売企画)、建設コンサルタント(河川事業)、
自動車メーカー(CSR部署)、精密機器メーカー(IR/広報部署)等を経て、現職。