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セールスフォース、GHG排出量削減へ企業のデータ可視化サービスを日本でも展開

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サプライヤーのScope3を管理するダッシュボード

セールスフォース・ジャパンは9日、企業の環境データを可視化し、温室効果ガスの排出量削減につなげるクラウドサービス「Net Zero Cloud」の日本市場での提供を開始した。2019年に米国で導入し、現在、12カ国の12業種で展開している。日本でも4月から東京証券取引所の最上位市場となる「プライム市場」に上場する企業に対し、気候関連情報開示タスクフォース(TCFD)提言に沿ったリスク情報の開示が実質義務付けられるなど、ネットゼロに向けた気候変動対策の強化とステークホルダーとの対話がより求められる。そうしたなか、バリューチェーン全体の脱炭素につながるプラットフォームを通じて自社の事業が環境に及ぼすインパクトやリスクを把握し、積極的に開示していきたいという企業のニーズに応える。(廣末智子)

同社によると、「Net Zero Cloud」は、自社の環境データを迅速に収集・分析し、外部に報告するソリューションとなるプラットフォーム。開発の背景には、従来、温室効果ガスを算定する事業は担当者にとって、データの収集段階から多岐にわたる煩雑な作業が多く、膨大な時間を要するなど、高い負荷がかかっていたことがある。同社の米国本社でも担当者が多くのツールを用いて約6カ月かけて行っていたが、同クラウドによる情報の一元化や自動化によってこの業務が6週間に短縮されたという。

具体的には第一段階として、エネルギーの国際基準であるGHGプロトコルに基づくスコープ1(事業者自らによる温室効果ガスの直接排出)とスコープ2(他社から供給された電気や熱などの使用に伴う間接排出)のデータを集約し、自動的に算出された排出量を再生可能エネルギーやカーボンオフセットなどを活用して削減。次にバリューチェーンを巻き込んでスコープ3(企業のサプライチェーンからの間接的な排出)のデータを把握し、カテゴリーごとの削減を行う。

すなわち煩雑なデータを一元化し、可視化する基盤となるプラットフォームが「Net Zero Cloud」であり、自社の脱炭素状況や環境に与える影響を分かりやすく表示し、1.5度目標に整合した目標設定や、目標に対する進捗管理を行うことができる。さらにサプライヤーとの協力を深めて目標を共有し、「自社で完結しないエコシステム全体での気候変動対策を強化し、ステークホルダーとの対話を推進することができる」のも大きな利点とされる。

この日のオンライン会見では、同社執行役員の遠藤理恵氏が、同社が昨年9月にバリューチェーン全体での温室効果ガス排出量のネットゼロを達成したことや、今年2月に改めて「サステナビリティ」をコアバリューの一つに追加したことなどを報告。新プラットフォームについて、「大企業の中にも、いまだに排出量の算定に苦労し、主要なステークホルダーとの対話が困難であるという声も聞かれる。この課題の解決のために必要なのはやはり正確で信頼できる完全なデータに基づいた計画を実行していくことであり、テクノロジーカンパニーとして、まさにその点において役に立ちたい」と意義を語った。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。