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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

リジェネレーションへ連携、共創のあり方提言――サステナブル・ブランド国際会議2022横浜1日目

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WORLD ROADの平原依文代表

第6回サステナブル・ブランド国際会議2022横浜(以下、本会議)が2月24日、2日間の日程で始まった。コロナ禍で3年目となる今回は、昨年に続き、パシフィコ横浜ノース会場と、オンラインによるハイブリッド方式で開催。273人のスピーカーが114のセッションを通じて「リジェネレーション(再生)」をキーワードにした連携、共創のあり方を提言する。会場では、サステナブル・ブランド国際会議の良さの一つである「偶発的な出会い」を大切に、会場の各所で世代や業種を超えた対話が弾む光景も見られた。本会議初日の基調講演を中心に速報する。 (廣末智子・小松遥香)

初めに主催者を代表してサステナブル・ブランド ジャパンの鈴木紳介カントリーディレクターが「2030年に向けてスパートをかけないといけないタイミングでこのコロナ禍が長期に渡り多くの課題を私たちに突きつけている。気候危機や生物多様性の損失、社会結束の揺らぎなどに歯止めをかけ、再生への道を進む。そんな思いで、ポストコロナへと一歩を踏み出したい」と挨拶。WORLD ROAD共同代表の平原依文さんの「境界線のない世界を目指して」と題したメッセージで幕を開けた。

「こころ」が境界線を溶かす

平原さんは小学2年生の時、自分探しをするために、影響を受けた友人の母国・中国に単身留学した。そこで出会った恩師から「過去は変えられないけれども、今この瞬間から始まる未来は変えられる。『こころ』で人と向き合い、『こころ』を通じて、新しい歴史を築いてほしい」という言葉をかけられた。それがきっかけで、性別や国籍、組織などあらゆる境界線を「こころ」のつながりによって溶かす活動をしていきたいとの思いを抱き、「地球を1つの学校にする」をミッションに会社を設立。

昨年6月には、世界201カ国の人々がそれぞれの夢を語った著書『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs』(日本語版・英語版)を出版した。今月23日には、歌手のAIさんと共につくった「We Have A Dream」が収録されたアルバムが発売されるなど、さまざまな事業を手がけ、世の中に発信する。「一人ひとりが持つ夢の共創が世界を前進させる。お互いの『物語』から『学び合う』ことで境界線は溶ける」と力強く語った。

地球や社会を“再生”させていくビジネス

続いて、サステナブル・ブランド創設者のコーアン・スカジニア氏が米国からオンラインで登壇し挨拶した。2006年に誕生したサステナブル・ブランドの使命を「従来のビジネスでは持続可能性を実現できないという真実を伝え、より良い未来への道を示し、人々がビジョンの実現に向けて行動を起こす大きな契機を提供すること」と改めて紹介。

今回のテーマである「リジェネレーション」については、人間の活動で生じる負の影響を減らし、課題に対処する方法を自問するだけでなく、目の前の現実の中にある可能性を探り、私たちが依存する社会やさまざまな生態系が時とともに持続的に回復していける状況をつくり出すことだと説明した。今回のSB国際会議を「実用的かつ時流に沿った、人々の背中を後押しする“学びの場”にしていく」と抱負を語った。

リジェネレーションについては、英国の専門家でクリエイティブ・ストラテジストのジェニー・アンダーソン氏が「リジェネラティブ(再生可能)であるということ:思考・心・感覚を変える」と題してさらに詳しく解説した。既存の社会・経済構造とは異なる、環境や社会、人、地域が再生する未来をつくるためには、これまでの機械論的パラダイムから38億年間、生命を存続させてきた原理に基づいて生命を育むパラダイムへと抜本的に意識を変えていくことが必要となる。個人の意識や思考を転換する方法を示した。

花王・長谷部社長、セイコーエプソン・小川社長が登壇

先進企業の経営者によるスピーチの一人目、花王の長谷部佳宏社長はSDGsの17目標をはじめとするさまざまな社会的課題の一つひとつをギアと表現し、「一つのギアが動かないことによって全てが動かなくなり、逆に言うと、一つのギアが動き出すとほかのギアが動き出すのではないか」と投げかけた。

実例として、同社が「発展しながら循環する社会」を目指し、貧困地域の人々の命を感染症から守るという課題と富裕国の人々が快適な暮らしをおくるという二つの課題を一つに捉え、蚊が本来持つ性質に着目した忌避剤を開発していることや、低品質のPET素材を道路のアスファルトの補強剤として使用することで海洋プラスチックの削減にもつながる事業を始めていることを紹介。「チャレンジは始まったばかりだが、必ず世の中を変えられる。一人ひとりの思い、応援が力になり、私たちの技術が役に立つ。ギアが回る」と力を込めた。

セイコーエプソンの小川恭範社長は、同社が1942年、豊かな自然に囲まれた諏訪湖の湖畔で「絶対に諏訪湖を汚さない」「地域に受け入れられる工場になる」という強い思いで創業し、1999年に「地球を友に」という言葉を経営理念に加えてその具現化に取り組んできた経緯を紹介。

現在、取り組むべき社会課題を環境負荷の低減や労働環境の改善、ライフサイクルの多様化など5つの課題に特定し、その解決に向けて循環型経済をけん引し、産業構造を革新すべく取り組んでいることを報告した。具体的には「デジタル捺染技術」を用いてアパレル業界と連携した価値共創に力を入れており、会場内のブースで環境負荷を減らしながら高いデザイン性を追求した衣服の実例を展示していることから「ぜひ現物を見て、その美しさや可能性を感じて行ってください。本日聴講されている皆さまとも効果的な連携を行い、より大きな価値を創出したい」と呼びかけた。

第2回サステナブルブランド・イメージ調査の結果を発表

この日は、サステナブル・ブランド ジャパンが国内19業種300社の持続可能な環境・社会への取り組みとブランドイメージについて調査した「ジャパン・サステナブルブランド・インデックス(Japan Sustainable Brands Index:JSBI)」の結果も発表した。監修にあたった青木茂樹・SB国際会議アカデミックプロデューサー(駒澤大学経営学部市場戦略学科教授)、電通の田中理絵氏、NEWHERO代表理事の高島太士氏がコメントする形で調査結果を解説。

上位の企業について、田中氏は、「森林保全や農業、水と衛生、貧困などSDGsと近い領域で、且つオリジナルな伝え方をしている企業が上位にあるのが特徴的」、高島氏は「トランスジェンダーの方を起用するなど、人を応援する広告に力を入れている企業が生活者の共感を生んでいる」などと分析した。3位に躍進したスターバックスについては、田中氏が、「体験価値を提供する」というパーパスや、誰一人取り残さない姿勢を体現する店舗が象徴的とする見方を示し、高島氏も「シンプルにビジョンが溢れているということが大事だ」と強調した。