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「未来まちづくりフォーラム」2022年度開催に向けて始動――「変革の最先端で企業にとってヒント生まれる場に」

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実行委員長の笹谷秀光氏(昨年度開催「第3回未来まちづくりフォーラム」会場)

「未来まちづくりフォーラム」はSDGsのうち11番目の目標「住み続けられるまちづくりを」を中心に据え、さまざまなセクターの連携を促す価値共創のプラットフォームだ。4回目となる2022年2月の開催に向けて、今年も実行委員会が発足した。その初回の話し合いでは、笹谷秀光実行委員長が「未来まちづくりフォーラム」の意義を「変革の最先端のヒントが豊富に生まれる場に」と改めて再確認し、内閣府の地方創生推進事務局参事官、北廣雅之氏がSDGsとまちづくりの最新の潮流を共有した。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局)

「パートナーシップの妙」見せるフォーラムに――笹谷秀光実行委員長

「SDGsが主流化している。枕詞や精神論ではなく、あらゆる側面で本流に据える動きになっている」――。そう未来まちづくりフォーラム実行委員長の笹谷秀光氏は分析する。行政では各自治体のフラッグシップにあたる政策に反映されており、例えばSDGs未来都市のひとつ、熊本県のSDGs企業認証制度のチェックリストは既にすべてターゲットレベルで考案されている。「農林水産省の「みどりの食料システム」も隅から隅までSDGsの理念が繁栄され、経済産業省はSDGs経営ガイドを発行し、金融庁は基準作りに邁進中と、SDGsは今や「国の政策の中心になっている」と笹谷氏は解説した。

未来まちづくりフォーラム実行委員長の笹谷秀光氏

一方、民間企業では、2018年4月に「日立ショック」、2019年には「トヨタショック」とも呼べる企業の意思表示、取り組みの発表があった。直近ではSOMPOホールディングスも最先端のSDGsに取り組み始めた。これらは極一例だが、一部上場企業のほとんどがSDGsを中心に据え始め、事業活動の推進にSDGsを紐づける企業が刻々と増え続けている。

大学・研究機関も取り組みを始め、メディアによるSDGsや社会課題解決の発信も加速している。このような社会の流れの中で「『未来まちづくりフォーラム』を個性あるフォーラムに育てたい」と笹谷氏は奮起しているという。

「個性あるフォーラム」とはどういったことか。笹谷氏は「ローカルが重要な一方で、都会のまちづくりも磨かなければならない。日本全国でエリアごとのマネジメントにSDGsや本フォーラムを生かすイメージで進めたい」と今年度の展望を語った。その時に、企業の力をいかに使い、社会課題の解決をどのようにマネタイズ可能なプロジェクトにしていくか。「SDGsの推進はそういう段階(実行・実装する段階)だ」と笹谷氏は断言し、さらに次のように連携を促した。

「『未来まちづくりフォーラム』という名称だが、テーマを『まちづくり』に限定する必要はない。企業と企業、企業と行政、企業とNPOの連携、原点であるコラボレーションに目を向け、SDGsの17番、パートナーシップの妙を見せたい」

「未来まちづくりフォーラム」は英語で「Sustainable Cities and Communities Forum(サステナブル シティーズ アンド コミュニティース フォーラム)」だ。まちづくりはコミュニティという概念に普遍化し、「街」という領域を超えた捉え方をしていくという。ポストコロナに向けて混迷の時代が続くが、カーボンニュートラルを主軸にしながら「ガラリと世界観を変える。大きく変革する、その最先端を探るヒントが豊富に生まれる場にしたい」と笹谷氏は意気込む。

SDGs生かすまちづくり、政府の方針は――内閣府 北廣雅之参事官

内閣府の地方創生推進事務局参事官の北廣雅之氏は「未来まちづくりフォーラム」実行委員会でオンラインで講演をした

内閣府の地方創生推進事務局参事官の北廣雅之氏は、最新の政府の動向、政策を中心に解説した。特にポイントとなるのは2021年6月、政府の「第10回SDGs推進本部会合」で決定した「自発的国家レビュー(VNR:Voluntary National Review、ボランタリーナショナルレビュー)」だ。国内のSDGs達成に向けた取り組みがどこまで進んでいるのかを明確にし、2017年以来、4年ぶりに7月に国連のハイレベル政治フォーラムで発表した。

VNRではSDGs推進に向けた8つの優先課題それぞれに対応するSDGs未来都市の代表的取り組みを報告しているほか、内閣府の「官民連携プラットフォーム」の取り組みや地方創生SDGs金融の取り組みについても報告している。今後の方針として政府は、各国共通のテーマである「SDGsのローカライゼーション」を日本でさらに推進し、ハイレベル政治フォーラムなどを通じて発信、さらに各都市間の連携を推進することを掲げている。

一方、日本の地方創生の根幹にあるのは昨年12月に閣議決定された、第2期「まち・ひと・しごと総合戦略」(2020改訂版)だ。この戦略では横断的な目標として「新しい時代の流れを力にする」ことが掲げられ、Society5.0と並び地方創生SDGsの推進が挙げられている。北廣参事官は地方創生の目標を「人口減少と地域経済縮小の克服」と「まち・ひと・しごとの創生と好循環の確立」の2点であると改めて強調した。

先進的な自治体は「SDGs未来都市」に

SDGs未来都市は毎年約30都市が選定され、これまでの4年間で124都市が選定されている。そのうち「特に先導的」とされる自治体によるSDGsモデル事業は40事業だ。「モデル事業」というだけあって、北廣参事官は「これらの事業はほかの自治体でも真似をしてほしい、と思えるような事業」と説明。このモデル事業には上限合計2700万円の補助金が支給される。しかし将来的には補助金に頼ることなく、あくまでも自律的好循環を実現するような事業構想が必要なことはポイントだ。

今後も240都市を目指し拡大する予定のSDGs未来都市だが、北廣参事官は「2021年度の選定で特に特徴的な事例」として北海道 上士幌町の「スマートタウンで“弱点”転変!かみしほろ幸せ循環」プロジェクトを紹介した。

北海道の中央部に位置する上士幌町ではスマートタウンを推進。全世代のコミュニケーションを活性化させ、移動の利便性向上を図り、「誰もが生涯活躍」できるまちづくりを進めている。再生可能エネルギーの地産地消やEVを活用した空港直行便の運航など、関係人口創出の取り組みも盛ん。そのほかの具体的なコミュニケーション創出やITを生かした施策により、同町では減少し続けていた人口が63年ぶりに増加に転じたという。

官民連携、「官」側の歩み寄りは

自治体が自律的好循環の実現を目指す上で欠かせない要素が、民間との連携だ。地域経済に付加価値を生み出す企業や、専門性を持ったNPO/NGO、大学・研究機関と、自治体がパートナーシップを深める場として内閣府は「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」を設置している。プラットフォーム会員数は自治体984団体、関係省庁13団体、民間企業やNPO、大学等は4842団体(いずれも2021年8月末時点)、合計5839団体となっている。

具体的に官民の連携とはどのように行えばいいか。地域課題を深く知っているのは自治体だが、企業は自治体にどうアプローチすればいいかが悩みどころとなる。一方、自治体側は抱えている課題をオープンにする必要がある。まず官民連携のファーストステップは、自治体の困りごとを民間に対して開示し、自治体にないリソースを地域の企業などから収集することだ。それは企業側にとって新たなビジネスチャンスとなる。内閣府は今年6月、自治体職員向け官民連携講座をオンラインで開催したり、7月には自治体と民間企業等が1対1で意見交換を行うマッチングイベントをオンラインで開催したりするなど、具体的な方法や考え方を共有し、各地方自治体の理解を促す施策を展開しているという。

地域銀行との協力、自律的好循環の実現に必須

内閣府が進める施策の3本柱で「SDGs未来都市」「官民連携プラットフォーム」に並ぶ重要施策が地方創生SDGs金融の推進だ。地域企業の収益が地元の金融機関を通じてさらに地域に再投資されることを狙い、確固とした自律的好循環を形成する要とも言える政策だ。

内閣府はまず、地方創生SDGsに積極的な地域企業の見える化を推進しているという。そのためには自治体による、企業の登録・認証制度が有効だと考え、昨年10月には「地方公共団体のための地方創生SDGs登録・認証制度ガイドライン」を取りまとめた。同時期に内閣府が行ったアンケートによれば、「地方創生SDGs金融を具体的に推進している」と回答した自治体は58自治体。そのうち13自治体が登録・認証制度を活用しており、30自治体が金融機関との連携を行っているという内容だった。内閣府ではKPIとして2024年度までに地方創生SDGs金融に取り組む自治体数を100団体にすることを目指す。

北廣参事官は地方創生SDGs金融に関する「ベストプラクティス」として埼玉県と埼玉りそな銀行が連携した「ESG目標設定特約付融資~TryNow~」横浜市のSDGs認証制度「Y-SDGs」を紹介した。

グローバルの潮流も踏まえSDGs推進を

内閣府が2021年に上場企業3749社と中小企業940社に対して行った調査では、SDGsの認知度は回答企業の94%に昇ったという。そのうちSDGsの達成に向けて取り組みを行っていると答えた上場企業は68%で、前年度の同様の調査結果の49%から大幅に上昇している。さらにこのうち78%がSDGsへの取り組みを「現在の収益事業の一部と位置付けている」と回答した。

SDGsを認知している上場企業では「取引先からSDGsへの取り組みを求められている」と回答した企業が48%、逆に「取引先にSDGsへの取り組みを求めている」と回答した企業が38%にもなる。サプライチェーン上においても、ビジネスをする上でSDGsが果たす役割が大きくなっていると言えるだろう。一方で中小企業ではSDGsの認知度が42%と比較的低い数字だ。

北廣参事官は「定性的な内容だが、欧州に比較すると『非常に低い印象だ』と聞かれる。脱炭素に関わるパリ協定の内容や、グリーン投資は必須項目と言える。欧米ではレギュレーションの確立が本格化しつつある」とグローバルの潮流の中で国内の取り組みがまだまだ遅れている認識を示し、「海外の情勢を踏まえながら地方創生SDGsを進めなければならないと考えている」と意欲を見せ、「未来まちづくりフォーラム」実行委員会での活発な議論を促した。

第4回未来まちづくりフォーラム 開催概要
テーマ:日本SDGsモデルの最前線 ―より良き回復(BuildBackBetter)に向けて―

会 期: 2022年2月25日(金)10:00‐18:30
会 場: パシフィコ横浜ノース横浜市西区みなとみらい1-1-2/オンライン
参加費: 5,000円(税別/事前登録制)※自治体関係者は無料にてご招待
主 催: 未来まちづくりフォーラム実行委員会
(実行委員長:笹谷秀光 CSR/SDGsコンサルタント)
協 賛: ご協賛各社
後 援: 内閣府 / 総務省 / 文部科学省 / 厚生労働省 / 農林水産省 / 経済産業省 / 国土交通省 / 環境省 / 全国知事会 / 全国市長会 / 全国町村会 / 一般社団法人CSV開発機構、全国地ビール醸造者協議会(JBA) / 一般社団法人ソーシャルビジネス・ネットワーク / 一般社団法人チームまちづくり / エコッツェリア協会(一般社団法人大丸有環境共生型まちづくり推進協会)(一部申請中)
内 容: 基調講演 / パネル・リレーセッション / 展示 / ネットワーキングランチ他
対 象: 地方創生まちづくりに取り組む企業・団体、 自治体、 社会起業家、 研究機関、 他
併 催: サステナブル・ブランド国際会議 2022 横浜
※2/24(木)の「サステナブル・ブランド国際会議 2022 横浜」へもご参加いただける+SB1DayPASSもご用意予定。