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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

ファクトリエ、国内初の水平リサイクルTシャツ発売 着古したらまたTシャツに

コットンTシャツを再びコットンTシャツへ――。メイドインジャパンのモノづくりを世界に発信しようと、国内の工場と直接提携する形で商品を展開しているブランド「ファクトリエ」がこのほど、オーガニックコットンを使用した白いTシャツを消費者に販売し、着古してもらってから回収し、国内の工場で再度、綿から糸に戻して、もう一度、Tシャツへと生まれ変わらせて販売する新ラインを立ち上げた。コットン製品をコットン製品へと水平リサイクルするのは国内初という。工場の利益を確保するため、中間業者を介さず、できるだけ小さなサイクルで製品を消費者へと届けるビジネスモデルを活用した、新たなサステナブルファッションへの挑戦だ。(廣末智子)

ファクトリエは山田敏夫代表が「本物のブランドはモノづくりからしか生まれない」という信念のもと、2012年に創業したライフスタイルアクセント(本社・熊本市、東京事務所=東京・中央)が、日本各地の工場と直接提携して高品質な洋服などをつくり、工場の希望価格を基に設定した適正価格で販売しているブランド。メンズ、レディース、ベビー用品と幅広く扱い、オンラインと実店舗3店(銀座店、名古屋星が丘テラス店、熊本本店)で販売している。

オーガニック認証取得の白一色 着古してもらってから店頭で回収

新ラインで扱うTシャツは、オーガニックテキスタイルの国際基準であるGOTS認証と、米国農務省によるオーガニックコットン認証であるUSDA認証の2つの認証を取得したトルコ原産のオーガニックコットンを、繊維の中に空気を含むよう加工した糸を使用。「太番手の天竺編み」で縫製し、厚みがありつつも重くなり過ぎず、ソフトな風合いを出すよう工夫した。吸水・吸湿性にも優れ、肌触りが良いのも特徴という。カテゴリーとしてはメンズ・レディースを問わないユニセックスだが、サイズはメンズのS〜LLを揃えた。再生時に色が混ざるのを防ぐため、まずは白一色から販売を始めている。

水平リサイクルの仕組みとしては、まずはこのTシャツを購入し、着古してもらってから各店舗へと持ってきてもらう(購入者負担で配送も可)。回収したTシャツは福祉施設で有償協力を得て洗浄した後、10センチ×10センチサイズに細かく切り、これを大阪府阪南市にある大正7年創業の「大正紡績」で「反毛機」と呼ばれる機械に掛け、何度も生地を引っかいて、元の、ふわふわの状態の綿に戻す。次にこの綿を、“古き良き小口径丸編み機を守り続けている”という愛知県一宮市のメリヤス工場「今枝メリヤス」で再び糸にし、最後に兵庫県加西市の縫製工場「エポック」で、長年にわたって培ったインナーウェアの技術を生かして新しいTシャツとして再製品化する。

「原材料の調達と輸送」を変えれば、ファッションの環境負荷は減る

新ラインについて31日に会見を開いた山田代表は、ファッション産業の環境への負荷を考えた時、「いちばん影響が大きいのが、原材料の調達と輸送だと気付いた」と説明。その根拠には、国内に供給される衣類から排出されるCO2(二酸化炭素)のうち実に94%が、また、国内に供給される衣類の生産に必要な水についても91.6%が、いずれも「原材料調達から輸送まで」の段階で排出されているという2020年度の環境省のデータを挙げ、「ここに光を当て、どうにかしていくことで、CO2も、水の使用量も大きく変わる可能性がある」と強調した。つまり、現状では米国やインド、トルコなどから輸送している綿花を日本国内で使い続け、「できるだけ小さなサイクルで回す」ことで環境負荷を減らそうというのが今回の取り組みであり、リサイクルの各工程にかかわる工場が大阪、愛知、兵庫と距離が近いこともそうした考えに基づくものだという。

そして、他のファッション小売り業者と違い、小規模工場を中心とする国内の歴史ある紡績・縫製工場と強力なネットワークを持ち、製造と販売とが直結したビジネスモデルを貫いていることで、リサイクルにかかるコストを低く抑えることが可能であるからこそ実現することができた挑戦であることを強調した。

1枚3960円は環境の啓発と未来への投資

題して“着なくなったら糸になるサステナブルなTシャツ”の価格は、サイクルの語呂合わせから税込1枚3960円。ファクトリエの通常のTシャツは安いものでも6000円、標準価格は1万1000〜1万2000円で、それに比べると格段に安いが、「安いから売れるという商品ではない。環境の啓発と未来への投資だ」と言い、ほかの商品で利益を確保しながら、この価格を維持していく方針という。「未来への投資」には、この水平リサイクルが普及すればするほど、同社や各工場にとっても生地や糸を新たに買わなくても良いことになり、原材料費が少なくて済むようになるという意味が込められている。

そもそもが商品が店頭に並ぶまでに中間業者が存在するため、低価格な商品が増えるほどに経営が圧迫され、倒産や人員削減を招いていた地域の縫製工場の状況を打破し、アパレルの構造改革を起こそうと立ち上げたファクトリエ。会見で山田代表はこのほど発表されたIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の新たな予測にも触れ、「あらためて地域復興の観点からだけではなく、事業としてサステナビリティに取り組まなければならないと思った」と危機感をあらわにし、「まずは2、3年後に毎年1000〜2000枚ほどは水平リサイクルできるようにしたい。最終的にはTシャツだけでなく、どんな服でも生地から生地へと再生できる世界をつくりたい」と抱負を語った。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。