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花王、取引先に第三者監査を実施 環境・人権のハイリスクサプライチェーン特定へ

花王はこのほど、責任ある原材料調達の実現に向けて、サプライチェーンの取り組みを強化する新たな方針を策定した。直接の取引先はもちろん、各原材料が生産される小規模な工場や農園などのグローバルサプライチェーン全体のトレーサビリティ確保や、資源や環境の保護、安全や人権などの社会的課題への配慮を徹底する。その一環として、サプライチェーン上のESG課題に対処する世界最大規模のプラットフォームである国際機関による第三者監査を実施。違反がある場合には改善指導や取引の中止などの対応を取るほか、人権や環境面での課題が大きなサプライチェーンを「ハイリスクサプライチェーン」として特定する。「現場での対話を通じて課題の本質を見極め、取引先やNGOらとともに解決に向けて取り組み、進捗状況を公表していく」としている。(廣末智子)

世界最大のサプライチェーン管理プラットフォームへの加盟求める

同社は2013年に国連グローバルコンパクトの原則に基づき、グループ各社が社会面と環境面で考慮すべき事項を定めた独自の「調達先ガイドライン」を策定(取引先にも花王と同様の人権と環境への配慮を求めるため、2017年に内容を改訂)。2019年4月に策定したESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」の中では19の重点テーマの一つに「責任ある原材料調達」を挙げ、その「中長期目標」として、2025年までに家庭用製品に使用した認証紙製品・パルプの比率を100%にし、小規模パーム農園までのトレーサビリティ確認を完了することを示している。

同社によると、今回、策定した「調達に関わるサプライチェーンESG推進ガイドライン」は、これまでにも同社がサプライチェーンに対して行ってきたESG視点での取り組みをあらためて定義し、そのプロセスを開示するとともに、これまでは行っていなかった第三者監査の実施を盛り込んだものという。それというのも同社は2014年に、グローバルサプライチェーンにおける倫理的且つ責任あるビジネス慣行の促進を目的に労働基準などの情報の共有と確認を行う世界最大規模のプラットフォームである「Sedex(Supplier Ethical Date Exchange)」に加盟、2017年からは取引先についてもSedexへの加盟を要望してきており、2020年度末のグローバルでの取引先の金額ベースによる加盟割合は83%に達しているという。

第三者監査は労働と安全衛生、環境、企業倫理の観点で

今回のESG推進ガイドラインでは、さらなる社会的課題解決の推進に向け、あらためてSedexへの加盟と、ロンドンに本部があり、機関投資家が運営する非営利団体のCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)が、世界の主要企業に対し、サプライチェーン全体での気候変動や水、森林に関する情報開示を求めるプログラムに参加するよう要望するとともに、そうした取り組みが不十分な取引先については改善を要求。さらに、新たにSedexの4つの柱である労働と安全衛生、環境、企業倫理の領域をカバーした監査フォーマットによる第三者監査を実施することを明記した。

また同社はこれまでにも「社会的責任」と環境への配慮を遵守する取引先から優先して調達を行っているが、今後は監査を含めて「調達先ガイドライン」の遵守状況の確認を行い、違反がある場合には、改善指導や取引の中止などの対応を取る、としている。

さらに今回のガイドラインでは、天然油脂や紙、パルプなどの調達にかかわる取引先や、人権・環境面でのデューデリジェンスが不十分な取引先を「ハイリスクサプライヤー」と定義し、第三者監査を優先的に実施することを強調。また調達購入額の大きさなどを考慮した「ビジネス視点」と、素原料の生産先のリスクなどを考慮した「エリア視点」に「ESG視点」を加えた3つの視点から「ハイリスクサプライチェーン」を特定し、ハイリスクサプライヤー、ハイリスクサプライチェーンともに担当役員の承認の上で毎年見直しを実施する。なおリスクの高いエリアには、東南アジアや中国、アフリカや南米などの地域を想定している。

花王が調達するサプライチェーン上で人権・環境リスクが想定されるエリア(花王)

ハイリスク特定で課題の本質解決へ インドネシア小規模農園で取り組み開始

こうした過程を通じて特定されたハイリスクサプライチェーンに対しては、現場での対話を通じてリスクを把握し、課題の本質解決に向けたトレーニングプログラムなどの活動を取引先およびNGOと一緒に行い、進捗状況について随時確認し、公表する方針だ。

同社によると、パーム油、紙・パルプのハイリスクサプライチェーンに関しては既に支援を始めている例もある。RSPO(持続可能なパーム油の生産と利用を促進するための円卓会議)認証油の使用拡大に向けたパーム油のサプライチェーンに対する取り組みでは、昨年からパーム栽培の技術も低く、収穫量も少ないため経済的にも厳しい状況にあるインドネシアの独立小規模農園の課題解決を支援するプロジェクトを始動。2030年までに約5000農家を対象にグループ企業やNGOらとともに生産性向上(目標収率2倍)を目指す技術指導やRSPO取得に向けた教育指導を行う計画で、「仮にすべてのインドネシア独立小規模農園のパーム生産性が2倍になった場合、ボルネオ島に現存するパーム農園と同等面積(約400万ヘクタール)に相当する新たな森林伐採を抑制する効果が期待できる」という。

Sedexによる第三者監査は、コロナ禍でサプライチェーン上の各企業や生産者も大変な状況下でのスタートとなるが、オンラインによる現場確認なども取り入れ、年内には開始する予定。同社の広報担当者は、「ESG視点でのサプライチェーンに対する取り組みはこれまでにも力を入れてきたが、より透明性を担保するため、第三者監査を取り入れることとした。インドネシアの小規模農園の支援の例のように、ハイリスク先を特定することで問題の本質を見極め、その解決に向けて当社が直接サプライチェーン上の生産者を支援するためのアプローチにもつなげていきたい」と話している。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。