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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

生理や更年期に関する正しい知識身に付け、相互理解を 日本フェムテック協会設立

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Image credit:maruco

女性も男性も誰もが、自分の心と身体の状態を知り、うまく付き合いながら活躍できる。お互いがお互いを気遣いながらーー。そんなウェルビーイングな社会の実現を目指し、このほど経営者や医師、ジャーナリストらを発起人とする一般社団法人日本フェムテック協会(東京・港)が設立された。フェムテックとは、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)とを掛け合わせた造語で、生理や妊娠、出産、更年期など女性特有の身体の変化に伴う不調を科学技術によって解決する商品やサービスをいう。同協会では医師の監修に基づく検定や企業研修などを通して、この言葉にさらにリテラシー(知識)を組み合わせた「フェムテラシー」を向上させることで、女性が自分自身のホルモンマネジメントを行い、心身の不調によって昇進を諦めたり、退職を余儀なくされることがないよう、健康の悩みをオープンに共有し助け合える職場環境を整えたいとしている。(廣末智子)

発起人の1人で、代表理事を務めるのは、女性の悩みを解決するフェムテック商品やインナーの企画開発を手がけるシルキースタイル(東京・港)代表取締役の山田奈央子氏。

山田氏らは、ジェンダーギャップ指数2021でも、世界156カ国中120位であり、G7の中でも低迷しているなど、未だに根強い日本の“ジェンダー不平等”を打破するためには、「女性が長期的に働きやすい環境と企業全体のパフォーマンスの向上」が必要不可欠。そのためにも女性の健康とフェムテック・フェムケアに関するリテラシーを企業内に築くことが急務と考えたという。そうした活動によって、「SDGsの目標である『すべての人に健康と福祉を』や『ジェンダー平等を実現しよう』『働きがいも経済成長も』の達成を企業とともに目指す」としている。

更年期自覚の40代女性、昇進辞退約50%

同協会によると、東京大学大学院医学系研究科の教授らの試算で、女性の月経に伴う症状が原因の労働損失額は年間約4900億円に上るという。また2018年の日本医療政策機構の調査では、生理痛やPMS(月経前症候群)により女性の実に94%がパフォーマンスの低下を感じており、45%が「パフォーマンスが半分以下になる」と答えている。

さらに更年期症状を自覚している40歳以上の女性のうち、約50%が昇進を辞退、約17%は退職を余儀なくされているといい、同協会では「こうした問題はSDGsの観点からも、もはや当事者1人で悩むのではなく、企業全体、ひいては社会全体で早急に対応すべき課題だ」と警鐘を鳴らす。

包み込む手の形をした協会のマークは「誰かを否定せずに受け入れること」を表すとともに、テクノロジーとリテラシーとが融合し、「技術と理解があることによって見えてくる女性に秘められている可能性」や、さまざまな個性を持つ、人々の多様性を表現しているという。

何かを諦めるのでなく、自らがホルモンマネジメントを行い、誰もが自分らしく活躍できる社会に

山田氏は「産前産後や更年期など人生の節目節目で乗り越えなければいけない体調面の問題と向き合う女性にとって、その時々に自分の身体と心にとってどうすることがいちばんいいのかを知る上で判断基準となる正しい知識を身に付けることは何より重要だ。女性特有の体調の問題によって、何かを諦めるのでなく、知識と技術の力で自らがホルモンマネジメントを行い、誰もが自分らしく活躍できる社会にしていかねばならない。そのためにも性別を超えた相互理解の土壌が各企業にあることが不可欠で、男性にも検定や講座、研修に多く参加し、女性の心と体の特性について基礎知識や専門知識を持って対応してほしい」と話している。

誰でもいつでも10分で受けられるフェムテック検定をリリース

具体的には、いずれも医師の監修に基づいた「検定の運営」と「研修プログラムの提供」、また「フェムテック・フェムケア情報メディアの運営」を3本柱とし、女性の心と身体に関する正しい知識とケア方法について啓発する。

検定に関しては、財団の設立と同時に、ウェブを通して「誰でもいつでも10分で受験できる」のが特徴の「フェムテック検定3級」(無料)をリリース。テスト形式の設問に答えることで、ニュースや日常生活で話題にのぼるキーワードを中心に、女性の身体についての意外に知られていない知識が習得でき、女性が自分の身体と心を自分で知り、自分で守るための基本的教養を身に付けることができるという。合格者には「フェムテックアンバサダー」の認定書をダウンロード形式で交付する。

2級、1級検定は、スペシャリスト育成が目的 管理職や経営陣ら対象のセミナーも

さらにオンライン講座とのセットによる2級、1級の検定(いずれも有料)についても順次受講体制を確立していく方針で、第1回検定を11月18日と24日に行う予定の2級では、「女性の体 基礎編」と「女性の体とこころのケア基礎編」(医療領域は除く)のテキストを基に、正しい知識で自分の心と身体をマネジメントするためのスキルを、1級(検定の開催日時は未定)では医学知識をも含む上級編のテキストを基に実践的な専門知識を用いて、他者の心と身体についてもアドバイスやマネジメントができるためのスキルを習得することができる。2級合格者は「認定フェムケアニスト」として、1級合格者は「認定フェムケア指導士」(医療行為ではなく、相談に乗る存在)として活動することができるという。

研修プログラムには20〜50代の働く男女や管理職、経営陣などを対象に、「フェムテック入門セミナー」や「フェムテックセミナー(2級の検定内容)」「フェムテックアドバンス研修(1級の検定内容)」などを用意。女性の健康課題への取り組みを入り口から学び、男女それぞれのライフステージと身体の変化に関する正しい知識を身につけ、長期的な視点で自分の身体と心のバランスマネジメントができるようになることを目指すとともに、女性の健康課題に関して男女が相互理解を深めながら取り組むための方法などを指導する。検定同様、女性の身体に表れる年代ごとの基礎知識をベースに医療に携わる専門家らが研究・開発した独自の教材を用い、各人の健康状態や悩みを共有し合える職場環境の定着を図る。

また協会のHP上で医師や専門家による医療コラムを充実させ、検定や研修を受講後も、情報をアップデートし続ける場を提供する。

日本フェムテック協会の理事には、家事代行サービス「ベアーズ」(東京・中央)副社長で、“日本の暮らし方研究家”でもある高橋ゆき氏、スキンケア商品の開発を行うレナ・ジャポン・インスティチュート(東京・港)の代表取締役で昭和女子大学客員教授なども務める蟹瀬令子氏、女性のヘルスケアや医療情報が専門の医療ジャーナリストで、自身も乳がんサバイバーであることから、がんやがん検診の啓発活動を行う増田美加氏、女性泌尿器科医の関口由紀氏、日本産婦人科学会専門医の池袋真氏、キャリアコンサルタントの市川美和氏の6人が就任。このほか、常任理事や顧問、幹事、事務局などにもさまざまな観点からフェムテックに関する知見を有するメンバーが名を連ねている。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。