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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

食の力で環境や社会、暮らしを再生する 

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右上から時計まわりに、表氏、山崎氏、下田屋氏、生江氏

レストランの語源には「回復」を意味する言葉がある。サステナブル・ブランド国際会議2021横浜では、命を育み、暮らしや社会を豊かにする食をテーマに、ミシュランガイドで三つ星を獲得したフランス料理店をはじめ、食を通して持続可能な社会をつくろうと取り組む先進的な企業や団体が登壇した。人々の暮らしを支える食とサステナビリティのこれからについて議論が行われた。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局)

ファシリテーター
菅野 晶仁 YUIDEA エンゲージメントコミュニケーション事業部門 専務執行役員
パネリスト
下田屋 毅 日本サステイナブル・レストラン協会 代表理事
生江 史伸 レフェルヴェソンス シェフ
表 秀明 Innovation Design サステナブルデザイン室 室長、オペレーションデザイン室 室長
山崎 寛斗 フリーフロム / グリーンマンデージャパン 代表取締役社長

ファシリテーターを務めたYUIDEA専務執行役員の菅野晶仁氏は、「『なぜ食にサステナビリティが必要なのか』『食をとりまくサステナビリティとは何か』『どうやって食をサステナブルなものにするか』を軸に、サステナブル・レストランやサステナブル・フードに取り組む方々がどのようにそれを実践し、どんな意識を持っているかということを知ることで、ともに学び考えたい」と会場に呼びかけ、セッション「『食とくらしの好循環へ』~ 食から始めるリジェネレーション」は始まった。

サステナブル・レストランを日本中に

2010年に英国で誕生したサステイナブル・レストラン協会(SRA)は、持続可能なフードシステム(農林水産業から消費者の食生活にいたるまでの一連の流れ)を構築することを目指し、調達など事業を通して、環境や社会課題に取り組む飲食店を支援する。飲食店・レストランの持つ、生産者と消費者をつなぐ役割と影響力を重視し、その取り組みによって社会全体をより持続可能にしていこうとするものだ。

SRAは、地産地消や持続可能な漁業などの「調達」、雇用やコミュニティへの配慮などの「社会」、水資源の管理や自然エネルギーの使用、食品廃棄などの「環境」の3つの観点から250の質問事項を通して、飲食店を評価し、サステナブル・レストランの格付けを行う。現在までに英国を中心に約1万2000店が協会に加盟し、ギリシャ、ハンガリー、香港、台湾、チリへの展開が進んでいるという。日本では2018年に同協会が設立され、昨年から本格的に活動が始まった。

日本サステイナブル・レストラン協会代表の下田屋毅氏は、「食やその調達の背景には、森林破壊や生物多様性の喪失、気候変動、プラスチックの海洋汚染、児童労働、強制労働、動物福祉などさまざまな問題があるが、あまり知られていない。そうした背景をレストランのシェフや生産者、消費者に理解してもらいながら、取り組みを進めていくことが非常に重要」と語る。

協会には、レストランだけでなくカフェや居酒屋、学食、社員食堂、ファーストフード、キッチンカー、ケータリングなど幅広い形態の飲食店が加盟できる。

下田屋氏は「レストランのシェフがサステナビリティを推進することが望ましいが、実際は、単独で取り組みを続けることは難しい。消費者の方たちが取り組みを理解し、サステナビリティに配慮したレストランが選ばれる状況にならなければならない。われわれは消費者にそのことを伝え、消費者に選ばれるレストランになってもらい、さらにサステナビリティに配慮した生産者・サプライヤーが選ばれるような状況をつくれるようサポートしていきたい」と力を込めた。

SRAは、世界的に権威のあるレストランの格付け「世界のベストレストラン50」のサステナブル・レストラン賞の評価・選定も行っている。そのアジア版の「サステナブル・レストラン賞」を受賞したのが、続いて登壇した生江史伸シェフが率いるフランス料理店レフェルヴェソンスだ。

ミシュラン三つ星レストランが取り組むサステナビリティ

自身の店からオンラインで登壇した生江氏は、レフェルヴェソンスのダイニングを写したスライドを投影し、2010年にオープンして以降の歩みを話した。2018年には「アジアのベストレストラン50」に選ばれると同時にサステナブル・レストラン賞を受賞し、昨年にはミシュランで三つ星を獲得。さらにミシュランが新設したサステナビリティの取り組みを評価する「ミシュラン グリーンスター」にも選ばれた。

レフェルヴェソンスはフランス料理店でありながら、箸を使うといい、箸置きの横にナイフ置きがあり、料理の最初から最後まで1本のナイフを使って料理を楽しむ。それによって洗い物の回数を減らし、洗剤や水の使用量をできるだけ抑える工夫を行っている。ユニフォームのシェフコートもリサイクルコットンを使ったものを着用しているという。

料理については、全国の農家から取り寄せた野菜を多彩に使っているのが特徴だ。一皿に40〜60種類の野菜を使うという美しい料理の写真を示し、提供時には懇意にしている生産者とその素材を記したリストを見せるようにしていると紹介。料理もあまり手を加えず、生で食べられるものは生で、火を通さなければいけないものは、最低限の火の通しで完成させる。素材を生かすだけでなく、加熱料理で消費するエネルギーを低減させることにもつながっているという。さらに調理用の薪にもこだわりをみせる。東京都檜原村のミズナラの間伐材を使い、人間の暮らしの基盤を支える森を守る地域林業とも連携する。

レフェルヴェソンスの代表的な料理、シグネチャー・ディッシュもまた野菜だ。通常は、魚や肉を使うが、カブをまるごと焼いた料理を出す。メインディッシュの肉料理には鴨肉のみを使う。サステナブル・レストラン協会の評価項目には、環境負荷やアニマルウェルフェアの観点から「より多くの野菜とベターミートを提供する」というものがある。生江氏は、ベターミートについては飼料にいたるまでこだわっていると語り、「飼料もできるだけ日本産のものを使う。フードマイレージや食料自給率の課題解決にもつながるし、出所のわかる飼料を使うことで透明性を持った料理を提供できる」と説明した。

コースの最後を飾るのは、メインディッシュとして提供する鴨のムネ肉以外の骨も含む部位を余すことなく使って完成させたパスタだ。これには、野菜の可食部でない部分も使って出汁をとっている。パスタをコースの最後に出すことで、満腹感・満足感を調整でき、コースの始まりから多くの量を出し料理が残るといった事態を避けることもでき、フードロス対策になっている。

生江氏は「サステナビリティに取り組み、色々な問題に立ち向かう時にくじけてしまいそうなこともある。やはり、創造性やイノベーションがサステナビリティを確立していくには必要」と語り、約30人いるというスタッフが働く店の運営においては、「フランス料理店はトップダウンで運営していくお店が多いなか、私たちは民主的で平たいオープンディスカッションをしながら、新しいアイデアを年齢あるいは経験に関係なくどんどん吸い上げ、いい営業をしていこうという風に取り組んでいる」と話した。

サステナビリティに取り組み、飲食店の可能性を追求する

Innovation Designは「『ひと』と『地球』の未来を描く」をビジョンに掲げ、東京や横浜でレストラン事業とみやげものショップを展開するほか、ホスピタリティ産業の経営コンルティングも手がける。同社が社会的課題の解決に目を向けたきっかけは、横浜で自然栽培の農家を営むKururu farm & factoryが作る規格外の果物を使ったドライフルーツとの出合いにある。そこから国内で年間612万トンの食品ロスが出ている事実を身をもって知り、SDGsなどサステナビリティについて学びを深めた。

同社のサステナブルデザイン室の表秀明室長は「食品ロスの背景には、生物多様性や海洋汚染などいろいろな問題が眠っている。世界基準で考え、ローカルで行動するということの大切さを知った」と話した。さらに、昨年のサステナブル・ブランド国際会議で下田屋氏と出会い、サステナブル・レストラン協会を知ったことで、ビジネスとサステナビリティは両立できると気づき行動に移す決意を固めたと振り返った。

同社では、社員全員をサステナブルデザイナーに任命し、すべての部署の社員にどんな問題が起きているか調べてもらうようにした。例えば、サステナブル・レストラン協会が掲げる評価項目にある「ケージフリー(平飼い)の卵」はなぜ重要なのか、アニマルライツとはなにかといった具合にだ。「ブライダルマネージャーがケージフリーを、セールスのスタッフが廃棄物問題を勉強して、資料を作り、全員の前で発表するといったことをした」。

そうして、まずはサステナブルデザイナー全員で食品ロスの削減に取り組んだ。コンポストで堆肥を作り、野菜を育てる。提携農家の規格外野菜を週末マーケットで販売したり、問題を啓発するために店舗でおすそ分けとして配った。さらに保育園から大人までを対象に「おにぎりから考える地球温暖化問題」をテーマにワークションプを行い、食品ロスなどの社会課題をテーマにした映画の上映を行うソーシャル映画祭も実施している。

「飲食店ができること、その可能性を常に模索している。飲食店が単に美味しい料理と飲み物を提供するだけではなく、そういった気づきを与えられるような場所になれば、1の力が100になり、それがもっと大きくなっていくと、地球の未来を描いていけるのではないだろうか」

1食、週1回の菜食が社会を変える

続いて登壇した山崎寛斗氏は、植物由来のプラントベースフードを多方面から推進する2社の代表を務める。フリーフロムでは「プラントベースで日本と世界を繋ぐ」をテーマに事業を展開し、ベジタリアンやヴィーガン(完全菜食主義者)向けの情報発信と国内外のベジタリアン・ヴィーガン関連企業の海外進出を支援している。さらに、世界で浸透するゆるやかな菜食主義者「フレキシタリアン(フレキシブル+ベジタリアン)」のライフスタイルを提唱し、プラントベース・ムーブメントを巻き起こす香港発の社会企業「グリーンマンデー(Green Monday)」の日本支部代表も務める。

2012年に香港で創設されたグリーンマンデーは、気候変動や食料安全保障、健康問題の解決に取り組む企業で、プラントベース代替肉「オムニミート(OmniMeat)」を販売するほか、ヴィーガンカフェ「グリーンコモン」を香港全土と上海、シンガポールで展開。さらにプラントベース関連企業への投資も行う。一方で、持続可能なライフスタイルの啓発活動として、企業や飲食店、学校と連携し、週1日、月曜日は菜食にしようと呼びかけるキャンペーン「グリーンマンデー」を実施している。

山崎氏は、同社について「サステナブルな社会を実現するための世界的なエコシステムをつくっている会社だ。ヴィーガンと聞くと、大変そうというイメージを持つ方も多い。でも1食、週1回でもそういう食に変えることで、社会に大きなインパクトをもたらすことができる」と説明した。

世界的にヴィーガンやベジタリアンの人口は約7億人に達し、訪日旅行者を見ても年間145―190万人ほどおり、その飲食費は約450―600億円規模と予想されているという。山崎氏は、コロナ禍で日本でもヴィーガンやベジタリアンへの関心は高まったと話し、国内の食品・外食大手が続々とプラントベース市場に参入しているからことからも追い風が吹いているとの見方を示した。その背景には、健康志向やSDGsへの関心の高まりがあるという。「ようやくヴィーガン商品がビジネスとして成立するようになってきた。企業の食堂を借りてこうした話をしたり、週1回は菜食にしようということを呼びかける取り組みをしている。参加企業の方々とも一緒に広げていけたら」と呼びかけた。

サステナビリティの取り組みを継続する上で大切なこと

自社でもサステナビリティに取り組む企業や団体のブランディングを支援している菅野氏が、パネリストに対して「継続的に取り組める理由やどんな苦労があるか」と問いかけた。

生江氏は「やはり声を掛け合いながらやっていくこと。自分ひとりではなかなか超えられないところを、いろいろな方とコラボレーションするからこそできることがある。農家さんとのつながりもそうだが、名前を出し合うことで互いが切磋琢磨し合って、より良い選択をお互いに考えていくことをオープンにやっていく。見えないところではなく、皆さんに見えるところでやって、見続けていただけるように継続していく。見られているとちゃんとしたことをしないといけないと思うし、責任を果たしていくことにもつながる」と答えた。

表氏は「ストーリーを大事にしたい。生江シェフもおっしゃったように、農家さんにもたくさんの隠されているストーリーがあり、魚一つとってもそうで、全部にストーリーがある。それは、人を大切にするというところにもつながってくると思う。作り手や料理長も、僕たちサービスマンもそうだが、全員のストーリーを伝えてつないでいくということが大事だ」と語った。

山崎氏は「一緒に広めていただいている飲食店やホテルの方にとって、ビジネス性を確保でき、儲かるから続けられるということを重視している。ヴィーガン、ベジタリアンというとまだ一般層、マス層ではない。マスに届けるために、あえてそういう文言を入れないでほしいと頼み、菜食主義でない人たちに違和感なく手にとってもらい、食べた後に知ってもらうというのが継続の種のような気がしている」と話した。

下田屋氏は「パートナーシップを重要視している。コロナ禍で、飲食店・レストランは非常に影響を受けている。そんななかでも、やはりサステナビリティが店の持続性という観点からも重要だと考えている方々から問い合わせをもらい、われわれもどうやってサステナビリティを推進していくことができるかを伝えている。同時に、協会ではシェフ同士がオンラインで繋がる場を設け、いろいろな情報交換ができるようになってきた。いずれは日本の各地域にコミュニティができ、取り組みが広がって行くのではないか」と期待を込めた。