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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

アストラゼネカ、サステナビリティの柱は人と地球と社会の「健康」

新型コロナウイルスのワクチン開発で注目される英製薬大手のアストラゼネカは、同社のビジネスの中核である「健康」を社会貢献の中核でもあると位置付け、パンデミックの初期の段階から、強いコミットメントを持って、ワクチンを公平に幅広く、世界中に届けたいと考えてきた。サステナブル・ブランド国際会議2021横浜の基調講演で、同社のEU・カナダ地域のFinance VPであるアナ・ポンソーダ・アルバレス氏は、サステナビリティについて、「働きがいのある職場を実現する鍵」であり、「たとえ小さな行動であっても、すべての社員が日々実践することで会社の将来に大きな違いをもたらす」とする考えを強調した。(廣末智子)

「コロナの間は利益を出さないという心構え」ワクチン普及に強い決意

今年1月まで日本で勤務していたというアルバレス氏は、日本を懐かしみつつ、オンラインでスペインから登壇。はじめに同社の現況について、16ヵ国で26工場と拠点を持ち、グローバルの社員数は7万人を超えると説明。総売上高260億ドルのうち約60億ドルを研究開発に投資しており、臨床開発段階にあるプロジェクトは145、2020年の新薬の承認件数は29件だったことを明らかにした。日本の本社は大阪、工場は滋賀・米原にあり、従業員数は約3000人、総売上高は3745億円に上るという。

次に同氏は、健康が同社のビジネスの中核であり、社会貢献の中核でもあるとする考えから、「私たちの能力を使って最も意義のある影響を社会にもたらしたい」と強調。ここで昨年5月の段階でWHOのテドロス事務総長が発したという「このパンデミックは人類と地球の親密且つデリケートな関係性を思い起こさせるための注意喚起だ。人類と病原体との接点、地球を住みにくくする気候変動の脅威に対応しなければ、世界を安全なものにしようとする私たちの取り組みは失敗する」という言葉を紹介し、「当社においても、パンデミックの初期段階から、強いコミットメントを持って、ワクチンを公平に幅広く世界中に届けたいと考えてきました。このコロナの間は利益を出さないという心構えです」と述べ、まさに現在、世界に広がりつつあるワクチンの普及について引き続き力を入れる決意を示した。

サステナビリティ3つの柱

同社はサステナビリティに関してSDGsにも合わせて3つの柱を掲げており、そのすべてが「健康」というキーワードで括られるという。1つ目の柱である、すべての必要としている人に薬を届ける“医療へのアクセス”は人々の「健康」そのものに対する目標であり、2つ目に掲げる“環境保全”は、「私たちの生活や命にも影響を及ぼす『地球の健康』という観点」で、そして3つ目の“倫理と透明性”は、「すべての人の平等と繁栄を推進する上での『社会の健康』」と捉えることができるというわけだ。

このうち環境保全に関して、同社は2025年までにすべての事業活動における二酸化炭素の排出量をゼロにし、さらに2030年までにバリューチェーン全体の排出量をマイナスにする「カーボンネガティブ」を達成する目標を立てている。そのために最大10億ドルを投資することを公約に掲げており、具体的には、エネルギー生産性の向上と、100%再エネの使用、そして2025年までにすべての車両を電気自動車にするという。このうち100%再エネの使用に関して、すでに日本では昨年、約1万3000メガワット時の電力消費量を100%再エネでカバーすることに成功したと報告した。米原工場では全体のエネルギーの消費量を2015年の消費量と比較して現在20%ほど削減できており、今後数年のうちにソーラーパネルを設置することによって、工場で使う電力のうち17%を自社で作り出す計画という。

また日本では、地元のコミュニティとともに地域社会の環境保全にも積極的に取り組んでいるほか、大阪府などと連携し、地震などの災害時の避難所におけるがん検診の促進や、子どもへの健康教育などにも力を入れている。グローバルでは若者に対する食育やメンタルヘルスなどに関して当局や各種機関、NGOなどとも連携して行う「ヤングヘルスプログラム」を始動させており、近々日本でも開始する予定で、こうした社会貢献に向けてのコラボレーションを加速させている。

女性の活躍の場を増やすべき
サステナビリティは働きがいのある職場を実現する鍵

さらに同社のサステナビリティの3つ目の柱である“倫理と透明性”について同氏は、「われわれは基本的にインクルージョンとダイバーシティに100%コミットした形で進めていくという志を持っています」と強調。社員一人ひとりが会社の一員であるということを実感できるよう、かなりの尽力をしていると言い、一例として、「婚姻関係の福利厚生を活用したLGBT社員の第1号が誕生した」ことを挙げた。また女性の管理職登用を促進しており、日本では女性管理職比率がこの2年間で5%ほど上がった。この中には「上層部のトップのポジション」も含まれ、「日本でも組織全体において女性の存在感を高め、活躍の場をもっと増やしていくべきだ」とする見解を示した。

最後に同氏は、「サステナビリティが、社員のため、働きがいのある職場を実現するための鍵であると信じている」と力を込め、「会社と個々の社員がともに従事することでサステナビリティの取り組みが推進され、また、例え小さな行動であってもすべての社員が日々実践することによって会社の将来に大きな違いをもたらすことができる。それには短期間に置いて行動を起こすということが重要だ。“Now is time to take an action (今こそ、行動を起こす時だ)”」と締めくくった。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。SDGsを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。