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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

生物多様性の回復には、持続可能な生産と消費、保護区の拡大が必須

右上から時計まわりに、宮下氏、後藤氏、東梅氏、藤田氏

地球上の生物多様性はこの50年で68%減少している。すべての経済活動や暮らしの基盤となる生物多様性を回復していくためには、持続可能な生産と消費、環境保護区の拡大を組み合わせることが必要だということがわかってきている。この3つの方法について積極的な取り組みをする企業や組織がサステナブル・ブランド国際会議2021横浜に登壇した。持続可能な漁業により経済的にも働く人にも好循環を生んだ宮城県のカキ生産部会、持続可能な調達を強化する日本マクドナルド、木材を生産しながら野鳥の生息地を保全する森づくりを行う日本製紙が3つの視点でそれぞれの取り組みを発表した。(環境ライター 箕輪弥生)

ファシリテーター:
東梅 貞義 WWFジャパン 事務局長
パネリスト:
宮下 建治 日本マクドナルドホールディングス 取締役 執行役員
藤田 美穂 日本製紙 CSR本部 サステナビリティ経営推進部 部長
後藤 清広 宮城県漁業協同組合 志津川支所 戸倉出張所 戸倉かき生産部会 部会長

養殖の規模を縮小して好循環を生み出す三陸・戸倉かき生産部

生物多様性を回復させる1つめの重要な視点は持続可能な生産だ。漁業や林業などの一次産業でも、海洋資源の獲りすぎや過度な森林伐採などによる生物へのダメージが大きな問題となっている。

宮城県志津川でカキの養殖を行う漁業協同組合「戸倉かき生産部会部」は、東日本大震災をきっかけにカキの養殖を持続可能な生産方法に転換し、2016年に日本で初めてACS認証(国際養殖認証)を取得するなど大きな成果をあげている。

震災前はカキを養殖するいかだの間隔は5~15メートルと密に仕掛け、いかだの所有数も公平性を欠き、生産者の高齢化も進んでいた。

これを「30年後を考えた生産方法に変えよう」といかだの間隔をあえて約40mに広げ、数は3分の1に減らした。いかだの数も後継者がいるかなどの条件によりポイント制にして透明性をもたせた。生産量が減って収入が減るのではという不安の声もあったが、やってみるとカキは従来よりも早く1年で成長し、生産量も震災前の2倍になった。

そして労働時間が短くなり、経費も4割削減し、働き方の改革にもつながった。「取られる前に取る、自分さえよければいいという考え方から、みんなで豊かに、周りの人を考えるように変わった」と後藤部会長は当時を振り返って語る。

新たな養殖方法を続けるうちに「意識が変わるというより文化が変わり」(後藤部会長)、後継者が増え、生産者層が若返って持続可能な生産体制になるという好循環が生まれた。養殖を行う志津川湾も生態系が豊かになり、2018年にはラムサール条約湿地に登録された。

ファシリテーターを務めた東梅貞義・WWFジャパン事務局長は「持続可能な養殖業が、環境影響を低減するだけでなく、収益の改善や労働時間の削減、生産者の意識の変化にもつながる経済的、社会的な価値を生み出した好事例だ」と解説した。

サステナブル認証素材を導入する日本マクドナルド

日本マクドナルドは顧客のサステナブルな購買意識の高まりをとらえ、持続可能な調達を強めている。

使用する魚、コーヒー、食用油、紙製容器を100%サステナブルな認証を取得したものに変えた。具体的には、同社の製品「フィレオフィッシュ」に使用する白身魚を、MSC認証を取得した天然のアラスカ産スケソウダラに、店舗で使用しているパーム油をRSPO認証の油へ、コーヒーはレインフォレスト・アライアンス認証を取得した農園が栽培するコーヒー豆へ、紙製容器包装類はFSC認証済み資材へと100%移行している。

これらの認証ラベルについては、国内の約2900店舗で働く17万人のクルーに対して持続可能な調達について教育をしたり、学生団体とのオンラインセッションを行うほか、トレイマットやSNSを通じて丁寧に顧客に訴求するなど、多様なステークホルダーへ働きかけ、理解を深めている。

同社の宮下建治取締役は「持続可能な活動は経済的なメリットの追求だけでなく、楽しさと教育が重要だ」と話す。

さらに「サステナブルな調達を増やすことは、店舗の利用意向の拡大や信頼感など顧客の態度変容にもつながっている」と宮下取締役は調査をもとにビジネス面での効果を説明した。

野鳥の生息地保全と木材生産の両立を目指す日本製紙

印刷や新聞に使う紙の消費が減り事業構造の見直しをしている日本製紙は、事業基盤は森林資源だということを再確認し、持続可能な森林経営や木質資源の調達を推進している。

同社が持つ国内の9万ヘクタールの社有林は、すべての森林で認証(SGEC:緑の循環認証会議)を取得し、そのうちの2割は手を入れず環境林として保全する。一方海外にある社有林は森林認証を取得し、地域と共生しながら使った分だけ植えて育てていく「ツリーファーム構想」を取り入れている。

ユニークなのは、2010年から始めた日本野鳥の会との協働によるシマフクロウの生息地の保全活動だ。同社は保有する北海道の社有林に絶滅危惧種であるシマフクロウの保護区を作った。2015年からは、繁殖時期は木材生産を行わないことや、繁殖に使われる可能性のある巨木は伐採しないなどの規制を行いつつ、生物保全と木材生産の両立を試みている。

日本製紙も日本マクドナルドと同様に多様なステークホルダーと協働し、紙製品のサプライチェーン全体での持続可能な調達や生物多様性の保全を行っている。

同社の藤田美穂サステナビリティ経営推進部部長は「認証を取得した木材、認証紙のニーズがある」とし、「適切に管理された木材の価値をサプライチェーンを通して最終的に山元に返していくことが大事だ」と語った。

東梅WWFジャパン事務局長はこれらの事例をとらえ、「今後は生物多様性の回復のために持続可能な生産と消費がさらにつながりを強めていくことが重要だ」と締めくくった。

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/