サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

コロナ禍を機に働き方が多様化――どう働くかは、どう生きるかにつながる

  • Twitter
  • Facebook

新型コロナウイルス感染症の拡大により、企業もワーカーもワークスタイルを見直し、在宅勤務をはじめとするリモートワークやシェアオフィス、そして企業移転や移住までも含めた新たな働き方を追求している。サステナブル・ブランド国際会議2021横浜の初日のセッションでは、いち早く本社移転を行ったYKK AP、自然を感じながら働くことを提案するスノーピーク、ニューノーマルのワークプレイスを提案するオカムラ、コロナ禍の生活者意識を分析するインテージ(東京・千代田)がそれぞれの立場から新たな働き方への提案を行った。そこからは、働き方の選択がどう生きたいかにつながることがはっきりと見えてきた。(環境ライター 箕輪弥生)

ファシリテーター:
青木茂樹・サステナブル・ブランド国際会議 アカデミックプロデューサー
パネリスト:
岩渕 公祐・YKK AP 取締役副社長
山井 梨沙・スノーピーク 代表取締役社長
田中 宏昌・インテージ カスタマー・ビジネス・ドライブ本部 事業デザイン部 生活者研究センター センター長
大野 嘉人・オカムラ 執行役員 働き方コンサルティング事業部長

地方を拠点とし、地方活性化にも寄与するYKK APとスノーピーク

働き方改革が叫ばれる中、コロナ禍の影響もあり、あらゆる企業、ワーカーが働き方を変えることを余儀なくされている。サステナブル・ブランド国際会議2021横浜の初日、「コロナ禍における移住・移転はワーク&ライフスタイルをどう変えうるのか?」をテーマにこのホットな話題について先進的事例を持つ企業が集まりディスカッションを行った。

その中でもいち早く本社の一部移転を決断し、コロナ禍の影響を最小限に抑え地方活性化にも寄与するのが建材大手のYKK APだ。

同社は、2018年までに東京から富山県黒部市への本社機能の移転を終え、管理部門や研究開発拠点を黒部市に集約し、現在、社員の45%を占める約8000人が黒部市に勤務する。

その判断は2011年の東日本大震災にさかのぼる。震災で被害を受けた同社はBCP(事業継続計画)対策として災害時などに備えていつ何があっても事業が機能するように本社機能の分散を決めた。北陸新幹線の開業も後押しし、黒部市には社員が暮らす省エネルギーの街づくり「パッシブタウン」や市民も利用できる商業施設の建設を行い、黒部市の地域づくりにも貢献している。

同社は新型コロナウイルスの影響が拡大する中、社長はコロナ対策本部長を兼務して黒部市に移り陣頭指揮をとった。これにより、黒部の本部を中心に営業・生産活動が大きく滞ることなく円滑に機能した。

全社員を対象とした同社の「エンゲージメント調査」でも約9割の社員が「経営陣は従業員の健康と安全を配慮している」と答えている。YKK APの岩渕公祐副社長は「もし東京一極集中をとっていたら対応が遅れていたのでは」と話す。

岩渕副社長によると、移転当時は戸惑っていた社員も、今では富山県の豊かな自然や食を積極的に楽しむ社員が多いという。

一方、スノーピークは新潟県三条市で約5万坪のキャンプフィールドの中に本社社屋を構える。「人生に野遊びを」というコーポレートメッセージが示すように、人間性を自然の力で回復することを社の使命としている。

同社の山井梨沙社長は「コロナ禍は当社の事業には追い風になり、機会になった」と話し、「豊かさの意味が変化していて、今一度自然とのかかわりに目を向け直している人が多い」と話す。

同社はアウトドア事業に加え、住宅、アパレル、地方創生事業などを手がけるが、最近では自治体によるワーケーション、コワーキングスペースの相談が急激に増えているという。

山井社長は「これからは働くために地方に滞在するケースが増え、考え方の起点も変わるのでは」と予測する。

コロナ禍で働く人の意識が大きく変化――オカムラ、インテージが調査で実証

コロナ禍での生活者の意識を調査するインテージでは、働き方の変化について調査を行った。その結果、在宅勤務により家のリフォームをした人は全体の2~3%、移住した人も1~2%いるという。

移住では特に近県に移住するケースが多く、「在宅勤務がしやすい家に引越したい」というニーズが大きい。移住を検討したり、移住した理由として「自然が豊かな地域で暮らしたい」という回答が3割あり、「子どもや配偶者にとって暮らしやすい場所を選ぶ」も4割近い。

インテージの田中宏昌生活者研究センター長は「コロナも含めてリスクをとらえて人々が暮らしを見直し始めている」と話す。

田中センター長はまた、「一度自分の暮らしを棚卸して、リスクをどう排除するか、そういった基準で住む場所も仕事も選び直す機運が生まれているのでは」と分析する。

長年オフィス家具を製造販売し、働き方や働く環境に関して調査・研究を続けてきたオカムラはニューノーマルのワークスタイルやワークプレイスを考えるレポート「NEW NORMAL WORKPLACE PRINCIPLE」を昨年発表した。個人、チーム、組織、デジタルソリューションの領域においてこれからの働き方を考える重要な11の視点をあぶり出し、それぞれのチェックポイントやアイデアを提案している。

オカムラ自身も2015年から働き方改革に力を入れ、本部のオフィスに加え、サテライトオフィス、ハブオフィス、シェアオフィス、在宅など仕事の内容や目的に合わせて使い分けできる5つのワークプレイスを整備してきた。

このレポートの分析から同社の大野嘉人執行役員・働き方コンサルティング事業部長は、「働く場は多様化し、自分がどうありたいか、それが実現できる働き方を選ぶ時代になってきた」と分析する。

その一方で「社員間のコミュニケーションが少なくなった」「自由度が増えた半面、自立して業務を進める必要性が強まった」などの課題も浮き彫りになり、それらの課題を解決する場としてのオフィスの必要性もまた求められている。

さらに大野執行役員は同社が掲げる「Work in Life」というキーワードを紹介し、「どう働きたいかを考えることは、自分らしい人生を考える上ですます重要になってきている」と働き方の大きな変化をとらえて発言した。

これらの事例や発言をとらえ、ファシリテーターの青木茂樹アカデミックプロデューサーは最後に、「どこで暮らしたいか、どんな仕事をしたいかはまさに自分の人生をデザインすることそのものだ」と総括した。

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/