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日本初、「責任ある外国人労働者受け入れプラットフォーム」発足

国際協力機構(JICA)と、持続可能なサプライチェーンの推進を行う一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)はこのほど共同で、「責任ある外国人労働者受け入れプラットフォーム(JP.MIRAI)」を設立した。外国人労働者の人権を保護し、労働・生活環境を改善、外国人労働者が働きがいを持って活躍することができる社会の実現を目指す、日本で初めての枠組みだ。公式ウェブサイトなどを通じて外国人労働者の課題を直に聞き、公的機関との連携を踏まえて解決につなげる仕組みを構築する。トヨタ自動車やセブン&アイ・ホールディングスといった企業や業界団体、研究者や弁護士らが参画。2030年までに、日本が外国人労働者から「選ばれる国」として、SDGsの目標の一つ「働きがいも経済成長も」を実現する方針だ。(廣末智子)

外国人労働者166万人 10年で3倍
課題山積、国際的批判強まる

日本では少子高齢化などによる深刻な人手不足を背景に、2018年12月には入管法を改正して新たな在留資格となる「特定技能」を創設するなど、外国人労働者の受け入れを進めている。2020年1月現在、10年前に比べて3倍に当たる約166万人の外国人労働者がいる。このうち約38万人が技能実習生で、建設、農業、コンビニ、弁当製造など幅広い業種で雇用され、日本人の生活の多くが外国人労働者によって支えられている。

一方、国際社会においてSDGsや「ビジネスと人権」の意識が高まる中、日本においては外国人労働者に対する強制労働や差別、ハラスメントなどの問題について国際的な批判が強まっており、ESG投資やブランディング、企業経営に影響を及ぼす観点からも早急な対応が求められている。さらにコロナ禍における雇い止めなどで生活に困窮し、支援も受けることのできない外国人労働者や留学生らが急増していることが危惧されるほか、コロナによる入国制限で技能実習生らが来日できず、農業や漁業の現場で人手不足がより深刻化するなどの問題も顕在化している。

受け入れ態勢を整えなければ「日本が選ばれなくなってくる」と話す池上彰氏

そもそも外国人労働者の中には、未だにブローカーなどを介し、多額の借金を背負って来日している研修生や実習生も多く、窃盗などの犯罪や、失踪してしまうケースもあった。最近ではベトナム人による果物や家畜の盗難事件がニュースになるなど、一部の行いが外国人労働者全体に対するイメージを悪くするといった状況にもつながっているのが現状だ。こうした外国人労働者を取り巻くさまざまな問題を社会の共通の課題として捉え、多様な関係者の連携を通じて解決策を見出す目的で設立されたのが今回のプラットフォームだ。

東京都内で16日に行われた設立総会には、片山さつき・自民党外国人労働者等特別委員長など政府関係者らが出席。このうちグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンの有馬利男代表理事は、「国連グローバルコンパクトの10原則のうち最初の6原則は人権と労働だ。日本は、米国務省の2020年人身取引報告書で外国人技能実習制度の問題を指摘され、国連のビジネスと人権に関するフレームワークが求めるナショナルアクションプランの委員会でも、外国人労働者の人権問題が多く指摘されたが、課題の多くは積み残しとなっている。このような中でJP.MIRAIが設立されたことは大変意義がある」とビデオメッセージを送った。

トヨタら41企業・団体、弁護士ら12人参画
課題解決へ公的機関と連携強化、提言、対話を

現時点でプラットフォームへの参画を表明しているのは、セブン&アイ・ホールディングス、トヨタ自動車、愛知商工連盟協同組合など41の企業と団体、12人の個人。総会では、「働く場と生活の場の両方で、外国人労働者との相互理解を深め、信頼関係を醸成しする」「日本および国際社会の発展と安定に貢献するため外国人労働者の能力開発に尽力する」といった行動原則を承認後、当初2年は「立ち上げフェーズ」として基盤を整備し、参加団体を増やしながら、SDGsの目標年である2030年に向けて長期的に活動することを確認した。具体的には、日・英・現地語によるウェブサイトで公益情報の発信を拡充するとともに労働者の声を直接聞き、課題を把握した上で、日本の公的機関や途上国政府機関等との連携を強化し、解決策の検討や提言、対話を行う。

参画企業と自治体代表者らが議論

また総会では会場とオンラインをつないだパネルディスカッションも行われ、参画企業や地方自治体の代表者らが登壇。このうち、子ども服ブランド、ミキハウスを展開する三起商行の上田泰三・品質管理部長は、同社が2016年に国際人権NGOからミャンマーの外注工場における労働環境に関する指摘を受けたのをきっかけに人権問題に注力した経緯を説明。外国人技能実習生を雇用する国内の全工場を調査する中で、実習生を労働力の需給調整手段として利用してはならないにもかかわらず、実質的には深刻な人手不足を補う労働の担い手になっているという構造的な矛盾が問題につながっていることを痛感した。それを機に、労働者救済のための「苦情処理メカニズム」を導入するなど、サプライチェーン全体でのレベルアップに取り組んでおり、「こうした事例は、どの企業にとっても対岸の火事ではない」と強調した。

一方、約1万2000人の外国人労働者が暮らす群馬県太田市の清水聖義市長は、今いちばん問題になっていることとして、「外国人労働者の子どもたちの教育をどうするか。彼らをできれば大学まで進学させる環境づくりをしなくてはならないのではないか」と問題提起。外国人労働者が日本で社会性を持った生活をし、お互いに尊重し合える関係をつくっていくためにも企業と自治体、関係機関が一緒になって活動することの重要性を強調するなど、登壇者それぞれにプラットフォームへの期待が語られた。

JP.MIRAI は、2023―2026年を「拡大フェーズ」として、任意団体から新組織へと法人化し、体制・活動をさらに強化する方針。さらに2027―2030年を「定着フェーズ」とし、2030年までに外国人労働者の人権・社会問題ゼロによりSDGsの8番目の目標である「働きがいも経済成長も」を達成、併せて国際社会からの問題指摘ゼロと、開発途上国からの好感度向上を目指す、としている。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。SDGsを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。