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SDGsを考える高校生ら、講師や大学生が後押し――SB Student Ambassador全国大会 開催レポート2

国内の高校生が、さまざまな国の企業やトップリーダーとともに「サステナブル・ブランド国際会議2021横浜」に参加し、議論や発表、交流に臨む「SB Student Ambassadorプログラム」。同プログラムの選考に先駆けて全国の高校生がSDGsの基礎知識や実際の取り組みを学ぶ「SB Student Ambassador全国大会」が10月17日(東京会場・オンライン配信)、24日(大阪会場)に開催された。各ワークショップではサステナビリティの先進企業・自治体による講演が行われ、講師や大学生メンター、引率の教員らが積極的に高校生の議論を後押しした。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局)

生徒が主体となる能動的で平等な学習機会を――

ベネッセ教育総合研究所 主席研究員 小村俊平氏

参加者の高校生たちは4つのテーマごとに教室にわかれ、ワークショップを行った。このうち、「教育」で講師を務めたのはベネッセ教育総合研究所 主席研究員の小村俊平氏。「これから求められる『質の高い教育』とは何か」と題して講演を行った。

ベネッセは教育サービスと介護などの事業を行い「一人ひとりがよく生きるための支援をする会社」と小村氏は紹介する。同氏は「私たちが身の回りの課題について関心を持たずに、アフリカの貧困問題に関心を持つのはなぜだろうと考えたことがある」と回顧し、どちらも同様に重要だとした上で「敢えて日本の教育から話を始めたい」と水を向けた。

いま、日本の教育は大きく変わろうとしている。小村氏は大きく2つ、「デジタル化」と「少子高齢化」という要因を指摘した。文部科学省が進める「GIGAスクール構想」によって、全国の小中学校で今年度中に1人1台のPCが使えるようになる。まず、このデジタル機器による教育の変化を現場はどう受け止めるのか。そして「少子高齢化」、とりわけ高齢化による教育の変化だ。

企業の寿命が30年と言われる一方、寿命が延びたことによって、大学を卒業してから約60年間を生きるようになっている。つまり、一生の間に仕事を変えなければいけない時代だ。働きながらどのようにスキルアップし、個人が成長するのかが大事な時代だと小村氏は指摘する。

国際機関・経済協力開発機構(OECD)が3年に一度行う各国の学力調査PISA(生徒の学習到達度調査) のデータでは、2018年度の日本の結果は科学的リテラシーは先進国中2位 、数学的リテラシーは1位、そして読解力は11位だという。

小村氏は「科学的リテラシーのトップパフォーマー(習熟度レベル6)の人数割合は中国が1位(31.5%)、日本は第3位(13.1%)。ベトナムが日本とほぼ同じ(12.1%)」という独自の分析を示し、「日本は米中と並び科学者の卵が多い国で、一方で自分の考えを根拠を示して説明することに課題だと言われている」と解説。学習に対する意欲・態度のスコアが先進国の平均以下で、日本の中高生は科学的リテラシーは高いが「科学が役に立つ」「将来科学者になりたい」「科学が面白いと思っている」という生徒は少ないと言われるという客観的な分析を共有した。

さらに、日本財団による18歳への意識調査では「実感として自分で国や社会を変えられると思う」という回答が18.3%、「将来の夢を持っている」の回答が60.1%と、いずれも調査9カ国中の最下位。これらの背景を受けて「学ぶ内容や学び方はどのように変わっていくことが望ましく、その変化のプロセスにおいて自分ができることとは何か」を参加者らがワークショップで議論した。

教育の現場で、まさに教育を受けている高校生たちはどのような発表を行ったか。複数のグループに見られたのは「好きなことを見つけるための教育」「学ぶ意欲をもたらす学習」そして「そのために広範囲の分野の学習機会を得ること」だ。ハード、ソフト両面での「機会の平等」も言及された。

ある参加者の高校生は「生徒が主体となり、意見を言い合い、主体的に発言してコミュニケーションができる授業、自由かつ能動的な学び、現実社会に焦点を当てた学びを」と提案した。別のグループでは「本質」「興味」「思考力」「平等性」「インターネットの活用」を重点に挙げ、とりわけ「興味」を中心に置き、本質的で思考力を養う双方向の授業、タブレット機器の配布や、男女の学習機会における平等などが必要だと、考えを発表した。

小村氏は「社会に求められる力、需要がある力と、社会で活躍する力は違う。人と差がつくものは意欲だ。これからの社会では、希望を見いだせる力、面白がることができる力が自分自身の人生をより良くしていくために大事」と参加者にエールを送った。

「森と水の保全」活動から、自然と人のあり方を考える

公益財団法人「肥後の水とみどりの愛護基金」常務理事 大野芳範氏

「森と水の保全」をテーマに講義を行ったのは公益財団法人「肥後の水とみどりの愛護基金」常務理事の大野芳範氏。同財団は1992年、肥後銀行(熊本県)が出資し、熊本県内の水とみどりの保全・助成活動、実践行動の喚起を目的に設立された。

熊本市近郊の11都市には約100万人が生活する。これらの都市はほぼ100%、上水道に地下水を利用しているという。大野氏はまず、同財団が制作した動画で熊本県の地下に湛えられ、湧き出る水について共有した。

阿蘇山の噴火による地形・地層の形成、江戸期の大名、加藤清正公の治水事業、そして阿蘇地域の、日本有数の年間降雨量。これらを背景に熊本県には豊富な地下水が存在する。しかし近年、その量が減っていると大野氏は説明する。1960年代から2005年にかけて、その量は半分程度になったという。

同財団では熊本の地下水を守るため、顕彰事業(賞与による評価)、啓発事業、植樹・水田での湛水、阿蘇の草原再生、ギャラリーの運営など幅広く事業を続けている。水田への湛水事業によって、地下水の減少量に歯止めがかかるなど、成果をあげた。

大野氏は「世界の人口約77億人のうち、水道水を利用できているのは約4億人。わずか5%だ。2050年には、4人に1人が慢性的な水不足になるといわれている」と警鐘を鳴らす。

「水を守り、受け継いで行くことが財団の使命だと考えている。『今日から私が守る』と一人ひとりが問題意識を持ってほしい」(大野氏)

続いて、サントリーホールディングス サステナビリティ推進部チーフスペシャリストの山田健氏が登壇。「サントリーは水の会社、工場は一般的に、流通の利便性などを優先して建設場所を決めるが、サントリーでは良質な地下水がある場所につくる。いい水がなければビールもウィスキーも、清涼飲料水もつくれない」と冒頭に同社を紹介した。

その生命線である「水」の持続可能性を守るためにサントリーは2003年、「天然水の森」と名付けた活動を熊本・阿蘇で始めた。現在、整備している森林の面積は、全国で約12000ヘクタールへと広がっている。この活動は「ボランティアではなく、基幹事業と位置付けている」という。

サントリーがさまざまな専門家と共同研究をしてきた結果、日本の場合には多様性に満ちた森林を育成し、斜面崩壊を防ぐことが地下水かん養の最重要課題になるという。「複雑な生態系ピラミッドをまるごと再生することが、土壌の保護・育成や地下水を守ることになる」と山田氏は力を込める。

一方で、放置人工林や、過剰な保護によって増えすぎた鹿による食害などの課題などの課題も多い。これらの課題は、伐採をしないのが森林保全だという誤解や、戦後に鹿が絶滅寸前となった経緯があるが、「どれも50年前の日本人が良かれと考えて行動した結果」だという。

今「良い方針だ」と判断したとしても、それが本当に「良い」のかはすぐにはわからない。「だからこそ、私たちは、どんなに良い方針だと考えても、広大な土地を画一的に整備することはしない」と山田氏は言い、それすら「たぶん、これなら大丈夫だろう、という希望的観測に過ぎない」と話した。

「未来は、あなた方、若者たちのもの。どんな森づくり、町づくり、地球づくりがいいと思うか、自然や環境を見つめなおして」(山田氏)

ワークショップでは、身近な視点と地域や世界の変化の観点を結び付け、にぎやかな議論が展開された。日常生活での節水方法、SNSを活用した啓発や自宅、学校でのコミュニケーション、そして購入する製品の生産過程で使用される「バーチャルウォーター」に着目したグループも。

効率的に水を活用するために「ダムがまだ足りないのでは」という意見も出た。コロンビアの湖でのダム建設を好事例として紹介し、自然の地形を生かしたダム建設の提案をしたグループは「SDGsは途上国も先進国も関係する。海外に目を向けることが必要だと考えた」と話した。またある参加者は、水を守るために森林を保全しているという講演内容を聞き、こう発表した。

「森と水だけでなく、空と海、自然全体と、人の生活を包括的に考えることが大事なのではと感じた」

行動して伝える「チェンジメーカー」に

メンターのひとり、入江遥斗さん

4つの教室にわかれたワークショップの後、各グループから代表して全体の発表とメンターによる総括があった。ワークショップ中に参加者に近い目線で議論を導き、アドバイスを送った大学生などのメンターらは、東京・大阪の両会場で各5名。東由理花さん、入江遥斗さん、島袋孝奈さん、須藤あまねさん、園木豪流さん(大阪会場)、鳴海絢葉さん(東京会場)はそれぞれ、自身も普段から課題に向き合い、SDGs達成に向けて活躍している若者たちだ。

入江さんは「持続可能な社会を目指すためには、一人ひとりが自分事として行動することが大切。『リーダー』というよりは『チェンジメーカー』になって、身の回りから変える行動を」と高校生たちにメッセージを送った。

引率した教員たちも高校生の成長を目の当たりにしたようだ。

私立高校のある教員は「生徒から、参加したいから引率してくださいと要望があった。教員以外の大人、専門家から話を聞くことができるいい機会。積極的に発言し、意見を言うほかの学校の生徒さんと一緒になって話し合えることはいい刺激になっている」と話す。

昨年度のSB Student Ambassadorプログラムにも参加したという高校の教員は「学校は違えど、ここにいる参加者は次の世代として日本を支えていく人たち。こういった活動の本来の意義を、ここに来ることができなかった生徒たちにも校内で伝えてほしい。自分たちが『何かを背負いながら生きている』ということを理解し、良い刺激を人生に役立ててくれたら」と期待を込める。

「西日本ブロック」大阪で開催

「SB Student Ambassador全国大会」は東京会場での開催に続き、関西大学(大阪・吹田)で24日、「西日本ブロック」を開催した。参加したのは19校144名。東京会場の参加者に負けず劣らず、積極的なコミュニケーションと意見交換の光景が繰り広げられた。

「木って水と生きてるんやで」
「気づいたらSDGs」

サステナブル・ブランド国際会議2021横浜の「SB Student Ambassadorプログラム」は、全国大会で取り上げられた4つのテーマ「教育」「森と水の保全」「気候変動」「ツーリズム」のいずれかを選択して論文を応募。選考によって10校から40人を同会議に招待する。現在、募集中。締め切りは12月4日。詳細は下記リンクより。