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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

全国92校の高校生がサステナビリティ議論――SB Student Ambassador全国大会 開催レポート1

東京会場には全国から160人以上の高校生が参加した

国内の高校生が、さまざまな国の企業やトップリーダーとともに「サステナブル・ブランド国際会議2021横浜」に参加し、議論や発表、交流に臨む「SB Student Ambassadorプログラム」。同プログラムの選考に先駆けて全国の高校生がSDGsの基礎知識や実際の取り組みを学ぶ「SB Student Ambassador全国大会」が行われ、東京・大阪の両会場とオンラインで延べ92校から667人(うち引率89人)が参加した。参加者らは最先端の活動に取り組むオピニオンリーダーによる「SDGs基礎講座」を聴講し、実際に各業界でサステナブルな社会の実現に向けて活躍する企業の担当者らを交え、これからの社会にどうSDGsを取り入れるかを考えるワークショップに取り組んだ。東京会場の模様を中心にレポートする。(横田伸治/SB-J編集局=沖本啓一)

一歩一歩前進、「である」から「する」へ変化を――

NPO法人UMINARI代表理事兼CEO 伊達敬信氏

「私たち大人は、皆さんの意見を受け止めて、ともに課題に取り組みたい」。イベント冒頭、持続可能な旅行の実現を目指す日本旅行の堀坂明弘・代表取締役社長が呼び掛けた。同大会東日本ブロックの会場となった日本大学経済学部(東京・千代田区)には全国23校から160人超の高校生が集まっていた。堀坂社長は「日本旅行は旅行会社の枠を超えて、SDGsを単なる運動論ではなく、具体的に業務の中で実践していこうと取り組んでいる」と説明。さらに、国際的な目標達成が当初予定より遅れていることに触れ、「猶予は許されない。今日はいろいろなことを吸収してもらって、これからの目標に向けて一緒にチャレンジしていきましょう」と会場の高校生を激励した。

続いて行われた基調講演に登壇したのは、海洋プラスチックごみ問題に取り組むNPO法人UMINARIの代表理事兼CEOを務める伊達敬信氏。自身が1996年生まれの24歳であることから、「みんなとほぼ同じ世代です」と自己紹介し、会場の緊張をほぐした。

伊達氏は「一番伝えたいのは、『Leave no one behind(誰も取り残さない)』の理念は、ゴールに向かうプロセスで常に持っていないといけない精神だということ」と前置きした上で、17のゴールや169のターゲットは、見方によって複数の枠組みで分類できる立体構造である、といったSDGsの概要や構造を説明した。

さらに、SDGs以前のMDGsと比べ、SDGsは国連や政府だけでなくすべての人が関わるものであることや、ゴール同士がテーマによって相互関係を持つ「イシュー・リンケージ」の考え方などを紹介した後、自身の体験に触れながら「100歩のアイデアを待つ必要はない。一歩からの、一歩一歩です。『今』自分が何をできるかに目を向けてほしい」と高校生へアドバイスを贈った。

ハフポスト日本版編集長 竹下隆一郎氏

ウェブメディア・ハフポスト日本版編集長の竹下隆一郎氏は「である思考から、する思考へ」の転換をテーマに、「チョコレートの甘さは、実際に食べてみないと感じられない。こういう社会『である』じゃなく、こういう社会に『する』と考えて」と、目前の環境を疑い、環境を変えるための視点を投げかけた。

さらに健康食品としてのアボカド人気が南米での水不足を招くことや、政界でのジェンダーギャップが大学進学率や職業選択の時点から生じているという解釈などの具体例を通して、「本当に『自然』にそういうものである、と言えるのか」と投げかけ、「『自然』という言葉のトリッキーさ」に警鐘を鳴らした。この「である」と「する」の切り口は、イベント全体を通してディスカッションや発表でたびたび口にされ、参加した高校生にとって最も重要な視点の一つとなった。

「サステナブル・ツーリズム」どうつくる

日本旅行法人営業統括本部・SDGs推進チームマネージャー椎葉隆介氏(右) ワークショップでは講師や大学生メンターも積極的にアドバイスを送った

参加者は基調講演の後、4つのテーマに分かれて講義とワークショップに取り組んだ。このうち、「サステナブル・ツーリズム」がテーマの教室では、日本旅行法人営業統括本部・SDGs推進チームマネージャーの椎葉隆介氏が講師を務め、人・風景・文化の観光資源を保全しながら、ビジネスとして経済的にも回していくために同社が掲げる「Tourism For Tomorrow」との理念を紹介。さらに、1980年代のマスツーリズムの反動として、地域の本来の姿を保存するサステナブル・ツーリズムが浸透していくまでの過程を説明した。

講演では、シンガポールからもゲストスピーカーがウェブ中継で参加。まず登場したのは、シンガポールで動物園の管理などに携わる、Wildlife Reserves Singapore国際営業部部長補佐の野口さや香氏。「園内の動物だけでなく、野生動物も保全して、生物多様性を保っていくことが責任」として、自然保護区内に動物専用の歩道橋を設置した例や、コーヒー豆のプランテーションによる伐採を防ぐため、コーヒーの新たな栽培・加工技術を開発、商品化――など具体的 な取り組みを紹介した。

続いて、日本旅行シンガポール ゼネラルマネージャー(支店長)の細谷浩明氏が、民族・文化的に多様なシンガポールの特性を解説。加えて、限られた国土面積でありながら人口密度が非常に高いこと、地形的に保水力が乏しいことから、貯水池の建設や、下水からの再生水(ニューウォーター)技術など、水問題への活動が盛んであると述べた。こうしたシンガポールでのサステナビリティについて、日本の学生が現地の学生らと交流しながら学ぶことができるプログラムの提供を通じ、同社がSDGsの普及に取り組んでいることも紹介した。

講義の後は、メンターを務めた横浜国立大学都市科学部1年の入江遥斗さんの進行に従い、「SDGsを学べるサステナブルな修学旅行とは何か?」をテーマにワークショップを行った。高校生らは各6人程度の7グループに分かれ、約90分間議論。さっそく「動物と触れ合って命の大切さを学びたい」「観光客の食品ロスってどれくらいかな?」と、模造紙や付箋を使って次々とアイデアを出していくと、入江さんも、「自然環境だけがSDGsじゃない。教育、文化にも目を向けてみて」とアドバイスを送った。

各グループの発表では、いずれもプラスチックごみの削減など環境保護の観点を取り入れながら、「旅行後にインスタグラムで学習内容を発信する」「旅行プランを学生自らが考えること自体が大切」など、高校生ならではの目線を披露した。特に、シンガポールでのホームステイを通して、「現地に友達を作る」ことを重視したグループは、椎葉氏も「一度きりの旅行で終わらず、何度も訪問してもらえることが旅行業界としては大切」と高く評価した。

椎葉氏は「この短時間でサステナブル・ツーリズムを理解して、これほどのプレゼンをするとは、驚いた。ワークショップを通じて、将来を考える習慣につなげてほしい」と期待を込めて振り返り、入江さんも、「企業や学校にとっても参考になる発表だったと思う。自分自身も、高校生たちの姿を見て初心に戻りながら、サステナビリティを見直していきたいと感じた」と手ごたえを語った。

身の回りの製品通じて課題解決を

積水化学工業 ESG経営推進部担当部長 三浦仁美氏

「気候変動」をテーマにした教室で講義を行ったのは積水化学工業 ESG経営推進部担当部長の三浦仁美氏だ。「製品をつくる過程でエネルギーを利用しCO2を排出している会社の責任として、サプライチェーン全体でどれだけ温室効果ガスを排出しているかを把握している。そこから『どうすれば減らせるか』という議論ができる」と企業の視点を共有。2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにするという「SEKISUI環境サステナブルビジョン2050」について「会社が思い切って決断をしたという宣言だ」と紹介し、同社がなぜ、どうやって気候変動という課題に取り組んでいるのかを示した。

三浦氏は自身のバックグラウンドと、課題意識を持った経緯を話した上で、積水化学工業の社是やビジョンを紹介した。「現状の理解のために地理や歴史、社会、経済を知る必要もあるし、製品が及ぼす影響を考えるために化学が重要になってくる。それぞれの得意分野で課題解決の方法を考えて」と多様な視点から物事を考え、課題解決のための力を養うことを、参加した高校生たちに促した。

ワークショップでは「製品の一生における課題解決への貢献」というテーマで、原材料の調達・製造・販売・使用・使用後に廃棄という5段階のライフサイクルにフォーカスした。参加者は指定された製品・サービスを通じて「製品のライフサイクルで気候変動の課題解決に貢献する方法」「その製品で気候変動以外の課題を解決する方法」をまずディスカッションし、最後に自由にアイデアを出して「ライフサイクルを通じて課題を解決する製品の提案」を行った。

例えば「学校」のライフサイクルを考えたグループは「パッシブデザイン(太陽光や風などの自然を活用した快適な空間づくり)を取り入れ、教室ごとに使用エネルギー利用量を可視化することで省エネを促し、教育に生かして気候変動対策に貢献する」というアイデアを披露。「住宅」を考えたグループは「豪雪地域などでは、雪の反射光を生かすために太陽光パネルの設置位置が工夫されていることを知った」と、初めて顔を合わせた参加者同士の知識・経験の共有がみられる発表もあった。

「なるべく単一素材で自動車をつくれば」「シンプルなデザインで修理しやすく」「コンパクト化して素材とエネルギーの無駄をなくす」など省素材・長寿命・リサイクルを意識したアイデアや、バイオプラスチックの利用、ソーラーシェアリングなどの技術の活用のアイデアが出たほか、「観客の歓声をエネルギーとして利用し、ドローンを使ってボールをバーチャル化することで場所を選ばず、クリーンに誰でもサッカーを楽しめるシステム」というICT・デジタルの活用による課題解決製品・サービスの提案も。

ワークショップの進行を務めた積水化学工業ESG経営推進部担当係長の野澤育子氏は「身の回りにある製品やサービスは技術が発展するとともに気候変動などの課題の解決に貢献できる可能性がある。(企業は)今後も生産方法の改善や廃棄物の再利用などを通じて課題解決に貢献できる製品を世の中に出していくことが求められている。製品を手に取るとき、その製品の一生について考えてもらえれば」と社会の中での課題の解決方法への気づきを促し、締めくくった。

横田伸治(よこた・しんじ)

東京都練馬区出身。東京大学文学部卒業後、毎日新聞記者として愛知県・岐阜県の警察・行政・教育・スポーツなどを担当、執筆。退職後はフリーライターとして活動する一方、NPO法人カタリバで勤務中。