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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

花王とライオン、プラ包装容器のリサイクルで「競合から協働へ」

花王とライオンは10日、資源循環型社会の実現を目指しフィルム容器のリサイクルに協働で取り組むことを発表した。これまではメーカーによって容器に使用しているプラスチックの素材や設計が異なるため、製品に再生する場合に多くの制約があった。今回の協働では「企業間あるいは業界の垣根を越えて共通利用が可能なリサイクル材料・容器の品質設計に取り組む」など4つの活動を進める。花王の広報部は「まずは2025年までに使用済みプラ包装容器1万トン規模の回収を目指す」と話し、水平リサイクル容器を活用した製品の普及拡大が現実味を帯びてきた。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=沖本 啓一)

競合も「ESGで方向同じく」

「競合から協働へ、ということは以前から言われていました。ESGの観点で事業を行うことはすでに『当然』な一方で、一社でできることは限られています。今回、同じ事業領域の2社で協働を実現したことは、象徴的だと考えています」――。花王の広報部はそう話す。

これまで花王では、「使ったら、捨てる。このあたりまえを変えたい。」をコンセプトに掲げたアップサイクルの取り組み「リサイクリエーション」をはじめ、ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan(キレイライフスタイルプラン)」に基づいて製品の企画・開発・販売、メッセージの発信、ライフスタイルの提案などを行ってきた。

一方、ライオンも循環型社会への貢献と、定期的なハブラシ交換を促すことで消費者の歯と口の健康維持へ貢献することを目的とする「ハブラシ・リサイクルプログラム」を通じて、消費者から使用済みハブラシを回収・リサイクルし、植木鉢などにリサイクルする取り組みを推進している。同社のコーポレートコミュニケーションセンターは「競合ではあっても、ともに包装技術に強みをもつ研究所をもつ2社による易リサイクル包装材料の基準づくりや、回収フィルム容器のリサイクル技術の開発などへのチャレンジをはじめ、ぜひとも成功事例にしたいと考えています」と「掛け声」に終わらない実効性ある連携に意欲を見せる。

花王の澤田道隆社長はCLOMA(クリーンオーシャンマテリアルズ)の会長を務め、ライオンの掬川正純社長は業界団体の日本石鹸洗剤工業会で会長を務める。「ESGという観点では、以前から方向性を同じくしていました」(花王 広報部)というように、単なる「ライバル」というだけではない接点があった。

実効性ある取り組み推進、2025年に1万トン回収へ

国内では石鹸洗剤業界全体の全製品出荷量のうち、つめかえ・つけかえ用製品が約80%に上る(2018年時点)。ライオンのコーポレートコミュニケーションセンターは「これまでも日用品業界・包装業界各社は、競合関係の中で技術開発を通した切磋琢磨し、明示的に『協働』した訳ではありませんが、結果として世界でも珍しい『つめかえ文化』の構築に貢献してきました」と説明する。

しかし課題もある。つめかえ容器は、主に使われているフィルム素材が複合材料からできている。ここからつくられるリサイクル材は多種類の成分を含む不均質なプラスチックとなり、単一成分のみの分離が難しい。内容液が付着しているなどの理由からもリサイクルが困難になる。さらにメーカーによって使用しているプラスチック素材や設計が異なり、そのリサイクル素材をフィルム容器などの製品に再生する場合に多くの制約がある。

以上の理由から現状では「つめかえ比率はここ数年飽和しているように見える」という。課題解決を目指し、自社製品のみではなく、視野を広げることでリサイクル素材の普及を加速するため、花王とライオンは以下の4つの取り組みを協働で進めることを発表した。

1) 消費者、行政、流通との連携による、フィルム容器の分別回収のしくみを検討します。
2) 幅広い製品への利用や消費者の分別回収のしやすさに配慮し、かつ企業間あるいは業界の垣根を越えて共通利用が可能なリサイクル材料・容器の品質設計に取り組みます。
3) 共同で回収・再生したリサイクル材料の活用方法を検討します。
4) リサイクルに対する消費者の理解・協力を深めるため、普及促進・啓発活動に取り組みます。

花王の広報部は「今後さまざまな分野と協働を広げる可能性があります」と展望を明かした。2025年までには水平リサイクル(使用済み製品から新品の同製品へ素材を再活用するリサイクル)を前提とした「1万トン規模の不要容器の回収」を目指す。これは詰め替え容器に使われる全プラスチックの約20%にあたる(日本石鹸洗剤工業会データ)。

リサイクルそのものの技術だけでなく、回収スキームの構築やリサイクル後に再生製品を活用する場面においても、同じ事業領域の大手2社が協働し、さらに多くの企業や消費者へ連携が広がる効果は大きいだろう。循環型社会への移行の波が確実に訪れている。

沖本 啓一(おきもと・けいいち)

Sustainable Brands Japan 編集局。フリーランスで活動後、持続可能性というテーマに出会い地に足を着ける。好きな食べ物は鯖の味噌煮。