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京都市とミツカン、食品ロス削減へ連携 日本の都市で初めてエレン・マッカーサー財団の枠組みに参加

廃棄物を出すことなく資源を循環させるサーキュラーエコノミーを推進する、英エレン・マッカーサー財団が取り組む「フードイニシアティブ」の枠組みに、日本の都市として初めて京都市が参画することになった。京都らしい「しまつのこころ条例」に基づいてごみ半減に取り組む同市と、「やがて、いのちに変わるもの。」をグループビジョンに掲げる調味料大手のミツカンホールディングス(以下、ミツカン)が連携。京野菜を無駄なくおいしく食べ尽くす事業を通して、食品ロス削減に向けた新たな可能性を世界に発信する。(廣末智子)

エレン・マッカーサー財団は、英・ワイト島を本拠地とし、企業や政府、研究機関と連携して、サーキュラーエコノミーへの移行を加速させることを目的に2010年に設立された機関。サーキュラーエコノミーとは、従来の「take→make→waste(資源を採って→作り→廃棄する)」という経済の流れの中で、活用されることなく廃棄されていた製品や原材料などの資源を有効活用し、廃棄物を出すことなく資源を獲得し続けられる、循環型モデルへの転換を図る経済成長の仕組みを言う。同財団では、特に着目すべき3つの課題(プラスチックの使い捨て、衣料品の使い捨て、食品ロス)に対してコンソーシアムを立ち上げ、政府や財団、参加企業とともに取り組みを推進している。

今回、京都市が参画するのは、ニューヨークやロンドン、サンパウロなど世界15都市と、ダノン、ネスレ、ミツカンなど11の企業や団体が加盟する「フードイニシアティブ」の枠組み。2019年6月の設立当初からこの枠組みに参加するミツカンが、食品ロス削減分野で実績のある京都市を財団に紹介し、日本の自治体で初めてはもとより、日本の都市を代表する形での参画が実現した。具体的にはミツカンと京都市が連携して、食品ロス削減を啓発する取り組みを行い、その成果をフードイニシアティブにおいて発表する流れを想定している。

京都らしい「しまつのこころ条例」制定 食品ロス削減へ全国で初めて数値目標も

日本の食品ロスの現状は、2017年度の推計で、約612万トン(事業系約328万トン、家庭系約284万トン)にものぼり、国民一人あたりでは1日約132gと茶碗約1杯分のご飯量を、年間では約48Kgと、年間一人あたりの米の消費量約54kgに相当する食品を捨てている計算になる。この食品ロス削減の分野において、全国で初めて削減の数値目標を設定(2000年度:9.6万トン→2020年度:5万トン)するなど、先進的な取り組みで知られるのが京都市だ。

中央環境審議会循環型社会部会(第19回)ヒアリング資料

早くから食品ロス削減に目を向けてきた京都市。1980年からは京都大の協力で、ごみを約300項目に分類して排出実態を把握する調査を実施しており、その結果、家庭の燃やすごみとして排出されているごみの約4割が生ごみで、そのうち約4割が食品ロスであることを突き止めた。2015年3月にはそれまであった条例を、ものを粗末にせず心豊かに暮らす、京都らしいライフスタイルとビジネススタイルの両立を図る思いから、ごみ半減を目指す「しまつのこころ条例」として大幅に改正。あらためて「2R(リデュース=発生抑制、リユース=再使用)の促進」と「分別・リサイクルの促進」に力を入れてきた。

この条例改正と同時期に策定したのが、食品ロス削減の数値目標を全国の自治体で初めて示した「新・京都市ごみ半減プラン」で、ピーク時の2000年度には82万トンあったごみの量を、2016年度には49%減の42万トンにまで削減することに成功。食品ロス削減についても、「食べ残しゼロ推進店舗」の拡大や、食品の販売期限の延長、フードバンク団体への助成など、市民と事業者双方の意識の向上を図るさまざまな取り組みを積み重ねており、その結果、2000年度の9.6万トンが2018年度には6.2万トンにまで減少し、目標の2020年度に5万トンに向け、あと一歩の状況にある。2017年度に市内のスーパー5店の協力で行った販売期限延長の社会実験では、約10%の廃棄抑制効果を確認するなど目に見える成果も上っている。

一方、1804年創業のミツカングループは、現在、日本とアジア、北米、欧州の3つのエリアで「限りない品質向上によって業績向上を目指す」事業展開を進めており、2018年11月に、10年先の未来へ向けて「やがて、いのちに変わるもの。」をスローガンとする「ミツカン未来ビジョン宣言」を策定。具体的には、野菜や豆、穀物や果物の通常は捨てられる部分まで可能な限り原材料に取り入れた「ZENB イニシアティブ」ブランドの商品化など、独自の発酵技術と最新技術を生かした「おいしさと健康を一致させた商品」の開発に力を入れている。

ミツカン「ZENB」ブランドの京野菜版開発も

今回のエレン・マッカーサー財団のフードイニシアティブへの参画を機に、8月3日、京都市とミツカンは、「食品ロス削減に資する取り組みの連携に関する協定」を締結した。ミツカン広報部によると、今後、京都市内の飲食店とコラボして、①野菜を無駄なくおいしく食べ尽くすことを目的とする酢を使ったメニューの開発とその啓発、②鍋のシーズンに、野菜のあまり使わない部分を活用した鍋メニューを紹介し、「作ってみたい・食べてみたい鍋」を市民に投票・選抜してもらうキャンペーンなどを順次行っていく方針で、ミツカン「ZENB」ブランドの京野菜版シリーズの開発に向けても活動を本格化させる。その場合、伝統的な京野菜に限らず、京都市内で消費されている野菜全般を対象に商品化を検討するという。

京都市とともにエレン・マッカーサー財団のフードイニシアティブへ参画していく目的について、ミツカンは「当社のメニュー提案や商品開発などの強みと、京都市が持つ食品ロス削減に関する先進的な取り組みの知見を連携させることで、循環型社会の実現に貢献していきたい。家庭や農場で出るごみを減らすだけでなく、新しいおいしさが発見でき、より健康的な食生活につながるような取り組みを目指す」(広報担当・青木広実氏)、京都市は「食品ロスに関してはこれまでも取り組んできたが、企業との連携を通じてより積極的に進め、市民の意識や行動を変えていくことができるよう、成果を上げていきたい」(同市環境政策局循環型社会推進部ごみ減量推進課・林孝彦氏)と話している。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。SDGsを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。