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企業と連携、心が通う元気で便利な田舎目指す舞鶴版SDGs――全国SDGs未来都市ブランド会議 2

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京都府舞鶴市 多々見良三市長

SDGs達成への取り組みを地域のブランド価値へと接続するための議論が行われた「全国SDGs未来都市ブランド会議」。リレー・トークでは自治体×企業のパートナーシップによる最先端の事例がテーマごとに紹介された。初回は「スマートコミュニティ」。京都府舞鶴市の多々見良三市長と、オムロンソーシアルソリューションズ株式会社(以下、OSS)の横田美希・事業開発統括本部コミュニティソリューション事業本部NEXT事業統括部プロジェクトリーダーの2氏が、「心が通う便利な田舎 - 舞鶴版Society5.0 for SDGsの挑戦」と題して発表した。人口約8万人の歴史ある町が挑戦する新たなまちづくりの仕掛けとは――。(廣末智子)

京都府の北西に位置する舞鶴市は日本海に面した国防の拠点であり、また関西のエネルギー拠点であると同時にものづくり産業や、広域観光の拠点でもある地。こうした地理的、歴史的背景を強みに、「心が通う元気な田舎暮らしができるまち」「市民(事業所)が元気なまち」「住み続けたいと思えるまち、人が集う魅力あるまち」「新たな技術を導入した未来型のスマートなまち」「多様な連携のもと、持てる資源を効果的に活用するまち」の5つを柱としたサステイナブルな街づくりを推進中で、2019年には「SDGs未来都市」に。中でも企業や多様な主体との連携を通じて新たな価値の創出が見込める取り組みとして「自治体SDGsモデル事業」にも選ばれるなど高い評価を受けている。

リレー・トークで多々見市長は「田舎は不便だ、都会は便利だからいいという固定概念を切り崩したい。舞鶴の出生率は1.8で子育てがしやすい環境にあり、都会を支える意味でも、舞鶴のような元気な地方が必要だ。昔ながらの、心が通う人と人とのつながりをしっかりと残しながら新たなAIや IoTといったものを使って便利な田舎暮らしができるようにしたい」と舞鶴がSDGsに取り組む意義と目的を強調。 庁内に20課約40人で構成する横断組織「舞鶴Society5.0推進本部」を立ち上げ、企業や大学との連携によるビジネス創出や人材活用などを通して自治体と住民、学生、企業の面々が交流を深め、さまざまな社会実装が進む現況を説明した。

お互いさまで課題解決 「4方よし」実現を

オムロンソーシアルソリューションズ  横田美希・事業開発統括本部コミュニティソリューション事業本部NEXT事業統括部プロジェクトリーダー

一方のOSSは、舞鶴市と包括連携協定を結び、「共生」「エネルギー」「キャッシュレス」「モニタリング」「若者チャレンジ」の5場面で同市とともに社会実装のプロジェクトを進行中。この日はプロジェクトリーダーである横田氏が、交通事業者との協力型で“住民同士の送迎”を実現し、移動の最適化を図るサービスである「共生型MaaS“meemo (ミーモ)”」の事業を紹介するとともに、同社が地方創生に携わる意義などを語った。

横田氏はまず、オムロンの「目指す共生」について、「町の遊休資産(人・物・空間)をつなぎ、機能不全に陥る前に、お互いさま(の精神)によって課題を解決する」ことと説明。この考えに基づき、生活のさまざまなシーンにおける困りごとを解決するプラットフォームづくりを模索する中、交通に特化したサービスであるミーモのアイデアが生まれ、具体化したという。

背景には、「2025年を機に一気にドライバーが6割以上いなくなる」という地域の公共交通をどう維持するかという問題があった。そこで、既存のバスやタクシーに加え、住民同士が送迎する仕組みを交通事業者との協力型で構築。具体的にはタクシーとバス、そして住民同士の送迎が1つのシステム下に共存するアプリを導入するもので、舞鶴市とOSSに日本交通株式会社を加えた3社で実証実験を行い、住民の利便性が向上するか、交通事業者の担い手不足を解消する打つ手になりうるのかを検証する。

「自治体にとっては利便性の向上とともに財政負担の軽減にもなる。自治体、交通事業者、住民、そしてオムロンの4方よしを実現したいなと思っています」。地域交通の根本的な課題解決に向け、今後は計画策定からシステムの導入、データ分析や提言という一連の流れを形づくリ、ノウハウを積み重ねる方針だ。

最後に、SDGs挑戦のパートナーとしてお互いと組んだ理由を、多々見市長は、「困ったところに社会還元できるオムロンさんの精神と技術を活用させていただけないだろうかということでお願いした」、横田氏は「オムロンの理念は社会課題の解決。2030年40年を見据えた時、日本の社会課題はやはり地方創生だと思うのでお受けした。舞鶴市で成功事例を作って全国の自治体に展開をしていきたい」と述べた。両者の連携と協働の生み出すさらなる効果へ期待が高まる。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。