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IoT×5Gで人口減少に挑む 横須賀市、大分県、前橋市が最先端の取り組み紹介

IoT(モノのインターネット)や驚異的な速さの5G回線などの最新技術を、人口減少や少子高齢化など全国に共通する地域課題の解決につなげるまちづくりはどこまで進んでいるのか。「第2回未来まちづくりフォーラム」の特別セッションではNTTドコモと提携する横須賀市、大分県、前橋市の3自治体が、自動運転やドローンなどを使った最先端の取り組みを報告した。(廣末智子)

横須賀 ビジネスモデル構築に力

横須賀市経済部企業誘致・工業振興課の日下浩一氏

3自治体の中では最も都市部で規模の大きい横須賀市。それでも人口は40万人を下回り、2013年には全国で人口が最も減るなど人口減少と少子高齢化が大きな課題に。地理的条件などからコミュニティの希薄化が進む地域もあり、暮らしやすさを向上させるためのスマートモビリティ化に期待が高まる。

具体的には、オンデマンド型交通としてのAI運行バスや、ドローン物流や無人配送ロボットを使った観光支援や買い物困難者支援、ユニバーサルデザインの発想であらゆる人の移動・観光を包括的に支援するサービスなどの実証実験が進行中で、「行政が予算を拠出して民間企業がシステム実装を行う、ビジネスモデルとして成立する仕組みの構築」に力を入れているという。

大分 ブリの存在価値見える化も

大分県商工観光労働部情報政策課の高倉圭司

一方、「人口も経済規模もだいたい日本の100分の1」とされる人口116万人の大分県は、地域の課題解決に向け、直接的に最先端テクノロジーを活用。「一次産業×AI・IoT」の一例では、養殖場のブリを水中カメラで捉え、魚の体長や重さを解析してリアルタイムで在庫価値を見える化するなど、これまで経験と勘に頼ってきた部分のデータ経営を進めることで生産性の向上を図る。さらに大分には高速道路に霧が発生し、頻繁に通行止めになるという「県民にとって非常に頭の痛い課題」が。これに対しても5Gを活用し、車体に取り付けたカメラやセンサーの画像を解析してドライバーにARの情報を映し出し、前の車との車間距離を把握して濃霧の中でも運転できるようにする実証実験を開始した。このほかにも一人暮らしの高齢者のコミュニケーションに遠隔操作ロボットを活用するなど、県民に身近なところからさまざまなシーンに技術革新を取り入れている。

前橋 「日本の縮図」の課題解決をモデルに

前橋市情報政策課の綱島勇生氏

また人口33万人の中核市である群馬県前橋市は、「人口のサイズも全国的に標準で、且つ高齢化や交通インフラの欠如など自治体が抱えている課題を一通り網羅している。そういう意味で、日本の縮図であり、課題先進地域である」という位置付けでAIや5Gを活用したまちづくりを実践中。昨年行った全国初の取り組みでは、約4カ月の長期にわたってバスの自動運転を行い、期間中無事故で、のべ1万人が乗車した。マイナンバーカードで本人認証をし、高齢者のタクシーの一部運賃を補助する取り組みなど、マイナンバーカード1枚でできることを「前橋モデル」として積極的に展開しているのも特徴。日本の縮図である前橋で課題解決につながったソリューションは、前橋モデルとして他地域でも転用できるのではないか、という考えに基づくものだ。

IoT活用インフラ整備こそ

人口減少という大きな課題を背に、それぞれに次世代のまちづくりに取り組む3自治体。セッションを通じて見えてきたのは、今後、どこに重点を置いて最先端のテクノロジーを活用していくべきか、という問題であり、「日本全体で今後100年のうちに人口が4分の1に減っていくだろうと言われる中で、今ある1億2000万人分のインフラをどう維持するのか。例えば車のカメラセンサーで道路の凹んだ部分をキャッチしてAIの力で自動分析するなど、少しでもマンパワーを減らせる展開ができないか。IoTを活用したインフラ整備こそ行政がやるべき課題だ」といった提起もなされた。

セッションの進行役を務めたNTTドコモ 第一法人営業部の末次光氏は、「私たち企業側からすると、実証実験だとかテクノロジーは持っているが、地域の課題がなかなか深掘りできない。地域の皆さんと議論していかなければ進まない。(3自治体のように)先端で進んでいる自治体と一緒に成功事例をつくり、それをいろんなところで広げていくことが、未来のまちづくりに必要なことではないか」と締めくくった。

末次氏
廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。