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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

地域課題を解決するオープンイノベーション拠点「リビングラボ」が実現するサーキュラーエコノミーplus

左からファシリテーターの関口氏と杉浦氏、パネリストの河原氏、野村氏、鈴木氏

サステナブル・ブランド国際会議2020横浜の2日目に行われた「横浜トラック」では開催地・横浜をテーマに企業・団体が共創について語り合った。このセッションでは、横浜で始まっている官民が連携して地域の課題を解決していくためのオープンイノベーション拠点「リビングラボ」の運営に関わる3人が登壇した。(岩崎 唱)

ファシリテーター:
ヨコハマ経済新聞 編集長・横浜コミュニティデザインラボ 代表理事 杉浦 裕樹
横浜市 政策局共創推進課 担当係長 関口 昌幸
パネリスト:
太陽住建 社長 河原 勇輝
Woo-By.Style 代表 野村 美由紀
都筑リビングラボ 担当 鈴木 仁

横浜が抱える課題解決に取り組むリビングラボ

ファシリテーターの一人、横浜コミュニティデザインラボの杉浦代表理事は「いま横浜では市民が支え合って横浜の課題を解決し、より良くしていこうというオープンイノベーションが始まっている。このセッションでは、私たちがリビングラボで何を目指しているのかを感じ取っていただきたい」と挨拶した。

続いてもう一人のファシリテーター、横浜市の関口氏が横浜の現状と抱えている課題について解説した。横浜市は、超高齢化と人口減少の急速な進展、首都圏への人口流出、気候変動による自然災害の頻発・甚大化の3つの課題を抱えている。それらの課題解決のために、行政だけでなく企業、NPO、大学など多様な民間主体との対話を通じて連携し、地球温暖化による気候変動に対応しながら環境や経済に持続可能性を持たせるビジョン「サーキュラーエコノミーplus」を展開している。

サーキュラーエコノミーplusには、地域における資源循環、電力・食の地域消費をめざす「ローカル・フォー・ローカル」、空き家、遊休農地など生かされていない空間を有効活用することで持続可能な「まち」の実現をめざす「サステナブル・ディベロップメント」、今まで分断されていた介護・ヘルスケア・スポーツ・生活サービス産業などを総合的にプロモーションすることで生涯活躍社会を展開し人生100年時代の健康戦略をめざす「ヘルス・プロモーション」の領域があり、この3つをつなげながら会社や学校にとらわれないもうひとつの働き方、学びの場を創出することを目指す。「ひと」をエンパワーメントする「パラレルキャリア」を推進し、すべての人が生き生きと働いていける社会をつくろうとしている。また、循環活用する資源を廃棄物やエネルギーだけでなく、人材をも含めた広い範囲で捉えていこうという思いから、サーキュラーエコノミーに「plus」を付け加えたと述べ、パネリストにバトンを渡した。

地域企業の本業と一体化した社会貢献をめざす

リフォームとエネルギーを主な業務とする太陽住建の河原社長は、地域と関わり、本業と一体化した社会貢献を目指している。エネルギー事業では、太陽光発電システムの設置工事に障がい者を積極的に雇用し、地域の雇用拡大に努めている。また、リフォーム事業では、空き家活用プロジェクトを立ち上げ、各地の空き家を借り上げ、リフォームして地域の災害拠点とする活動に取り組んできた。建物の一室には防災シェルターを設置し、蓄電池付き太陽光発電システムを導入することで災害発生時に備える。

また、横浜市住宅供給公社とのコラボレーションで、公社の空き家を活用し、地域住民が集う場としてUDCI(井土ヶ谷アーバンデザイン)を3年前に立ち上げた。地域住民が、町内会の会合に利用したり、公社や太陽住建とNPOがイベントを開催したり、地域と企業がつながっていく場を創生している。UDCIを作るにあたって河原氏自身が井土ヶ谷地区に引っ越し、地域をよく知るために井土ヶ谷会議を開催し、地域の人たちとの交流を深める中でさまざまな地域の課題が見えてきた。そこで、企業や町内会、地域住民が一緒になり課題を解決するために、井土ヶ谷会議は現在の井土ヶ谷リビングラボへと変化していった。なかでも、空き家問題に対する参加者の関心が高かったという。

そのため、地域の空き家を借り上げ、1階を地域の人たちのコミュニティスペースとして無償開放し、2階をコワーキングスペースとして入居者から家賃収入が得られるようにした。また、このプロジェクトを通じ、地域の課題解決のアクションを起こす難しさを経験したため、これからアクションを起こそうという人たちをサポートするために一般社団法人YOKOHAMAリビングラボサポートオフィスを開設したと述べた。

女性のビジネス活躍に取り組む「緑園リビングラボ」

横浜市の住宅エリア、南万騎が原にあるWoo-By.Style(ウッビースタイル)の野村代表は、横浜が提唱しているサーキュラーエコノミーplusの「パラレルキャリア」実現に向けてさまざまなチャレンジしている。Woo-By.Styleは、イベントの企画制作・運営が主な事業だが、まちづくり・地域課題への取り組みなども事業内容に加えている。事業の一つ、女性の事業活動支援「稼女(かせじょ)プラットフォーム」では、子育てや家庭と仕事を両立したいと考える女性たちが、雇用されるのではなく自由に働きながらしっかり稼ぐ仕事を見つけるための情報と場を提供している。

また、フェリス女学院大学情報センター専任講師の内田奈津子氏を顧問に迎え、フェリス女学院大学GIS研究会を拠点に、女性のビジネスでの活躍に取り組む「緑園リビングラボ」を立ち上げ、主婦が自分の時間に仕事ができるようにするための課題抽出と解決に取り組んでいる。野村氏は、「超高齢人口減少社会で女性の役割がますます増加している。現実課題として、自由になる時間がない、スキルアップする場がない、一緒に頑張る仲間がいないということが挙げられる。まちの中で学べて働ける場や、ディーセントワークを実現するための環境整備が必要だ」と訴えた。

支援する・支援されるという関係を越えて地域に貢献

続いて鈴木氏が、都築リビングラボの取り組みについて紹介した。都築リビングラボは、障がい・引きこもりといった生きづらさを抱えた人が社会の中でいきいきと学び、働き、その働きに見合った対価が得られるようにすることを目指す。東京都市大の情報デザイン研究室や青少年のひきこもり支援をしているNPO、地元のものづくり企業と連携し、ものづくりをきっかけに、弱さではなくそれぞれが持っている可能性や強みに焦点を当て、伸ばしていこうとしている。

具体的には、地元で産業用ヒーターを製造しているスリーハイ(横浜市都筑区)で生産過程にでる廃材を使ったものづくりに取り組んでいる。セッションに参加していた同社の男澤誠社長はマイクを向けられ、「これからの企業は、多様な人材を積極的に受け入れ、クリエイティブな発想をしていかないと存続できない、と改めて考えさせられた」と述べた。鈴木氏は「誰にでも必ず好きなことや得意なことはある。また、他人から感謝される経験はとても大切。支援する・支援されるという関係を越えて、地域のために役立つ活動を続けていきたい」と語った。

この後セッションに参加していた各リビングラボの関係者にもマイクが渡され活発な議論がなされた。最後にファシリテーターの杉浦代表理事が、「一企業や一人が持っているものは限られているが、それを集めて価値にしていくことが重要。そのときに情報コミュニケーションや考え方が必要になる。今後もサーキュラーエコノミーplusを軸にして、さまざまな課題に志を持って立ち向かおうとしている人たちとつながり、ともに学び、ともにアクションを起こしていきたい。そういったつながりが、横浜の中でどんどん生まれていくことを期待したい」と締めくくった。