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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

日本創生SDGsモデルをつくろう――第2回未来まちづくりフォーラム①基調講演

産官学金労言――あらゆるセクターの連携によって持続可能なまちづくりを考える「第2回 未来まちづくりフォーラム(通称みらまち)」が昨年同様、サステナブル・ブランド国際会議2020横浜の会場内で併催された。「未来まちづくりフォーラムSDGs宣言」を掲げる同フォーラムの今回のスローガンは「日本創生SDGsモデルをつくろう」。SDGsを共通言語に、あるいは武器として、サステナビリティに先進的な自治体がどのように考え、企業や地域金融機関、NPO/NGOなどと連携しているのか。SDGs未来都市の首長も登壇し、示唆に富む発表や議論が行われた。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局)

フォーラムの冒頭に登壇したのは内閣府 地方創生推進事務局長の海堀安喜氏。国の地方創生戦略を担う内閣府はSDGs未来都市の選定事業など、積極的に地域の活性化政策を進める。この日の参加者、登壇者に海堀氏は「地域資源やノウハウを最大限に活用し、地域を盛り上げるために工夫や努力を重ねてこられたことと存じます。内閣府としても皆さまのように地方創生に意欲的なチャレンジをされる方々を協力的に支援することによって地方創生のさらなる推進をはかりたいと考えています」と改めて後押しする姿勢を示した。

続いてオープニングに登壇したのはSDGs未来都市のさいたま市の清水勇人市長。2019年4月に埼玉県下ではじめてSDGs未来都市に選定された同市の事業を語った。

さいたま市の「運命の10年」

さいたま市は131万人以上の人口を擁し、総務省発表の転入超過数では2018年、東京都特別区部(東京23区)、大阪市に続き第3位。とは言え、人口は2030年をピークに減少に転ずると推測されている。高齢化や税収難などの大きな課題が予測され、同市では2020年からの10年間を、その後の持続的な成長・発展につなげる「運命の10年」と位置付ける。そこで同市が力を入れるのが「スマートシティ」や「SDGs」をキーワードとした取り組みだという。

さいたま市のスマートシティの取り組みは2009年から始まった「E-KIZUNA Project」に端を発する。充電セーフティネットや水素ステーションの整備、次世代型自動車の導入を進める。震災後はガソリン、水素、ガスなど多様なエネルギーを災害時にも供給可能な、ハイパーエネルギーステーションを設置。「強靭なまちづくり」を目指してきた。

その最たる例がスマートホーム・コミュニティの普及だ。高気密・高断熱仕様、太陽光パネルを設置するなどで省エネを実現。モデル街区のうち5棟の太陽光パネルで発電したエネルギーは、イオングループと連携してデジタルグリッド技術を活用し、仮想取引を行いながら市内の大小の商業施設に供給する実証実験を行っている。「うまく進めば地産地消型のエネルギー供給ができ、災害時にも電力を融通することができる」と意欲的だ。

さいたま市は「市民一人ひとりがしあわせを実感できる“絆”で結ばれたさいたま市」、「誰もが住んでいることを誇りに思えるさいたま市」というテーマを持つ。「これらを達成する手段としてSociety5.0への対応、AI/IoTなどの新技術を活用したイノベーションによってスマートシティを実現することが極めて重要だと考えている」と清水市長は話した。

SDGs未来都市として進める経済、社会、環境の3側面の統合的な取り組みのうち、スマートシティさいたまモデル事業は「環境」にあたるという。では経済の側面ではどうか。実は同市は新幹線が6路線通るなど、鉄道や高速道路の結節点になる場所だ。人・もの・情報・お金がまさに交流し、周辺地域まで高価を及ぼすというのが基本的な考え方」だと清水市長は説明する。

この交通結節点の利点を生かすため、「東日本連携フォーラム」を創設し、現在24の自治体が参加する。「まるまるひがしにほん(東日本交流センター)」プロジェクトだ。センターの1階には都内のアンテナショップのように地産品などを置き、2階はBtoBのマッチングが可能な交流機能を持たせ、市内の事業者を首都圏の巨大なマーケットに接続する。

社会面では「CS90運動」を展開している。さいたま市を住みやすいと思う人の割合=市民満足度と定義し、2020年度にこれを90%以上にすることを目指す。「CSパートナー」と呼ぶ登録制度には現在、47の企業や団体などがパートナーとなっている。官民学一体となって市民満足度を高める取り組みをしているという。

清水市長は2018年10月、ドイツに本部を置くICLEI(イクレイ=持続可能な都市と地域をめざす自治体協議会)の事務局を訪問し、連携協定を結んだ。そして2021年、これまで9回開催したE-KIZUNAサミットを、SDGsの達成に資する3側面で拡充しE-KIZUNA1グローバルサミットとして開催することを予定している。

「世界的ニーズに対応した多様なテーマのなかで国際的なステークホルダーの皆さまと交流し、進化させ、さまざまな企業や団体、自治体とパートナーシップを結びながら市民の利便性の向上、生活の質の向上、市民満足度の向上に向けて取り組んでいきたい。来場の皆さまもともにいろんな取り組みをさせて頂ければと思っています」と清水市長は結んだ。

日本を創生するSDGs経営に今求められるのは

「日本創生SDGs経営」と題して基調講演を行ったのは未来まちづくりフォーラム実行委員長の笹谷秀光氏だ。

笹谷氏は「レガシーづくりの時代です」と現在の社会を見据える。レガシーとは直訳すると「遺産」だが、文化庁の邦訳は「未来への贈り物」だ。これが本フォーラムのテーマだと笹谷氏は提示した。同フォーラムはSDGsに強くコミットし、11番目のゴール「住み続けられるまちづくりを」を中心に据える。「住み続けられるまちづくりを」は英語で「SUSTAINABLE CITIES AND COMMUNITIES」だ。中央と地方、東京と地方という対立を軸にするのではなく、それぞれにエリアマネジメントがあり、コミュニティをどう活性化するかが重要だ。

「持続可能性とは世のため人のため、自分のため、そして子孫のためという、世代軸を入れた概念だと思います。孫、子の代に恥ずかしくないかという価値観を取り入れたいと思います」

日本は思った以上に注目されている

「日本は発信性がとても強いと思います」と笹谷氏は分析しているという。一例として挙げたのが2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)だ。大阪・関西万博では「目指すもの」として「国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)が達成される社会」を大きく掲げている。しかし「大阪・関西万博という名称に引っ張られて、関東圏の人が我がことに感じていないのではないか」と笹谷氏は警鐘を鳴らす。もちろん万博とは万国博覧会であり、日本館の出展はオールジャパンで取り組むものだ。

1970年の大阪万博開催時に建造された「太陽の塔」は、万博の「レガシー」のひとつとして海外からどのように見られているのか。トリップアドバイザーが行った、これまで開催された万博の観光上のレガシーランキング調査(2018年)によれば、太陽の塔は4位(1位は「スペイン広場」)。「日本人が思っている以上に世界は日本のことを知り、注目している」と笹谷氏は指摘する。

また米USニューズ&ワールドレポート誌の国家ランキング「ベスト・カントリー・ランキング」で、日本は2019年に2位に浮上した。「日本人を対象に同様の調査をすれば、非常に順位が低い結果が出ます。つまり日本人は自分でわからないまま世界で認められている。私は自信を喪失してしまったのではないかと思っています」と話し、同フォーラムを「日本の良いところを再発見する機会にしてほしい」と期待を述べた。

SDGsの「怖さ」とは――

では、「日本のいいところ」とはどのようなことだろうか。国内ではひとつの話題が取り上げられると、瞬間的に世間が「その話題一色」になる傾向があると笹谷氏は指摘し、「基調にあることを把握するべきだ。日本は持続可能性という価値観を持っています」とエンパワーメントを促す。「SDGsに対して日本は、日本企業はどうするのか。文明論として質が問われているのです」と本質の問題を提起した。

「共通価値の創造(CSV)の日本的理解が『三方よし』です。このマインドがあるならば、発信さえすればいい」と「発信型三方よし」を促し、「共通価値の創造は経済価値の実現、競争優位と社会課題の解決を同時に実現するものだが、言葉だけでは何が課題なのかはっきりしませんでした。しかし課題には、SDGsがしっかりと当てはまります」と続けた。

課題を可視化し、共通言語としてアイコンで表現する。これまで外からでは「良さ」がわかりにくかった取り組みも、SDGsのアイコンを見せればどういうことをしているのかが理解されやすい。発信の手段としてSDGsは大いに活用できるというわけだ。一方で「SDGsには怖さもある」という。

笹谷氏は「最近『SDGsスルー』をする日本人が多い」と感じるという。「わが社には持続可能性の考え方やマインドが昔からある、だからSDGsはいらない」というわけだ。しかし「その考え方は世界に伝わっていますか」と問いかける。

「共通言語がないまま2030年を迎えるのはとてももったいない。世界に伝わってないのであれば、ただちにSDGsに取り組むべきです。『やれる人が、やれるところから』を『やらなくてもいい』と捉えてしまうことが、日本企業にはあるように感じます。やる人とやらない人はどんどん差が付いているのです。それがSDGsの怖さです」

SDGs経営で重要視されるのは「普遍性」「包摂性」「参画性」「統合性」「透明性」の5つの要素だと笹谷氏は解説する。これらはいま、すでに「規定の演技」だという。基礎を押さえた上で、各企業が独自の重点領域を割り出し、取り組む「自由演技」に向かう時期で、かつ自主的なルールの運営で差が付くというわけだ。

未来まちづくりフォーラムでは「Society5.0」「次世代育成と女性躍進」そして「地方創生」を中心として事例、意見、課題を語り合いSDGs先進国を目指す展開をする。「ともに考えましょう」と笹谷氏は会場に呼びかけた。

沖本 啓一(おきもと・けいいち)

Sustainable Brands Japan 編集局。フリーランスで活動後、持続可能性というテーマに出会い地に足を着ける。好きな食べ物は鯖の味噌煮。