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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

持続可能な未来をつくる実践型学び、ESDやSDGsが今後の教育を変えていく

左から内山昂大さん、田邊凌也さん、阿部竜生さん、張暁玲さん、鈴木正吉さん

未来の持続可能な社会をつくっていく中学生から大学院生までの5人の若者たちが初めて「第4回サステナブル・ブランド国際会議2020横浜」のセッションに登壇した。彼らはESD(持続可能な開発のための教育)やSDGsを早くから学び、実践的なワークショップやフィールドワークなどを通じて、今までとは異なるアプローチや考え方で持続可能な未来を作り出そうとしている。生徒たちの発表を足掛かりに、これからの目指すべき教育の形について探った。(環境ライター箕輪弥生)

ESDを取り入れる学校が拡大

"Education for Sustainable Development"の略称であるESDは、「持続可能な社会づくりの担い手を育成するための教育」のことを指す。環境、エネルギーから国際理解、持続可能な社会づくりのための教育まで、サステナブルな社会をつくるためのテーマを総合的、実践的に学ぶ。

ESDは同会議で基調講演を行った渋谷教育学園の田村哲夫理事長らの尽力により(田村理事長の講演内容はこちらを参照)、2002年に環境開発サミットで日本政府が提唱したものだ。

「ESDを始めた当初はわずかだったが、今は約1200の学校(編集注:2019年11月時点で1120校)が参加している」とセッションのコーディネーターとして登壇した朝日エルの会長でESD推進フォーラムの理事を務める岡山慶子氏は話す。

背景として持続可能な開発における国際的な目標を設けたSDGsが国連で採択されことによりESDの重要性が増したことがあげられる。

体験、体感を通じて理解が深まり、自発的な行動が生まれる

この日はESDを学んだ中学生から大学院生までの5人が、ESDを通じて何を学び、今後どんなことをしようとしているのかを発表した。立ち見も出るほどの会場の熱気の中、生徒らの発表が始まった。

トップバッターを務めたのは最年少、横浜市共進中学校1年生の内山昴大さんだ。内山さんはESD学習の中で、さまざまな職種の人に仕事について聞く機会があり、仕事の内容だけでなく苦労や楽しみを知り、将来の仕事を考えるための視野を広げた。

活動の中で近隣の工務店の社長と出会い、工務店のシャッターのデザインをやらせてほしいと内山さん自らが提案した。提案は受け入れられ、内山さんは他の生徒と共にデザインを考え、町の人にも広く案について意見を聞くなどして最終デザインを完成させた。内山さんは「自分が行動すれば周りが変わることを体験した」と話す。

福山市立福山中学校3年生の田邊凌也さんは韓国でのホームスティと国際交流を経験し、隣国とのマナーや文化の違いに驚き、同世代の中学生からも今までにない考え方を知ったという。経験を通じて、多面的な見方を意識すること、積極的に自分からコミュニケーションをすること、英語を話せるようになることなど、目標が明確になったと話す。

東日本大震災について、実際に震災が起きた場所に行き、自分の目で見て体感することで進路にも影響があったと話したのは、宮城県多賀城高等学校災害科学科3年生の阿部竜生さんだ。

知ること、伝えることが大事だと強く思ったという。また、小名浜での体験から将来は街づくりに関わりたいと思うようになったと話した。

ネットワークやグループの力を最大限に引き出す能力を磨く

身近なことから始めて、周りを巻き込んでいくことの大事さを説いたのが京都大学大学院地球環境学舎 研究科修士課程年の張暁玲(ちょう しゃおりん)さんだ。張さんは高校時代にESDと出合い、「学生フォーラム」では海外ゲストをサポートするリーダーを務めた。自らロールモデルとなり、見せていくことでリーダーシップを発揮していくことが重要だと感じたという。この高校時代の経験を基に、現在は、環境教育を専門とし、大学院でコミュニティに根差した教育について研究している。

最後のプレゼンテーションは大学4年生の鈴木正吉さん。鈴木さんは東京工科大学 工学部電気電子工学科 でサステナブル工学を学んだ。主に、製品のライフサイクルアセスメント(LCA)を研究したが、座学として学ぶだけでなく、他の3学科で混成チームをつくり、LCAの改善計画を発表するなど実践的に学べるプログラムを経験した。

鈴木さんはこのプログラムを通じて他の学科の知識を使うことによって解決方法が見つかるなど、SDGsの実現にはコミュニケーション能力やチームワークが重要だと感じた。

また、サステナブル工学はエンジニアのスキルとして強い武器になると確信し、「卒業後は次世代モビリティ社会の実現に取り組みたい」と表明した。

学校と企業がサステナブルを共通言語につながる可能性も

岡山慶子氏(左)と住田昌治校長

コーディネーターとして登壇した横浜市立日枝小学校の住田昌治校長は生徒の発表を聞いてこう話した。

「彼らのプレゼンを聞きながら、ドキドキが止まらなくなった。彼らはすでに未来に向けて行動を起こしている。子どもたちはいろんな人に関わり、出会いながら持続可能な未来を見据えた新しい学びを経験している。今は彼らの話に大人が耳を傾ける番だ」

一方、岡山理事は「持続可能な社会の担い手を育てるには教育現場だけでなく、企業、行政、NPOなどが垣根をとって連携して進めるのが重要だ。今回の会議はその大きなステップとなった」と話した。

これまで国内では学校と企業の連携はハードルがやや高い面があったが、SDGsを目指す企業が増えた今、ESDを学んだ若者のネットワークや提案は、SDGsを目指す企業と共通の視点が生まれている。それを象徴するように、企業のサステナブルな取り組みを発表する場である同会議に「教育」という新たな1面が加わったセッションとなった。

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/