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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

気候変動、資源など4つの地球的課題の解決を目指す「4Revs」とは

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左からファシリテーターのピーター.D.ピーダーセン氏、プージャ ティール氏(NELIS)、落合仁氏(NEC)、橋本昌幸氏(丸紅)

地球規模で課題が山積みとなっている「食糧」「水」「 資源・生態系」「エネルギー・気候変動」という4つの分野で、世界から解決のシーズを見つけてイノベーションを起こしていこうというプラットフォーム「4Revs Co-creative Ecosystem」が今年4月からスタートする。この仕組みを作ったピーター.D.ピーダーセン氏は、第4回サステナブル・ブランド国際会議2020横浜で、参加するNEC、丸紅の担当者や英国のプログラム・マネージャーらとともに登壇し、取り組みの意義や目指す方向を発表した。(環境ライター 箕輪弥生)

イノベーションを加速する共創のプラットフォームを

「21世紀後半に向け、人類は4つの大きな生存危機に直面する。それは食糧、水、資源・生態系、エネルギー・気候変動の4つの分野だ」とサステナブル・ブランド国際会議2020横浜のアドバイザーでもあり、一般社団法人Nelis代表理事のピーターD.ピーダーセン氏は開口一番指摘した。

ピーダーセン氏は、「このままだと、世界の50%超が水ストレスに直面するようになり、プラスチック汚染が進み、環境難民が激増する。2030年にはビジネスとしての漁業も危うくなるなど、問題は枚挙にいとまがない」と危機感を強める。

「データに基づいて分析をすると、人類はかなり厳しい状況まで追い込まれており、これまでのような小手先の施策ではどうにもならない、つまりイノベーションを加速度的にスケールアップする必要がある」とピーダーセン氏は話す。この問題意識が世界に広がる共創プラットフォーム「4Revs」を作ることにつながった。

「4Revs」は世界各地にいる7人のプログラム・マネージャーと20-30名から成る実行・リサーチャーを担うチームを持ち、彼らが4つの分野の問題への解決につながる新しい事業、野心的・冒険的な事業、ライフスタイルのシーズを拾ってくる。そしてその情報を企業に提供しながら、社内起業家を育成したり、ふさわしい提携先を探したりするなどして課題を解決していこうという構想だ。

世界中から社会課題解決のシーズをキャッチ

ではどのようなシーズが世界にあるのだろうか。実際に今後活動するプログラム・マネージャーの一人、イギリス在住のプージャ ティールさんは、事例を紹介した。

そのひとつが2012年にオランダのスタートアップが開発したスマートフォン「Fairphone」だ。「世界一エシカルなスマートフォン」とも言われる同製品は、紛争鉱物の使用をできる限り抑え、全てリサイクル可能なパーツで構成され、長期間使用可能なように設計されている。

また「AgUnity」は、小規模生産者に、農産物の取引と市場参加者間の独自のブロックチェーンベースのモバイルアプリを提供する、グローバルに活動するスタートアップだ。これにより市場参加者が小さな協同組合を結成して協力することを可能にし、小規模農家の売上も3倍にまで伸びたという。

「4Revs」はこのような事例から、社会課題へのアプローチの情報を参加企業に提供していく。

異なるバックグラウンドの視点を取り入れる――丸紅

真っ先に「4Revs」への参加表明をしたのが丸紅だ。同社のサステナビリティ推進部の橋本昌幸部長はその理由を「同じ国で同じような教育を受けた人だけでなく、バックグラウンドの異なる視点を取り入れ、刺激を受けることで新たな解決策が生まれるのでは」と考えたと説明する。

丸紅は創業160年の総合商社だが、その存在意義を「社会課題を先取りしてそれに対するソリューションを提供し続ける」ことに置いている。つまり、社会課題は時代と共に変化するものであり、それに伴いビジネスモデルも変革させていく必要があるというというのだ。

変化する社会課題をとらえたビジネスモデルの例として、橋本部長は繊維のリサイクル技術を持つ米タイトン バイオサイエンス社との連携を紹介した。縫製工場で発生する端材や、消費者が着用した古着などを丸紅が中心となって回収し、タイトン バイオサイエンス社が原料に再生するというサーキュラーな取り組みだ。

丸紅の原料メーカー、紡糸・紡績工場、縫製工場からサプライチェーンまでの幅広いネットワークとタイトンの新たな技術を組み合わせ、大量のアパレルの廃棄物に対してグローバルに循環型サプライチェーンを構築していくというものだ。

同社はこの事例のような、社会の課題を解決し、企業価値を高めていくビジネスを「4Revs」を通じて広げていきたい意向だ。

ITで社会課題の解決を支援したい――NEC

同じく「4Revs」への参加表明をしているNECは、ITを使った支援も行うパートナー企業のひとつだ。

同社は2013年から社会価値創造型企業を標榜しており、自社の技術を使って社会課題の解決を行う事業を数多く行っている。そのひとつが、流通段階での食品ロスを減らすために、製造から小売りまでのバリューチェーン全体でデータを収集し、AIによる需要予測を行い、つくりすぎを抑制し、適正在庫を保つ「需給最適化プラットフォーム」だ。

また、洪水、森林火災など気候変動の影響を見える化し、センサー、AIを組み合わせてソリューションを提供するICTを活用した気候変動対策や、20年前から進めているという幼児の生体認証の例も紹介された。

後者は、予防接種で防げる病気で多くの子どもが命を落としている課題をとらえ、幼児の生体認証の技術を使ってスマートフォンで指紋認証を行い、ワクチンを配布し接種記録を残すというプロジェクトだ。IDがなく、出生の記録がないと予防接種などの公共サービスも受けられない。世界では毎年5歳未満人口の3.9%が亡くなっているという。

この取り組みは、「Gavi」というグローバル・パートナーシップ機関により行われているが、2000年から延べ7億人以上の子供たちが予防接種を受け1300万人以上の命が救われてきたと推計されている。

同社コーポレートインキュベーション本部 落合 仁シニアエキスパートは、「4Revsの取り組みは社会課題を認識し、強みを構築して価値を作っていくというNECのフレームに近いものなのでは」と話し、「多くの企業の方が参加するので、課題を共有しながら新たな企業価値をつくっていきたい」と同プロジェクトに参加する意気込みを話した。

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。

http://gogreen.hippy.jp/