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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

サプライチェーン上の森林をどう守るか

左からファシリテーターの坂本氏、パネリストの佐々木氏、佐藤氏、柴田氏

気候変動が身近なものとなり、世界の自然環境は悪い方に変化している。森林の減少も、以前に比べれば緩やかになっているが、相変わらず進んでいる。サステナブル・ブランド国際会議2020横浜で行われた「サプライチェーン上の森林をどう守るか」をテーマにしたセッションでは、サプライチェーンの中で健全な森林を守っていくために、企業がどう取り組んでいるかが話し合われた。(岩崎 唱)

森林破壊ゼロを目指すために

セッションには、パネリストとして積水ハウス環境推進部の佐々木正顕部長、ワイス・ワイス(東京・渋谷)の佐藤岳利社長、花王ESG活動推進部の柴田学ESG活動マネジメントグループ担当部長が登壇し、一般財団法人 地球・人間環境フォーラムの坂本有希専務理事がファシリテーターを務めた。

坂本氏は、「人々がグッド・ライフを送るために自然は健全な姿でなければならないが、過去25年間で日本の国土面積の約3.5倍の森林が失われ、とくに熱帯林の減少が著しい。森林の減少はそこで暮らす生き物の住処が失われるだけでなく、気候変動とも大きな関連がある」と指摘。また、世界各国の政府や企業は、サプライチェーンの中で違法な森林破壊を排除する「森林破壊ゼロ宣言」を出しているが、まだ目標達成には至っていないことを説明。「今日は、登壇したパネリストにサプライチェーンの森林を守るためにどのような取り組みをされているかをお聞きし、議論していきたい」と述べた。

独自の原材料調達ガイドを制定

最初に柴田氏が花王の取り組みを紹介した。同社の商品は自然資本に依存するものが多く、アブラヤシから採取するパーム核油や木材からつくられるパルプを利用している。独自の「原材料調達ガイドライン」を制定し、2020年までに森林破壊ゼロの実現に取り組んでいる。

パーム油に関しては原産地の森林破壊ゼロを確認し、パルプに関しては持続可能性に配慮したパルプのみを購入している。具体的には、パーム核油精製工場、大・中規模農園、小規模農園まで段階的に原産地追跡調査を実施し。搾油工場は2018年に98%、大規模農園もほぼ調査が終了し、今後は約120万もある小規模農園の管理をどうするかが課題だという。また、紙・パルプに関しては印刷会社・紙器会社、製紙会社、製材会社・チップ工場、森林まで、原産地を追跡している。具体的には、FSCやPEFCなど森林認証機関によって間接的にトレーサビリティを実現し、それに加えWWFと協力して作成した花王独自のチェックリストを作成し確認を行っている。

サプライチェーン、消費者と価値を共有

積水ハウスでは、木材調達管理と消費者に森林を守る重要性を理解してもらうためのコミュニケーションという2つのパートから森林を守る取り組みを行っている。まず木材調達では、自社で10の要素を設定・分析して木材をS、A、B、Cにランク付けし、可視化して管理。木材のランクをサプライチェーンに指標として示し、持続可能な木材調達に取り組んでいる。この結果、年を追うごとに持続可能な良質な木材を調達可能になった。

また、サプライチェーンに対してもサステナブル・ブランドをつくることの価値を共有する働きかけを行っている。消費者に対しても持続可能な木材を使うことの価値を高級感という理解しやすい価値に置き換えている。サステナブル・ブランドというのは商品を差別化するための要素と考え、サプライチェーンの協力企業や消費者が受け入れやすい価値に言い換えて伝えていくことが大切だと考えていると述べた。

フェアウッド使用率100%を達成

ワイス・ワイスは事業領域をオリジナルの家具・生活雑貨づくりからデザイン、コンサルティングなどの領域に拡大している。2008年から地球・人間環境フォーラムと国際環境 NGO FoE Japanの共同プロジェクトである「フェアウッド・パートナーズ」と共にサステナブルな木材調達に取り組むようになった。

また、2009年には「1.長期使用にこだわる、2.安全な材料を選び、健康に配慮する、3.森を壊さず、豊かな森を育てる、4.環境負荷削減に取組む」といった内容の「グリーンプロジェクト4つの約束」を宣言し、2010年に木材の合法性確認100%達成、2011年に環境配慮製品の拡販、2012年に環境配慮オリジナル家具販売比率100%を達成した。

また、国産材利用に注力し、佐藤氏自らが日本各地の林業地を訪れ、現地の林業家や製材所と木材調達の交渉を直接行ってきた。同社はオフィスの木質化リノベーションなどのコンサルティング業務も行っていて、リノベーションにはその地域の木材を使用している。さらに、リノベーションを行う企業の社員が、木材産地に行って草刈りなどの作業を手伝うなど、地域との関係性を築く働きかけもしている。現在、同社のフェアウッド使用率は100%を達成し、国産材使用は9割以上になっていると報告した。

消費者の意識

最後にファシリテーターの坂本氏が、各パネリストに「サプライチェーンの森林を守るための大きなポイントと思われる、消費者の意識を変えていくにはどうすればいいか」と問いかけた。

花王株の柴田氏は「価格が低く、ブランドごとの性能差があまり大きくない商品については、1社だけがサステナビリティの価値を伝えても消費者の声を買えることはなかなか難しい。しかし、消費者が声を上げてくれれば、企業は変われる」と発言した。積水ハウスは、「大企業に所属していると忘れがちだが、『自分が起点である』と考えることが重要であり、環境部やCSR部に所属する人間は社内でのプレゼンスを上げる必要がある」と述べた。ワイス・ワイスの佐藤氏は、「大人の価値観を変えるのは難しいと前置きし、今、小学校でSDGs教育が始まっている。子どもたちが家庭で木材の合法性などについて会話をするようになれば意外と早く世の中が変わるかもしれない、それに期待したい」と述べた。