サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

横浜市とバンクーバー市が目指す「2050年のサステナブル・シティ」とは

  • Twitter
  • Facebook

2050年、世界人口の7割は都市に住むといわれる。都市にはいま、未来に備えた持続可能な都市政策が求められており、脱炭素化を目指す動きも戦略の一つだ。SDGs未来都市・横浜市で開催した第4回サステナブル・ブランド国際会議(以下、SB国際会議)。基調講演には、「脱炭素社会に向けてのチャレンジ」をテーマに、横浜市温暖化対策統括本部の薬師寺えり子本部長と姉妹都市カナダ・バンクーバー市経済員会からジョアン・エランゴバン理事が登壇した。ファシリテーターは青木茂樹・SB国際会議アカデミック・プロデューサーが務めた。

再生可能エネルギー100%「リニューアブル・シティ」目指すバンクーバー

バンクーバー市は2009年、2020年までに「世界で最もグリーンな都市」を目指す都市計画「Greenest City Action Plan」を発表。「気候変動と再生可能エネルギー」「グリーン・トランスポーテーション」「ゼロ・ウェイスト」「グリーン・エコノミー(グリーン事業の促進)」「地産地消の促進」など10の目標を掲げ、最先端のサステナブル都市となるべくさまざまな取り組みを進めてきた。同市は「世界で最も持続可能な都市2019」でも8位になるなど成果を上げている。

「バンクーバーは最近になって環境やサステナビリティについて取り組み始めたわけではありません。1900年代前半からそうした流れはあり、国際NGOグリーン・ピース発祥の地で、世界的な生物学者・環境活動家のデヴィッド・スズキ氏が生まれた場所でもあります。バンクーバーという場所には、環境やサステナビリティといった精神が息づいているのです」(ランゴバン理事)

この10年間で、2020年までに達成を目指した目標の8割は達成できたという。新たに、バンクーバー市は2050年までに再生可能エネルギー100%を目指す計画「Renewable City Action Plan」を掲げる。地球規模の課題、気候非常事態対策の一環だ。再生可能エネルギーによる自治体を運営へと移行することで、より快適で安全な都市をつくることを目指している。

バンクーバー市の二酸化炭素の総排出量のうち59%(2017年)はビルなどの建物から排出されている。そのため、同市は建物の再生可能エネルギー化に注力しており、とりわけ暖房や水を温めるために必要な電力を再生可能エネルギーへと転換することを目指している。

ファシリテーターの青木氏は「バンクーバー市はグリーン・シティからさらに進んだ再生可能エネルギー・シティを目指し、行政、ビジネス、市民がさまざまなイノベーションに取り組んでいる」と話した。

脱炭素化とSDGsを両輪に、イノベーションを加速する横浜市

横浜市も同じく、2050年までに脱炭素化を目指している。横浜市温暖化対策統括本部の薬師寺本部長は、推進戦略について、「横浜市は脱炭素化とSDGsを両輪として取り組みを進めている。脱炭素化には、技術のイノベーション、産業構造の変革の大事であるだけでなく、私たちのライフスタイル、社会のシステム全体を変える必要がある。環境・社会・経済の3側面の統合的な取り組みを目指すというのは、SDGsの理念に合致している」と説明した。

薬師寺氏は「2050年までに脱炭素化を行う上で再生可能エネルギーへの転換はカギになります」とし、同市が「再エネ100宣言 RE Action」という企業、自治体、教育機関、医療機関が連携して再エネ転換を行う枠組みのアンバサダーを務め、取り組みを推進していると話した。

横浜市は、脱炭素化、SDGs達成に向けた戦略を機能させるために「ヨコハマSDGsデザインセンター」という中間支援組織を昨年5月に設立している。同センターの役割は、企業の持つシーズやニーズ、地域が抱える課題をマッチングし、統合的な課題解決策を提案すること。そして、ステークホルダーとしてプロジェクトに取り組むこと。将来的には、その成功事例を世界の都市や企業に共有したいと考えだ。

薬師寺氏は、脱炭素化には「イノベーションが何より大事」と強く語った。SB国際会議を開催した「横浜みなとみらい21」地区には、グローバル企業のR&D機能が集結する。横浜市は昨年、「イノベーション都市・横浜」を宣言しており、今後は山下公園などのある旧市街にベンチャー企業を集め、イノベーションを加速させる方針だ。

「2050年には世界人口の7割が都市に住むと言われています。脱炭素化にしろ、SDGsの達成にしろ、都市の果たす役割はすごく重要になってきます。私たちはこの取り組みを義務や、やらなければならないこととしてやっているわけではなくて、新しい成長のチャンスであるとポジティブにとらえて取り組んでいきたいと思っています」

青木氏は、「バンクーバー市や横浜市に遊びに行った際には、観光だけでなく、街の戦略、そこに色々な産業をつなげようとしていらっしゃる背景に目を向けていただきたいです。世界で最もグリーンな都市、リニューアブル都市を目指すということはまさにイノベーションの源泉だということです」と締めくくった。

小松 遥香 (Haruka Komatsu)

アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。一般企業で働いた後、出版社に入社。2016年から「持続可能性とビジネス」をテーマに取材するなか、自らも実践しようと、2018年7月から1年間、出身地・高知の食材をつかった週末食堂「こうち食堂 日日是好日」を東京・西日暮里で開く。前Sustainable Brands Japan 編集局デスク。