海洋プラスチック問題に新たな解決策
左からWWFジャパン三沢氏、サントリーホールディング北村氏、日本製紙金子氏、島津製作所 藤氏
|
「第4回サステナブル・ブランド国際会議2020横浜」の1日目、「海洋プラスチック問題への新しいアプローチ」のセッションにおいてサントリーホールディングスは、「2030年までにペットボトルをリサイクル素材、植物由来素材100%に切り替える」と明言。その方法についても研究が進んでいると発表した。日本製紙は、プラスチックに替わる再生素材として紙の可能性について改めて提案し、紙を使った新たなサステナブルパッケージを紹介した。(環境ライター箕輪弥生)
日本の廃プラリサイクルはわずか14%
毎年4億トン生産され、その量はここ50年で200倍となったプラスチック。安価で便利なことからレジ袋からペットボトルまで容器包装や繊維などに多用され、その一部が海に流出して海洋生物への影響が深刻化している。
国際環境NGO WWFジャパンの三沢行弘プラスチック政策マネージャーは世界のプラスチックゴミの約半分が容器包装から発生し、700種の海洋生物の92%がプラスチックの誤食などによって影響を受けていると報告する。
日本で排出される容器包装のプラスチックごみは一人当たり年間35kgで、米国に次いで世界2位。そして日本で回収された廃プラスチックのほとんどが燃やされて熱回収され、実際に国内でリサイクルされているのはわずか14%(2018年)だという現実も、三沢マネージャーは伝えた。
国内では今年7月からレジ袋有料化がようやく始まるが、スーパーやコンビニでのプラスチック包装の多さやリサイクルの現状を鑑みると、海洋プラスチックに関して大きな環境負荷を与えている国であることは否めない。
このような現状をとらえ、WWFジャパンの三沢氏は国内企業に対して、消費者に提供した後のプラスチック処理にも責任をもつ必要があることを指摘した。
サントリーはペットボトルの石油由来素材ゼロへ、日本製紙は紙素材への転換を訴求
新たな素材のパッケージを紹介する日本製紙 金子知生パッケージング・コミュニケーションセンター長
|
これに対し、サントリーホールディングス(以下:サントリー)の北村暢康サステナビリティ推進部長は、「2030年までにペットボトルをリサイクル素材、あるいは再生可能な植物由来素材100%に切り替え、石油由来素材ゼロの実現を目指す」というステイトメントを発表した。
現在、同社は「サントリー天然水」シリーズにおいてさとうきびの残渣を使った植物由来素材を30%使用した軽量のペットボトルを導入しているが、これに加え、米国のバイオ化学ベンチャー企業のアネロテック社と共同開発し、植物由来素材を100%まで高め、2023年から導入開始する予定だ。
サントリーの北村推進部長は、ラベルやキャップを含めた徹底した軽量化を推進していることや、“ボトル to ボトル”のメカニカルリサイクルシステムを構築しリサイクル素材を使ったペットボトルの製造の加速についても言及した。
一方、日本製紙の金子知生パッケージング・コミュニケーションセンター長は、プラスチックの使用量を減らす代替手段として、紙の役割が増すのではと期待する。紙は再生可能資源であり、カーボンニュートラルや生分解性をもつからだ。これを金子氏は「紙でできることは紙で」と表現する。
金子氏は紙への代替の例としてファッションブランドのH&Mがプラスチックバックを廃止し、紙袋を採用したことを挙げ、消費者にとって紙への代替は企業のわかりやすいメッセージになると強調した。
さらに金子氏は、汚れてリサイクルしにくい複合素材(紙 + プラスチック)の弁当容器で、プラスチック部分だけを容易にはがすことのできる素材を紹介した。こういった紙化のイノベーションにより、マルチマテリアルでも再生可能な部分を増やすことができるとする。
島津製作所の藤里砂氏は、海洋プラスチックの問題でも大きく取り上げられているマイクロプラスチックを最先端の技術で解明することで、海洋プラスチック問題解決を図ろうとする企業を支援する同社の事業を紹介した。同氏はマイクロプラスチックの分析に業務として取り組んでいる。
最後にサントリーの北村氏は、中国などの海外でのプラスチックゴミの受け入れ中止を受け、「これを日本での再資源化を加速するチャンスととらえ、企業や自治体とも連携し世界に範を示したい」と締めくくった。