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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

和食店で初めて「海のエコラベル」取得した外食チェーンの取り組みとは

「きじま」名物の海幸盛(うみさちもり)にも認証取得の水産物が。内容はその日によって変わることがある

マクドナルドがフィレオフィッシュのパッケージに「海のエコラベル」の表示を開始したことが話題になったのは2019年11月だが、実は同社以前にいち早く取り組みを始めていた外食チェーン店がある。神奈川県内に6店舗を展開する「きじま(横浜・戸塚)」は2019年9月、日本料理店で初めてASC認証の水産物の提供を開始し、メニューにラベルの表示をしている。持続可能なシーフード導入にとどまらず、店舗運営や経営全体にサステナビリティを強く押し出す「きじま」の取り組みを、同社の事業戦略室長を務める杵島弘晃(きじまひろあき)氏に聞いた。(サスティナブル・ブランド ジャパン編集局=沖本啓一)

外食産業のサステナビリティと言えば、真っ先に思い浮かぶのが食材へのこだわりだ。「きじま」では昨年9月にASC認証のブラックタイガーの提供を開始し、その後10月にはMSC認証のカツオとメバチの提供を始めた。メニューなどに「海のエコラベル」を掲載するためにはCoC認証(流通経路を含めたトレーサビリティの認証)を取得する必要があり、外食産業ではまだほぼ見ることがない。「きじま」は日本料理店で初めての例だという。

さらに化学調味料や合成着色料、保存料などを使用せず、有機栽培、自然栽培の農産物の利用を促進するなど海産物以外の食材にも気を配る。もちろん、素材にも料理のアイデアにも並々ならないこだわりがあり、食材の鮮度や味は折り紙付きだ。

割り箸にはFSCの刻印、敷紙にも各種認証マークが記載されている

「きじま」の取り組みは食材、料理だけにとどまらない。洗い場では石油由来の合成界面活性剤の完全撤廃を目指して取り組みを進めるほか、プラスチック削減のためストローは撤廃。店内で利用する割り箸はFSC認証を取得している。また店内の印刷物は環境印刷を意識したものが多く、紙は割り箸同様にFSC認証、カーボンオフセットを導入したものへ変更を進めているという。

企業理念は目的 MSC・ASCへのコミットは手段

なぜここまで徹底した取り組みが可能なのか。サステナビリティの取り組みを推進するのは、同社の現社長・杵島正光氏の2代目となる事業戦略室長・杵島弘晃氏だ。

「きじま」事業戦略室長・杵島弘晃氏

大学時代に勝川俊雄・東京海洋大学准教授に影響を受けたという弘晃氏は、もともと強い問題意識を持っていたという。「きじま」創業50周年にあたる2016年、弘晃氏が主導し、会社の企業理念を刷新した。「食を通じて持続可能な共同体の創造と発展に寄与する」――。既存の「きじまモットー」に並んで掲げられる。

新理念に書かれたとおり、念頭にあるのは「持続可能な共同体」。サステナブルシーフードなど食材の刷新を大きな柱としながらも、それに限らず店舗全体に目が行き届く取り組みは、この理念をしっかりと意識しているからだ。「目的は理念。MSC・ASCへのコミットやSDGsに取り組むことはあくまで手段です」と弘晃氏はぶれない姿勢を見せる。

「企業理念を刷新することは、自分たちが何のためにビジネスをしているか、どうして会社として集まっているのかという根本的な目的や、存在意義を問い直すことでした。なぜそれをせねばいけないのか、という覚悟を持っています」(杵島弘晃氏)

IT活用しフードロス削減も

同社は近年、事業のIT化にも力を入れる。これによりその日その日の来客数見込みを予測できるようになった。「飲食店の営業は、予約や来店見込み数が基盤になっています。それに対して仕入れ、調理、提供、お支払い、という一連の流れが始まるからです」と弘晃氏は説明する。

店舗営業の根幹となる来店者の見込みを、ある程度の精度で予測できることによる効果は大きく2つある。ひとつは従業員の労働時間の削減だ。どのタイミングで何人の従業員が必要になるかはっきりとわかるようになるため、細かく時間の管理ができる。データを蓄積することで予測の精度が向上し、導入前と比較して現在では全従業員で年間数万時間の労働時間の削減を実現しているという。

そしてもうひとつの効果が、フードロスの削減だ。来店者数予測に基づいて適切な量の食材を仕入れることで、無駄を大幅に減らしている。

従業員の時間や食材の無駄、そしてそれにかかるコストを効率化するIT化の取り組みは、現社長・杵島正光氏が主導しているという。「モットー」と「企業理念」、世代を超えてそれぞれの視点を掛け合わせ、学び合いながら、店舗という場を生かして持続可能な社会の創出に貢献する。

外食産業、飲食店業界では注目に値する同店の取り組みだが、意外にも「お客様のほとんどは『持続可能性』という言葉を知らないと思います」という。「お会計のときに、置いてあるMSCやFSCのパンフレットを手に取って『初めて知った』と興味を持っていただくこともあります」と弘晃氏は話す。来店者が意識しなくとも持続可能性に考慮した、美味しい料理が食べられるということだろう。

おもてなし館 きじま本陣

住所:横浜市戸塚区戸塚町3970
045-860-6233

平日 昼 11:00~14:30
平日 夜 16:30~22:00
土・日・祝 11:00~22:00

沖本 啓一(おきもと・けいいち)

Sustainable Brands Japan 編集局。フリーランスで活動後、持続可能性というテーマに出会い地に足を着ける。好きな食べ物は鯖の味噌煮。