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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

容器を持ち込み、量り売りでの買い物を当たり前に 代々木にモデルショップ

食材を入れる容器や袋を家から持ち込み、必要な分だけ量り売りで買う。プラスチック廃棄物やフードロスが社会的課題となる中、そうした量り売り店を日本に普及させることを目指すモデル店舗「nue by Totoya」が東京・代々木にオープンした。運営するのは、仏在住で日本の料理人向けにオーガニック食材の輸入を行うPapillon d'Or(パピヨンドール)の梅田温子社長。同店舗を通して、日本の企業・消費者に合った量り売りの事業モデルを構築し、全国のさまざまな店での導入を進めていく。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=小松遥香)

店の名前「nue(ニュ)」はフランス語で「裸の」という意味。扉を開けると、店内にはガラス製の容器に入ったイタリアやフランス産の古代小麦や塩、アーモンド、ドライトマト、ハーブティーの茶葉などが並ぶ。他にも、大豆やひよこ豆、チョコレート、オリーブオイル、ワインを量り売りで販売する。どれも梅田社長が厳選したオーガニックの商品だ。年内にはドライパスタやドライフルーツなどの商品も加わり、商品の種類は30以上になるという。野菜など青果を販売することもある。

nueが開店するのは毎週日曜日。代々木公園にほど近い住宅街の大通り沿いにある店は、欧州ワインを輸入する企業のオフィスを借りて営業している。nueは12月13日の本格オープンに合わせて、9月から試験的に営業を行ってきた。

9-12月までの間に来店した人の8割はインスタグラムを見て来た10-30代だったという。ふらっと立ち寄った近所の人も、量り売りの説明をすると「それはいいね」と買い物をしてくれるそうだ。

「包装のない買い物をするとか、ごみを出さないようにしたいという需要は特に若い人を中心に高いです。でも、いまの日本にはまだまだ選択肢が少ないです」

そう話すのは店の立ち上げ時から運営を手伝い、広報を担当するノイハウス 萌菜さん。実際に、ネットリサーチ会社マクロミル(東京・港)の調査によると、65%の人が「プラスチック製のパッケージや使い捨て容器は不要・過剰」と回答している。国内でも量り売りを行う小売店もあるが、店が用意したプラスチック容器を使わなければならなかったり、50グラム、100グラムといった決められた単位でしか買えないなど課題が残る。

nueでは、お客さんが自らの手で必要な量を入れられるようにしている。持ってきた容器に何グラム入れたかを店員に自己申告すると、いくらなのか計算してくれる。

ノイハウスさんはドイツ人の父と日本人の母を持ち、ドイツで生まれて英国で育った。3年半前に来日し、外資系コンサル企業で働きながら、プラスチックや環境への意識を高めてもらおうと「No Plastic Japan(のーぷら)」を立ち上げ、ステンレス製ストローの販売などを行っている。

「量り売りは日本でも昔からあったものです。今でも、米や味噌、野菜などは量り売りで買えるし、豆腐も店によっては容器に入れて持ち帰れます。ごみをださない生活を実践しようとする人たちが集まるコミュニティでは、『ここなら自分の容器で買えるよ』と古き良き量り売りができる場所の情報を交換しています」

nueの考える「量り売り」の定義は、「包装のごみがでないこと(プラスチックごみの削減につなげること)」「必要な分だけ買うことで食品ロスを防ぐこと」。

目指すのは、店舗を拡大していくことではない。モデル店舗で量り売りビジネスを試して、実際にどのようにビジネスとして楽に量り売りを取り入れられるかを探り、改善点を反映させたビジネスモデル・システムを全国の企業・店に提供していくこと。あくまで、ごみを出さず、食品ロスを防ぐ量り売りを日本に広めていくことが目的だ。

量り売りを浸透させる難しさ

課題について、梅田社長はこう説明する。

「量り売りは、店の一角などを利用してすぐに始められるものです。量り売りを始めるのは簡単ですが、お客さんにコンセプトを理解してもらい、来ていただくというのが一番難しい」

19歳でフランス料理人として修行を積むために渡仏した梅田社長は、2005年から日本に食材を輸入する仕事を始めた。現在、ブルゴーニュ地方で暮らし、ほとんどごみを出さない生活をしているという。生ごみはたい肥化し、国の方針によって、身の回りからレジ袋に続きカップやストローなどさまざまな使い捨てプラスチック製品がなくなり始めている。

一方、自らが日本に輸出している製品や包装にはごみになるものが残っていることに矛盾を感じた。それをできる限り解消しようと、会社に量り売り事業「斗々屋(ととや)」を設立した。斗々屋で扱う商品は出荷時から、紙袋に入れてもらうよう農家にお願いしている。

「量り売りにすることで、農家の方にとっても小袋につめる作業をせずにすみます。有機農業はただでさえ手間がかかるので、梱包する作業が省けるのは農家にとっても良いことです」と梅田社長は説明する。

量り売りの構想は2年前からあったというが、日本の企業に声をかけても「早すぎる」「個包装をしていないと買ってもらえない」と断られた。だから自ら「なんとかしよう」とモデル店舗nue by Totoyaを立ち上げ、成功事例をつくっていこうと考えた。

日本では2020年7月からレジ袋の有料化が始まるが、フランスでは2016年7月に使い捨てプラスチック製のレジ袋の配布が禁止となっている。小売店では、生分解性のプラスチック袋や紙袋が有料で販売されているという。日本では、植物由来のバイオマスプラスチックの配合率が25%以上、繰り返し使えるとされる厚さ0.05ミリ以上、生分解性プラスチックなどのレジ袋は有料化の対象ではない。

nueでは、フランスで買い物時に使われている薄いオーガニックコットン製の巾着袋も販売する。食材や調味料を入れて持ち運びやすく、洗えば何度でも使え、ほつれても縫えばまた使える。1枚100-300円で販売する。容器を持たずに来ても、デポジット制でビンを100円で貸してくれて、返すと100円が戻ってくる。近所のジェラート屋さんが分けてくれたというジェラート用の紙カップは無料で提供している。

nueは毎週末、東京・青山の国連大学前で開催されているファーマーズマーケットにも出店する。7月から毎月、「NAKED~waste less market~ありのままの姿で、野菜を持ち帰ろう」を一角で開催して、容器を持ってきてもらい量り売りで買い物をする経験をしてもらう機会をつくっている。

すでに都内や大阪の企業で、量り売り事業を既存の店舗の一角で始めたところもある。香川や広島、北海道からも問い合わせが来ているという。しかし現状では、店側が量り売りを始めても、容器を持ち込み食材を「量り売り」で買うという考えがそもそもない消費者が多い。まずは「量り売りがなぜ必要か」ということを知ってもらうための勉強会から始めようと話しているという。


nue by Totoya
〒151-0053 東京都渋谷区代々木5-60-2(Wonderland内)
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小松 遥香 (Haruka Komatsu)

Sustainable Brands Japan 編集局デスク。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。「持続可能性とビジネス」をテーマに取材するなか、自らも実践しようと、2018年7月から1年間、出身地・高知の食材をつかった週末食堂「こうち食堂 日日是好日」を東京・西日暮里で開く。