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アフリカ未電化地域に灯りを広げる―WASSHAのタンザニア事業に投資拡大

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2013年からアフリカのタンザニアでソーラーLEDランタンのレンタル事業を展開するWASSHA(ワッシャ)株式会社(東京・文京区)は、関西電力との提携や国内有力6社からの資金調達により事業を拡大する。LEDランタンは、現地で普及する電子マネーの送金サービス「モバイルマネー」で利用料金を支払うことのできる仕組みで、現地の小売店(キオスク)を拠点にレンタルし、2019年10月末で1日当たりのレンタル回数が3万回を超えるサービスに急成長している。今後、関西電力との提携で2022年までに1万店舗への導入を予定。また、11月にダイキン工業、ヤマハ発動機、丸紅など計6社から10億円の資金調達を受け、新規のキオスク活用事業などを検討する。(環境ライター 箕輪弥生)

1万店のキオスクにネットワークを拡大

アフリカ地域では未だ、人口の約半数の6億人が電力にアクセスできない生活を送っている。広い国土に人口が点在し人口密度が低いため、送配電線のない地域が多く、人口増加もあり、未電化人口が増え続けている。

このような未電化地域に住む人々、中でも安定した所得を持たないBOP(Base of the Pyramid)層の人々にとっては、初期投資のかかるソーラーシステムの導入よりも、自分の収入に合わせて必要な時にのみ電力を利用できる「レンタル」の方が現実的だ。

そこでWASSHAは、2013年から電気の量り売りやソーラーLEDランタンのレンタル事業を地域の小型店舗(以下、キオスク)を通じてこれらの人々に提供している。同社は現地で普及率の高い携帯電話を介した送金システム(モバイルマネー)とデジタルテクノロジー技術を連携し、使う分だけ先に支払う「Pay As You Go」の仕組みでLEDランタンをBOP層も使用できるスキームを自社開発した。

WASSHAのソーラーLEDランタン

同社はこれまで主にタンザニア連合共和国の約1400店舗のキオスクを介して電力サービスを提供してきたが、関西電力との協業で2022年までに1万店舗へ導入を拡大する。関西電力が機材を支援し、エンドユーザーが利用した料金の一部を関西電力へ分配する仕組みだ。キオスクという小売店を通じたプラットフォームを築いているのが同社の強みであり、現在約130名を超える現地スタッフが運営する。

アフリカの社会課題の解決に共感した企業と連携進む

内部の照明にレンタル用のLEDランタンを使用タンザニアのキオスク

人口増加とテクノロジーの活用で、アフリカ地域では先進国が歩んできた技術進展を飛び越えて一気に広まる「リープフロッグ型」の発展が起きている。11月にはアフリカでの同社のビジネスに関心をもつ6社、ダイキン工業、ヤマハ発動機、丸紅、Mistletoe Japan合同会社(石川・金沢)、 みずほキャピタル(東京・千代田)、東京大学エッジキャピタル(東京・文京)から10億円の資金調達を行った。

WASSHA の秋田 智司CEOは、「当社との協業が、アフリカの人々が日々直面する課題の解決につながり、社会変革の契機になりえるという点に共感してもらい投資が決定した」と話す。

投資を決定した企業のひとつであるダイキン工業は、キオスクを通じて同社の高効率エアコンをタンザニアの小規模店舗や一般家庭に、定額課金でエアコンの利用権を一定期間得られる「サブスクリプション方式」でレンタルする事業を行う。実証実験を経て、2020年から事業を開始する予定だ。これにより、エアコン購入の初期費用を抑え、省エネ型のエアコンを低価格で使えるビジネスモデルを構築する。

ダイキン工業は世界中のスタートアップ企業との協業推進を目的にCVC(Corporate Venture Capital / コーポレートベンチャーキャピタル)を設立し、 2024年までの5年間で110億円の出資枠を設定している。その第1号案件として、WASSHAに3億円を出資した。

同社はCVCにより、自社の事業分野とシナジーを生む可能性のあるベンチャー企業に対して投資を行い、アフリカ社会の課題解決に貢献できる新たなビジネスモデルの構築を目指したい意向だ。

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。

http://gogreen.hippy.jp/