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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

物流の労働環境改善・推進運動に600超の企業が賛同

YKK APが積載効率向上のために導入したダブル連結トラック

国土交通省など政府3省が率先し物流の労働環境改善・効率化を推進する「ホワイト物流」運動が今年3月末から始まっているが、10月末時点で賛同を表明した企業の数は600を超えた。背景にはトラック運転者数の不足の深刻化などがあるという。賛同企業リストには花王や日産自動車、イオンといったサステナビリティの先進企業が数多く並ぶ。11月に同運動への賛同を発表したYKK APがその理由に挙げたのは「他人の利益を図らずして自らの繁栄はない」という経営哲学「善の巡環」だ。大型車両を新たに導入するなどの具体的な施策で、労働環境の改善と効率化の実現を目指す。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=沖本啓一)

物流業界のトラック運転者は平成7年に98万人だったが、27年には76万7000人に減少した。30年の有効求人倍率は全職業で1.57倍だが、トラック運転者に限れば3.03倍だという。その要因は荷待ちや荷役による平均労働の長さ。全産業の平均よりも2割も長く、その差は年間450時間以上になる。そこで国土交通省、経済産業省、農林水産省が推進するのが「ホワイト物流」だ。

ホワイト物流推進運動に賛同する企業や団体は「自主行動宣言」を行う。あくまで「自主行動」のため内容や進捗の確認等はなく補助金などの制度もない。宣言をすることで姿勢や具体的な取り組みを関連する協働企業や社会に示すことができ、「(宣言に特化しない)関係省庁の物流の効率化等に関する補助制度が利用できる場合もある」と同運動は説明している。

目指すのは「トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化」と「女性や60代の運転者等も働きやすいより『ホワイト』な労働環境の実現」。賛同を表明することで以下のような効果が期待できるという。

1 業界の商慣行や自社の業務プロセスの見直しによる生産性の向上
2 物流の効率化による二酸化炭素排出量の削減
3 事業活動に必要な物流を安定的に確保
(運転者不足が深刻化する中、トラックの確保が困難なケースが生じています)
4 企業の社会的責任(CSR)の遂行 等

また、トラック運転者不足を背景に、運賃・料金「単価」が上昇しており、
物流コストや仕入価格の上昇圧力が強まっていますが、
5 物流の効率化に取り組むことにより、運転者不足の影響を軽減 することも可能となります。

(以上、ホワイト物流促進運動ポータルサイトより抜粋)

3月末に始まったこの推進運動に、今年10月末までに604企業が賛同した。業種別では日本郵便やヤマト運輸といった運輸・郵便・倉庫業が約230企業。花王、サントリーHD、カルビー、キユーピー、日産自動車などの自動車会社といった製造業が約250企業を占める。

約120企業はNTTドコモやソフトバンクなどの情報通信業、損害保険ジャパン日本興亜といった金融・保険業、イオンを始め小売業など幅広い業種の企業が賛同しており、物流の改善が多くの分野で共通の課題となっていることがわかる。

賛同の背景に「経営哲学」:YKK AP

「パレット積み」により上部に空きがなく効率よく積載した様子

11月に宣言を発表したYKK APは窓のアルミサッシなどを扱うメーカーだ。同社は発荷企業として「物流の生産性向上や働き方改革により、持続可能な物流の実現を目指す」として「自主行動宣言」を策定した。その内容はパレット積みの比率を上げ、荷役時間を削減し労働環境を改善するなど、具体策が盛り込まれている。

YKK APの自主行動宣言内容(取り組み内容)
「ホワイト物流」推進運動に賛同する荷主企業として、以下の実施をすすめることを宣言しました。

取組項目 取組内容
1. パレット等の活用 バラ積みからパレット積みの比率を上げ、
荷役時間の削減を図ります
2. 発荷主(※1)からの
入出荷情報等の事前提供
入出荷日付情報を事前に提供することにより、
荷さばき・検品作業の効率化を図ります
3. 集荷先や配送先の集約 他社との共同配送を提案し、配送効率向上を図ります
4. 納品日の集約 隔日配送化を推進し、配送回数の削減を図ります
5. 異常気象時等の運行の
中止・中断等
異常気象が発生した際やその発生が見込まれる際には、
物流事業者と協議し、無理な運送依頼は行いません
6. 車両の大型化 まとめ輸送により輸送回数の削減を図ります

YKK APでは「ホワイト物流」推進運動の参画を通じ、物流の効率化や生産性向上に向けての取組をさらに推進します。

※1:荷物の出し手側。尚、受け取り側は「着荷主」
<「1.パレット等の活用」詳細>
積載作業負荷が大きい「バラ積み」から、パレットにまとめてから積む「パレット積み」の比率を向上。また、積載容積を最大限に活用することでトラック台数を削減するとともに、作業負荷や荷役時間も削減します。

<「5.異常気象時等の運行の中止・中断等」詳細>
最近多く発生している台風や異常気象、地震等の際には安全第一を念頭に置き、配送の見送り、運行時間帯の変更、迂回ルートの活用や輸送モード変更など状況に合わせた対応を行うことで、安全確保に努めています。

<「6.車両の大型化」詳細>
一運行あたり積載量の大幅な向上を目指し、ダブル連結トラック(最大積載重量:24トン)を2017~2018年度で5台、2019年6月に4台導入し、2020年にも追加導入を予定しております。更には低床車の利用促進も同時に推進しています。

輸送回数を削減するため、物流事業者との連携で最大積載重量24トンというダブル連結トラックの導入を拡大する。他社との共同配送を提案し集荷先や配送先を集約することで効率化を図るなど、一企業の宣言であるだけでなく企業間の連帯を促進している。実際、ホワイト物流促進運動では「自主行動宣言」をすることのメリットとして施策の改善、着実な実施のほか、取引先との協議の促進や業界内での取り組みの促進が挙げられている。

同社は取り組みの背景にYKKグループの経営哲学「善の巡環」があると説明する。

「善の巡環」の根底にあるのは、「事業活動の中で発明や創意工夫をこらし、常に新しい価値を創造することによって、事業の発展を図り、それがお客様、お取引様の繁栄につながり社会貢献できる」という考え方(同社ホームページより抜粋)

同社の場合、事業活動と社会貢献を統合したこの経営哲学こそ、多様なステークホルダーと連携しながら目に見える課題を解決するホワイト物流推進運動に取り組む源泉だろう。

「ホワイト物流」推進運動の実施期間は、トラック運転者の時間外労働の上限規制が導入される2023年4月1日までの予定。期間終了後も、企業・団体が規制より広範囲な取り組みを継続的に実施、検討することが期待される。

沖本 啓一(おきもと・けいいち)

Sustainable Brands Japan 編集局。フリーランスで活動後、持続可能性というテーマに出会い地に足を着ける。好きな食べ物は鯖の味噌煮。