サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

「今の価値観」捉えるマーケティングと企業ブランディング

  • Twitter
  • Facebook

市場の価値観は時代とともに変わる。SDGs、サステナビリティが浸透しつつある今の消費者の価値観をどのように捉え、マーケティングにどう生かし、企業ブランディングに取り入れるのか。26-27日に六本木で開催された「Hakuten Private Event at TOKYO MIDTOWN Think Experience 2019」セミナーでは、青木茂樹・サステナブル・ブランド国際会議アカデミックプロデューサーとSB-Jコラムニストの細田悦弘・中央大学大学院戦略経営研究科 フェローがそれぞれ登壇した。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局)

SDGs-ミレニアル世代のマーケティング

◎青木茂樹
サステナブル・ブランド国際会議アカデミックプロデューサー
駒澤大学 総合情報センター 所長
経営学部 市場戦略学科 教授

◎関龍彦
講談社 第二事業部ファッション・ビューティ編集部 FRaUプロデューサー

1980年代から2000年代に生まれた「ミレニアル世代」は2020年、世界の労働人口の3分の1を占めると言われている。同世代の消費行動はそれ以前の世代とは異なる。

ミレニアル世代は、長引く不況や米同時多発テロの発生、温暖化が深刻化するなど世界情勢が混迷する中、情報技術の進歩により世界がボーダレス化する多様性のある社会で育った。同世代は、ものを所有するより共有する「シェアリングエコノミー(共有経済)」を生活に取り入れ、出世よりワークライフバランスを重視し、社会課題に関心を寄せ、企業に対しても社会的な存在意義(パーパス)があるかどうかという視点で見る傾向が高いとされている。

講談社は昨年12月、世界で初めて女性誌としてSDGs(持続可能な開発目標)を全ページにわたり特集した雑誌『FRaU』を出版。重版され、これまでに約3万部を売り上げている。

サステナブル・ブランド(SB)や電通の調査によると、SDGsの国内の認知度は男性に比べ女性が低い。そんな中でSDGs特集の販売に踏み切った理由について、同誌プロデューサーの関龍彦氏は「女性はSDGsについて知り、いったん腑に落ちるとライフスタイルに取り入れることができる。自分ごとと地球ごとを一体化させることができて、社会を動かす存在になるため」と話した。

『FRaU』はSDGsの情報を正しく広く伝えることを目指し、持続可能性な食を考える体験型イベントを『料理通信』と共催するほか、スタディツアーやSDGsアワードも行っていく。10月中旬には、海洋プラスチックごみをテーマにした特集も発売する予定だ。

「ミレニアル世代の価値観はこれからの時代、当たり前になってくる。しかしミレニアル世代だけでなく、それ以上の世代にも知ってもらいたい。気候変動防止を求めて学校ストライキを行うスウェーデンの16歳、グレタ・トゥーンベリさんたちの動きを見ると、大人の責任として『知らない』と言えない」と関氏は語った。

SB国際会議 アカデミックプロデューサーの青木茂樹氏は、世界の先進企業の動向について触れ、「65%の消費者は社会的、環境的課題に配慮したブランドの商品を買いたいと考えているが、実際にそうした商品を買うのは26%しかいないと言われている。そんな中で、世界の先進的な企業は、その差が生まれる責任はブランドにあると考え、その差を埋めることに着手し始めている」と紹介。商品やデザイン、コミュニケーション領域でイノベーションを起こし、企業自らが動き始める時がきている。

サステナビリティ時代の企業ブランディング

◎細田悦弘 
中央大学大学院 戦略経営研究科 フェロー
一般社団法人日本能率協会主任講師

◎外丸 純子
コーセー 経営企画部コーポレートコミュニケーション室サステナビリティ戦略課 主任

サステナビリティ時代の「良い会社」とはどのような会社だろうか。SB-Jコラムニストの細田悦弘氏は、現代においては「収益性・成長性・社会性」の3つがその柱になると説明する。時代によって社会的な環境や価値観は変化し、求められる「豊かさ」「幸せ」も変化する。

時代に的確に対応し、自発的・主体的に社内が動き競争力を持つ(シード権を持つ)ことが、サステナビリティに企業が取り組む意義だ。どれだけいい人材がいて資金力があり、製品が良くても、サステナビリティを無視すれば競争の前に予選落ちをする。

具体的な取り組み事例を紹介したのはコーセーのサステナビリティ戦略課・外丸純子主任。同社は創業者、小林孝三郎氏の座右の銘「正しきことに従う心」を理念とし、コーポレートメッセージ「美しい知恵 人へ、地球へ」を掲げる。事業領域の化粧品は一般的には健康な人たちがターゲットだが、特殊なファンデーションの利用によって医療との境界領域におけるQOLの向上に役割を持つことができるという。

さらに、基本的CSRだけでなく、ビジネスそのもので現代社会の期待を捉える事例として雪肌精SAVE the BLUE Projectを紹介した。キャンペーン中に顧客が購入した商品の容器の、底の面積ぶんだけ珊瑚の森が広がるという環境保全活動だ。

コーセーの事例を踏まえ「経営資源がもっとも有効活用されるのは、自社の『らしさ』が発揮された社会課題解決」と細田氏は話す。「プレーンな社会貢献(CSR)、事業による社会課題解決(CSV)、そこに『自社らしさ』を加え、速やかにレッドスター・ゾーン(上・写真の図)へ導くことで、企業のサステナブル・ブランディングが実現される」(細田氏)