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世界のSDGs達成度ランキング、日本は15位 昨年と変わらず

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国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)などは28日、世界のSDGs達成度ランキングを発表した。日本は162カ国中15位。昨年と順位は変わらず、依然としてジェンダー平等や責任ある消費・生産、気候変動対策、パートナーシップに大きな課題があると指摘された。1―5位はデンマーク、スウェーデン、フィンランド、フランス、オーストリアの順。報告書は各国に対し、SDGs達成のために政策の変革が必要な時だと強く呼びかけている。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=小松遥香)

ランキングは、SDGsが発効した2016年から毎年、SDSNと独ベルテルスマン財団が報告書として発表している。今回の報告書『サステナブル・ディベロップメント・レポート2019――SDGs達成のための変革』は、今年9月の国連総会中に各国首脳が参加し、過去4年間の総括を行うSDGサミットの開催を意識し、国単位での取り組み強化を呼びかける内容となっている。

1位はデンマーク 言葉だけではなく、行動を

最下位は中央アフリカ。米国は35位、中国は39位だった

報告書は、17目標すべての達成に向けて順調に進んでいる国はないとし、ランキング上位の国でさえも目標12「つくる責任 つかう責任」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさも守ろう」に関しては達成に向けた取り組みが遅れていると指摘。とりわけ、目標14を達成していると評価された国は一つもなかった。

現在、G20および人口が1億人以上の43カ国の中で、SDGsの達成に向けて動くことを国として公式発表しているのは33カ国。SDGsに関連する取り組みを予算案に盛り込んでいる国はわずか18カ国しかない。ベルテルスマン財団のアールト・デ・ゲウスCEOは「リップサービスで貧困や教育の機会格差は解決しない。行動でしか解決できない」と話し、各国に言葉と行動のギャップを埋める努力をするよう求めている。

また、高所得国に対し、自国の資源需要や租税回避などの行為によって、途上国などのSDGs達成を妨害するといった環境・社会経済的スピルオーバー効果を生み出さないよう警鐘を鳴らしている。

今回、OECD加盟国のなかではオーストラリアが最下位の38位だった。化石燃料の輸出などによる環境負荷が課題と見なされ、目標12や目標13の達成度が低かった。

日本

日本の達成度を評価したもの。赤は「最大の課題」、オレンジは「重要課題」、黄色は「課題が残っている」、緑は「SDGsが達成できている」ことを意味する。目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」は昨年、黄色だったが、今年は緑に変わった。

2017年には11位だった日本だが、2018年と同様に今年も15位だった。日本にとって最大の課題と指摘されている目標は、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、目標12「つくる責任 つかう責任」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」。

細かい評価項目を見ると、女性国会議員の数の少なさ、男女の賃金格差、無償労働を行う時間の男女格差、全エネルギー消費のうち再生可能エネルギーが占める割合、パルマ比率(上位10%の所得層が得ている所得と下位40%の所得の比率)、電気電子機器廃棄物の量、輸入食料・飼料に伴う窒素排出量、エネルギー関連のCO2排出量、車両以外の機器に使われるエネルギーから出る炭素比、水産資源の乱用、絶滅の恐れのある種のレッドリスト、金融秘密度指数などが「最大の課題」と評されている。

報告書は、日本に関して、経団連がSDGsの達成を企業行動憲章に盛り込み、SDGsの達成を目指すよう大号令をかけたことで、日本企業がSDGsの掲げる課題領域において技術革新を進めていることを注目すべき事例だと評価している。

世界で広がる格差

報告書によると、世界的に格差が深刻化しており、先進国、途上国の両方において政策の抜本的な変革が必要という。

SDGsが記載されている国連の指針「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、その前文で、貧困について「我々は、極度の貧困を含む、あらゆる形の貧困を撲滅することが最大の地球規模の課題であり、持続可能な開発のために不可欠な要素だと認識している」と記載している。

報告書は、サハラ以南のアフリカを含めいくつかの国では貧困の終焉に向けて急速に前進しているが、極度の貧困は変わらず最大の課題であると指摘する。現に、世界の半数の国では目標1「貧困をなくそう」の達成度を計測できずにいる。

またSDGsの進捗と逆行し、世界の多くの場所で紛争が続いている。現代の奴隷や刑務所への収容を待つ拘留者の数は、特に低所得国において多いままとなっている。世界の50カ国以上で、汚職や報道の自由が悪化傾向にあり、中所得国や高所得国も含まれている。

SDSN所長で米国の経済学者ジェフリー・サックス氏とゲウスCEOは「段階的な進展や政策転換では不十分だ。各国には、SDGsおよびパリ協定が掲げる目標を実現するために、革新的な変化が求められている」と強調している。

小松 遥香 (Haruka Komatsu)

アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。一般企業で働いた後、出版社に入社。2016年から「持続可能性とビジネス」をテーマに取材するなか、自らも実践しようと、2018年7月から1年間、出身地・高知の食材をつかった週末食堂「こうち食堂 日日是好日」を東京・西日暮里で開く。前Sustainable Brands Japan 編集局デスク。