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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

社会価値の創造と事業改善をむすぶマネジメントとは

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SB2019Tokyo

セッション「企業の社会的価値を最大化する『インパクト・マネジメント』とは」。左からソーシャル・インベストメント・パートナーズの鈴木栄氏、SOMPOホールディングスの市川アダム博康氏、ジョンソン・ エンド・ジョンソン日本法人グループの津野桂氏、ファシリテーターの今田克司氏

「サステナブル・ブランド国際会議2019東京」のセッション「企業の社会的価値を最大化する『インパクト・マネジメント』とは」では、事業や活動で生じた社会的・環境的な効果である「社会的インパクト」をどのように向上させ、社会課題の解決や事業改善に結びつけられるのか、そのマネジメントのあり方について議論された。(オルタナ編集部)

セッションには、ジョンソン・ エンド・ジョンソン日本法人グループ グローバル・コミュニティ・インパクト グローバルストラテジー・アジアパシフィックの津野桂ディレクター、SOMPOホールディングス兼損害保険ジャパン日本興亜CSR室の市川アダム博康課長、ソーシャル・インベストメント・パートナーズの鈴木栄理事が登壇。CSOネットワークの今田克司代表理事がファシリテーターを務めた。

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、本業のビジネスを通じたヘルスケアの提供のほか、技術やサービスを世界的な公衆衛生の向上に結びつける「グローバル・パブリックヘルス」事業、また社会のなかでサービスの行き届かない人びとへの医療アクセスを向上させる「グローバル・コミュニティ・インパクト」事業などを通じて社会貢献事業を進めている。

同社では、一つひとつの社会貢献プログラムにおいて成果を追求するために、「ロジックモデル」と呼ばれる枠組みを設けている。成果を定めたうえでそれに必要な施策を考えていく手法だ。

津野氏は、「プログラムを始める前に、理論的な因果関係を予測しておくことが、最終的な成果を達成する上で有用な方法だ。非営利団体などと協働するうえで、やりたいことだけでなく、どのような成果が得られるかといった点を明確化するためにも必要な視点」と述べる。

SOMPOホールディングスでは、CSRの体系をグローバルな取り組みと関連付けて進めている。「持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)」への参加(1995年)や、ESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮した保険引き受けを行う「持続可能な保険原則(PSI)」への署名(2012年)のほか、国際的なイニシアティブへの参加を積極的に行っている。

CSRの3つの重点アプローチとしては、「金融機能やデジタル技術」「NPO/NGOなどとの連携」「文化・芸術を通じた取組み」を設定している。市川氏は「国際的な取り組みに参加することで最新の潮流に触れ、社会課題を確認している」と述べる。

具体的な社会貢献事業として、保険の約款をWeb化することによって節減した経費をNPOに寄付する取り組みや、交通安全プロジェクトなどを紹介した上で、「取り組みをできるだけ数値換算することで、外に発信すると同時に社内を巻き込んでいくことが重要だ」と指摘した。

ソーシャル・インベストメント・パートナーズ(SIP)は、「日本ベンチャーフィランソロフィー基金」に寄付金を集め、その投資先の案件発掘や経営支援、モニタリングの事業を行っている。

SIPの鈴木氏は、従来型の投資からESG投資、インパクト投資、ベンチャーフィランソロフィーなど、社会的投資に関する類型を紹介。グローバルな動向として、従来型投資からインパクト投資へとシフトしていく流れにあると述べた。

鈴木氏は、「投資家は社会的インパクトのある投資案件を求めている」と指摘。またインパクト投資をしている投資家の84%が通常の投資と同等か、それに近いレベルのリターンを期待しているという、インパクト投資に関する国際組織の調査結果を紹介した。

ファシリテーターの今田氏は「社会的なインパクトを重視した制度設計の実装に向けた動きが出てきているなかで、そうした環境をつくるための政府やパブリックセクターの役割も重要」と述べた。

また地域に根差した活動を進める中小企業など、従来から社会的インパクトを重視する発想を持つ日本の企業文化を生かすことなど、「社会が大きく動くための中間支援のあり方を構想し、実践していくことが求められている」と指摘した。