プラ削減とリサイクル「生活者の心に響く」実践とは
SB2019Tokyo
セッション「サーキュラーエコノミーへの挑戦(2)プラスチック問題」。左からファシリテーターの川北秀人氏、花王の柴田学氏、日本環境設計の岩元美智彦氏
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サステナブル・ブランド国際会議2019東京のセッション「サーキュラーエコノミーへの挑戦(2)プラスチック問題」では、世界的に関心の高まるプラスチックの使用量削減やリサイクルの可能性に着目し、循環型経済に向けた実践や課題について議論された。(オルタナ編集部=堀理雄)
セッションには、花王 ESG活動推進部の柴田学マネジャー、日本環境設計の岩元美智彦取締役会長らが登壇。IIHOE(人と組織と地球のための国際研究所)の川北秀人代表がファシリテーターを務めた。
川北氏は冒頭、「環境負荷を削減していくために、どのようなイノベーションが期待できるのか。さらに循環型経済に向けて、消費者・生活者の協力を促すための企業や行政とのコラボレーションをどうつくっていくか」と問いかけた。
花王の柴田氏は「使ったら捨てる、という当たり前を変えたい」と述べ、包装容器におけるプラスチック削減に向けた取り組みを紹介した。
同社の製品は年間1軒当たり40個、全国で20億個が消費されており、そのうち詰め替え・付け替え製品への転換率は本数ベースで84%。販売本数の5本に4本以上は詰め替え・付け替え製品だという。プラスチックの削減量は9万1千トン(大型ダンプ1万台相当)に上る。
「おかえりブロック」という取り組みでは、約8万世帯の家庭の協力により、プラスチックを回収してブロック状の製品に再生。自治体の企画イベントに協力し、ブロックを組み合わせて様々な造形物を製作・展示するといった「リサイクリエーション」の取り組みを進めている。
柴田氏は「生活者の心に響く活動を進めていきたい」と話し、「リサイクルは非競争領域。思いを同じくする企業や自治体などのパートナーと協力して取り組みを進めていきたい」と続けた。
日本環境設計は、「テクノロジー」「コンシューマー」「エンターテインメント」をキーワードに、企業とのコラボレーションを通じて様々な素材のリサイクルを進めている。
古着を回収してバイオジェット燃料を精製する「10万着で飛ばそう!JALバイオジェット燃料フライト」や、使用済み携帯電話や小型家電から抽出した金属で東京オリンピック・パラリンピックのメダルをつくる「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」などに協力している。
岩元氏は「リサイクルに興味を持つ5%の人は、何もしなくても勉強するし行動する。そうではない95%の人を動かすことが大事であり、エンターテインメントにはその力がある。『正しい』から『楽しい』と感じる取り組みを進めている」と話す。
同社では、ポリエステルなどのリサイクル過程で不純物を取り除く技術で劣化を防ぎ、リサイクル前と同じ品質の素材をつくる「水平のリサイクル」を進めている。
「石油など地下資源に依存した大量生産・消費社会では地球が持たない。そうではなく地上資源を循環させる経済圏をつくることで、経済と環境が両立する持続型社会が形成できる」と岩元氏は力を込めた。
川北氏は「私たちの利便性を実現するのにどのようなコストがかかっているのかを可視化していくことは、政策においても重要な領域。国だけの問題ではなく、自治体とも組んで取り組みを進めていくことが必要ではないか」と指摘した。