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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

地域の健康、教育に向き合い人をつくる――未来まちづくりフォーラム③ひとづくりセッション

すべての課題の根本にある「人」と向き合うまちづくりとは、どのような取り組みだろうか。産官学それぞれの役割を掛け合わせるプロジェクトの中で、イオンは地域住民に密着した事業形態や大型のモールという自社の強みを生かす。また高知県とNTTドコモは、互いの弱点を補うコンビネーションを発揮し、過疎地域の課題解決にあたっている。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局)

「ゼロ次予防」のまちづくりをデザイン

人の健康を街づくりからデザインする。産官学の枠組みを超えて、そんな取り組みが進んでいる。「三方よし」の近江商人の心を企業ルーツに持つイオンの基本理念を「お客様を中心に、平和、地域、人間に重点を置く」と説明するのは、イオンの原田野分氏。本社を置く千葉市と連携する「地域エコシステム」の、同社のプロジェクト・リーダーだ。

進行役を務めたイオンの原田野分氏(左)、千葉大学予防医学センター准教授の花里真道氏(中)、イオンモールの渡邊博史氏

「地域エコシステム」が掲げるのは、「デジタリゼーション(IoTやAIの活用)による便利なお買い物」「交通・移動」「ヘルス&ウェルネス」「地域活性」という徹底的に地域住民の目線に立った4本の柱だ。「消費者の生活時間のうち、7-8割は小売り事業者に関わる可能性がある」と原田氏は説明する。住民の生活と密接に結びつくリテーラーが持つ、購買データや生活データに、いかに価値を持たせるかが重要だ。

そこで産官学の枠組みを超えた連携が必要になる。イオンの電子マネーカード「ご当地ワオン」を、千葉市独自の自治体ポイントのプラットフォームとした。これにより得られる購買データは自治体から大学に委託され、地域の健康増進を目的とする研究に役立つという仕組みだ。

イオンのデベロッパー部門を担う企業、イオンモールは全天候型の大型モールを生かしたウォーキングのプログラムや、地域の医療機関と連携しサテライトの診療所を設けるなどの、地域住民の健康増進を主目的としたプロジェクト「ハピネスモール」に取り組む。同社の渡邊博史氏は「予防医学にどう取り組むかもハピネスモールのテーマのひとつ」と話す。

イオンモール宮崎では2018年、モールの床面に歩幅チェックのサインをデザインする、階段スペースに「階段を上りたくなる」童謡などを利用した仕掛けを施す、などの取り組みが行われた。これは同社と協働する千葉大学の予防医学センターの「『健康への気づき』を促す空間デザイン・プログラム」によるもの。同センターの花里真道・准教授は「個人の健康増進を促す一次予防、早期発見早期治療、再発防止という二次、三次予防がある。その前の段階のゼロ次予防に注目が集まっている」と解説した。

地域住民の健康増進プロジェクトというイオングループの施策は、知らず知らずのうちに健康につながる環境を作る「ゼロ次予防のまちづくり」そのものだ。

足を使う課題抽出と最先端の通信技術で教育に向き合う

「Society5.0」と言えば、政府が提唱する未来社会のコンセプトだが、高知県は次年度の予算を作るにあたり独自にSociety5.0を定義したという。IoT、AIを活用したあらゆる分野の課題解決を県の方針として明文化。さらに開発されたサービスを地産外消による雇用創出に生かすという。

一方、NTTドコモは、ドコモ中期戦略2020「beyond宣言」を策定。ドコモの技術を活用し、社会課題解決と地方創生を大きく打ち出している。分野ごとにパートナーを作り、単独企業では為しえない社会課題の解決を図る。

高知県とドコモが包括連携協定を結んだのは2年前だ。同じ方向性の課題解決に向けて意気投合した。協定では大きく分類して6つの具体的な取り組みが検討されたが、そのうちのひとつが「中山間地域の振興に関すること」だった。

高知県の川平洋平氏(左)とNTTドコモの山本和明氏

まずは高知県側が、課題の抽出を行う。それまでの独自の取り組み同様、県の担当者が現場に赴き、当事者から課題をヒアリング、検討するという方法をとった。「かなり泥臭いやりかた」と高知県商工労働部の川村洋平・主幹は言う。特に教育分野での課題に注目し、各市町村の教育委員会に足を運んだ。中山間の過疎地域では、全校生徒が数名という小規模校もあるため、都市部との学習環境に格差が生まれていることがわかった。

「自身の母校も1クラス4、5人という小規模校になっている」と話すのはNTTドコモ四国支社の山本和明氏。ドコモの通信技術で遠隔授業をするというプロジェクトが持ち上がったが、大規模校ならともかく「小規模校同士の遠隔授業は今までになかった」(山本和明氏)ため、どのような課題が出るのか、やってみるまでわからなかったという。

まず現場の教師に理解を求めるため、勉強会を開催した。特に興味を傾けたのは、ある音楽の先生だった。何度か実験を繰り返しながら、小規模校同士で遠隔授業を行い、英語での合唱をしたところ、生徒たちには好評だった。しかし課題も残った。映像と音声のズレが生じていることだ。

進行役を務めたNTTドコモの山本圭一氏

音楽の遠隔授業のあと、「バドミントンを遠隔で教えてほしい」という生徒もいた。「5G通信が始まれば、動きと音声の同期もとれるため、体育のようなリアルタイム性が重要な授業も対応できる」と山本氏は明言する。

川平氏は「今は課題を抽出しながら(プロジェクトを)進めている。今後は新たなツール、交流手段を用意し、最終的には教育環境の格差を解消したい。NTTドコモと連携することによってハード、ソフトの提供だけでなく、すぐに取り組みを始められた」と速度感にも手ごたえを感じた。

また山本氏も「小規模校での遠隔授業が必要ということは想像もできなかった。県庁が課題を抽出することで、5G活用のフィールドが生まれてきた」と、産官連携のメリットを話した。