ESG時代に必要なのは「真の統合思考」
SB2019Tokyo
セッション「企業の情報開示の未来」。左からファシリテーターの安藤正行氏、サステナビリティ日本フォーラムの後藤敏彦氏、コニカミノルタの御給佳織氏、セブン&アイ・ホールディングスの小澤立樹氏
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サステナブル・ブランド国際会議2019東京のセッション「企業の情報開示の未来」では、ESG投資が広がるなか、企業の情報開示はどうなっていくかについて議論された。サステナビリティ日本フォーラムの後藤敏彦代表理事は、「経営トップの指示のもと、きちんとした情報開示がなされなければ、金融の力が発揮できない。『真の統合思考』が求められている」と強調した。(オルタナ編集部=吉田広子)
ファシリテーターはクレアン総合企画グループ安藤正行グループマネジャーが務め、「将来の企業の情報開示はどうなっていくのだろうか」と投げかけた。
コニカミノルタの売上高は1兆円を超え、そのうち海外が8割を占める。外国籍の社員は3分の2に上り、グローバル化が加速している。
同社は、長期環境ビジョン「New エコビジョン2050」を策定し、「カーボンマイナス」の実現を目指す。CO2削減のノウハウはサプライヤーや取引先などにも共有する方針だ。
同社のサステナビリティ推進部社会推進グループの御給佳織グループリーダー(部長)は「省資源、カーボンマイナスに取り組むことは、コスト削減にもつながり、サプライヤーにもメリットがある」と説明する。
CSRレポートの開示のポイントとしては、マテリアリティによる報告、方針の明示、課題認識などを挙げた。特に「経営トップの考えが全体に貫かれていること」が重要だという。さらに「GRIガイドライン」に沿った開示と開示範囲の拡充、ESG評価機関による評価に対応した開示――などが必要だとした。
御給グループリーダーは、「外部機関は開示された情報しか評価してくれない。情報開示がいかに重要かということを社内に伝え続け、少しずつ協力してくれるようになってきた。ESG投資の流れも情報開示を後押ししてくれた」と打ち明ける。
セブン&アイグループは、国内外に約170社の子会社を抱える総合小売りグループで、売上高は約11兆円に上る。事業領域もスーパー、コンビニ、百貨店から金融、ITサービスなどに広がっている。同社は2018年度にはじめてESGに関する情報発信媒体として「コーポレートガバナンス・レポート」を発行した。
セブン&アイ・ホールディングス コーポレートコミュニケーション本部CSR統括部の小澤立樹オフィサーは、「2012―13年ころからSRI評価が重視されるようになってきた」とし、ウェブサイトを拡充するなど情報開示を進めてきた。
コーポレートガバナンス・レポートの制作は「価値共創ガイダンス」を踏まえ、部門横断的に進められた。1年かけて社内の対話を続けたという。
小澤オフィサーは「事業計画や戦略、財務上の気候変動による潜在的な影響を評価することは難しく、財務やサステナビリティ部門などと話し合いを進めていく。部門横断的にやらないと戦略にならない」と話す。
サステナビリティ日本フォーラムの後藤敏彦代表理事は、「『真の統合思考』が求められている」とし、「いい加減な情報開示は金融機関にすぐに見抜かれる。日本ではすでに3割以上がESG投資だが、融資にも広がっている。経営トップの指示のもと、ブランドづくりの一環としての情報開示を心掛ける必要がある」と指摘した。