サステナブルな視点から未来の科学と技術を捉える
セッション「サイエンス×テクノロジーで拓くサステナブルな未来」。左からファシリテーターの川村雅彦氏、ブリヂストンの原秀男氏、オムロンサイニックエックスの諏訪正樹氏
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人と機械との関係性はどうあるべきか――。「サステナブル・ブランド国際会議2019東京」のセッション「サイエンス×テクノロジーで拓くサステナブルな未来」では、AI(人工知能)などデジタル技術の進展を踏まえ、科学技術とサステナビリティとの関係性について議論された。(オルタナ編集部=堀理雄)
セッションには、ブリヂストン コーポレートコミュニケーション本部付フェローの原秀男氏とオムロンサイニックエックス社長の諏訪正樹氏が登壇。ニッセイ基礎研究所客員研究員の川村雅彦氏がファシリテーターを務めた。
ブリヂストンは、売り上げの海外比率が8割を超えており、従業員の多くの割合を外国人が占める。そうしたなか、グローバルなCSRコミットメントとして「Our Way to Serve」を定め、2017年から4年かけて国内外での浸透を進めている。
同コミットメントでは、「最高の品質で社会に貢献」というミッションを掲げ、「モビリティ」「人びとの生活」「環境」という重点領域を設定している。
同社の原氏は、デジタルを活用した変革(トランスフォーメーション)について、「サプライチェーンを顧客(のニーズ)に合致したバリューチェーンに変えることができるという点が重要だ」と指摘した。
「我々のコアコンピテンシー(核となる能力)は材料科学にある。しかし、情報化技術によって新技術の応用の機会や生産性が増していく。ケミカルとデジタルの2つによって『経営の入れ物』としての『Our Way to Serve』を大きくしていきたい」(原氏)
「近未来デザイン」の研究・設計やイノベーション創出を行っているオムロンサイニックエックスの諏訪氏は、オムロン創業者の立石一真氏が1970年に語った未来予測論「SINIC(サイニック)理論」を紹介した。
「社会と技術と科学がお互いに刺激しながらスパイラルに成長していく世の中が当面続くとし、情報化社会を経た後、情報がお互いのニーズに従って最適化される『最適化社会』が到来すると予測した」(諏訪氏)という。
「AIやロボティクス、IoTの世界は、技術の発展を予測することが難しい。そうしたなかで、社会への貢献を考える際に未来から遡って捉える視点が重要だ」と指摘。さらに「サステナブルな社会にとって、人と機械の関係性は避けては通れない問題だ」と述べた。
ファシリテーターの川村氏は「AIなど機械に意思決定をさせるかは難しい判断」と投げかけると、諏訪氏は「何を考えているか分からないという点では、人も機械も変わりはない。問題は、人と機械がコミュニケーションをとれるかどうかだ」と応じた。
川村氏は「社会のサステナビリティはどうあるべきかという視点から、人間の側が機械にどこまで判断させるのかという点について、今後ルールをつくり共有していくことが必要ではないか」と話した。