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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

企業が知るべき国際支援を成功させる3つの視点

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SB2019Tokyo

セッション「地域を持続可能にする。企業が国際支援で取り組むこと。」

企業の国際支援は古くから行われているが、一時的であったり、単に資金援助で終わってしまう場合も多い。「サステナブル・ブランド国際会議2019東京」のセッションでは、ネパールの子供たちの教育機会を広げる2つのNPOの代表、ガーナやインドでの児童労働を防止する活動を行うNPOの代表らが出席し、国際支援を成功させるためのポイントをそれぞれの事例から紹介した。実例から企業が国際支援を行うための重要な視点を探る。(箕輪弥生)

1 持続的な支援を行うための仕組みづくり

NPO法人AAF(Asian Architecture Friendship)は、竹中工務店の支援によりネパールで学校建設と教育の支援をすでに20年以上持続して行っている。竹中工務店の社員でもある同NPOの野田隆史代表理事は「過去には学校だけ作ってすぐに支援を終えてしまう企業もたくさんあった。いかに持続性を担保するかが大事だ」と話す。

竹中工務店ではAAFの活動をきめ細かく社内外に告知し、社会課題に気づく機会をつくる、SDGs(持続可能な開発目標)戦略とリンクさせるなど、企業全体に波及効果をもたらすことで活動の持続化に寄与する仕組みをつくる。

竹中工務店の鈴木頼多CSR推進部専門役は、「今後は学校を拠点に小さな経済が回って、地域が豊かになるエコシステムをどう作っていくか」が課題だと話す。

2 ハードだけでなくソフトの仕組みを共存させる

AAFでは2001年からヒマラヤのふもとの小さな村の学校建設に着手し、現在は1~10年生まで400人の子供たちが学ぶ。卒業生が教師になって戻ってくるなど、より質の高い教育が可能になってきている。

AAFの野田代表理事は「学校や施設を作るだけでなく、教育のシステムを考えないとだめだ」と強調する。そのためにも現地のコミュニティやNGOとの連携は必須だという。

ネパールで育ち、日本の企業で働くNPO法人ユメネパールのライ・シャラド代表理事も学校運営でのソフトの重要性を説く。というのも、ネパールでは学校があっても優秀な先生がいなくて授業を受けられないことが多く、そのため高校を卒業せず、海外に出稼ぎに行く若者が絶えないからだ。

ユメネパールは2校の運営を行っているが、多くの子ども達に質の高い教育を提供したいという想いから、ICTを駆使した新しい教育方法を始める。優秀な教師が集中する首都カトマンズから直接地方の公立学校にオンラインライブ授業を行う。

3 オーナーシップを持つ地域のキーマンと連携する

「一番大事なのは現地で誰とパートナーを組むかだ」とライ代表理事が話すように、ユメネパールは、近隣の市長やカトマンズの大学とも連携し、オンラインスクールを公立学校に導入する。思いを共有する若い市長との出会いはプロジェクトを大きく前進させたという。

ガーナやインドで子どもたちを児童労働から守るために活動しているNPO法人ACEの白木朋子事務局長もガーナ政府との連携について説明した。同NPOは10年前からガーナで活動し、児童労働によって生産されたものではないカカオを使ったチョコレートの売り上げの一部を現地に還元するという仕組みを広げている。

現在、商品化を行う企業は森永製菓をはじめ21ブランド、80品目を超え、2018年 11 月には、ACE はガーナ政府と連携し、児童労働のない地域を広げるための制度作りにも着手した。

白木事務局長は「生産者から政府関係者、NPOまでステークホルダーが一緒にプロジェクトを進めることが重要だ」と地域社会と共同でプロジェクトを進めることの意義を強調した。

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/