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サステナブル・ブランドは社会貢献の副産物

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SB2019Tokyo

左からサントリーの福本執行役員、ブランドコンサルタントのヌイ氏、日本ロレアルのデルフィーネ所長

日本企業は「パーパス」をどう定義すべきか。「サステナブル・ブランド(SB)国際会議2019東京」では、SBのメインテーマであるパーパス(存在意義)について日本、フランス、タイの視点で議論された。ブランドコンサルタントのシリクン・ヌイ・ローカイクン氏は「企業が社会貢献に取り組んだ結果、副産物としてサステナブル・ブランドになる」と話した。(オルタナ編集部=吉田広子)

SB東京総合プロデューサーでオルタナの森摂代表取締役はセッションの冒頭で「この数年でパーパスという言葉が少しずつ広がってきた。そのきっかけの一つにリーマンショックがあるのではないか。経営危機を迎え、自社が何のために存在しているのか、企業は見直し始めている」と投げかけた。

サントリーホールディングスの福本ともみ執行役員は、「パーパスとして当社でオーソライズされたものはない。ただ、パーパスは企業の根源的なものだと捉え、理念体系の一番上にあるミッション『人と自然が響き合う』が存在意義にあたると考えている」と言う。

一方で、「ミッションや理念があっても社員全員が共有し、持ち場で実践し、企業活動として実現していくことは難しい」と話した。

世界最大の化粧品会社ロレアルは、「Sharing Beauty with All」(美のすべてを、共に次世代へ)を掲げ、国際環境NGOであるCDPから3年連続でサステナビリティのグローバルリーダーとして表彰されている。

日本ロレアルリサーチ&イノベーションセンター基礎研究所デルフィーヌ・ブーヴィエ所長は、「トップダウンでサステナブル・プログラムを進めているが、全部門、社員一人ひとりにまで降りていることが成功要因の一つ。CSR担当の数人が頑張るだけでは成し遂げられない」と話した。

デルフィーヌ所長は「化粧品事業は、人を美しくし、自信を深め、日々の役に立つ。だが、これだけでは不十分」と指摘。「健康に貢献し、地球環境を守り、社会にも貢献していくという大きな意味でのサステナビリティが重要である」と強調した。

パーパスは「理由」、ミッションは「方法」

「どのようにグローバルで価値観を共有しているのか」との質問に対して、サントリーの福本執行役員は「入社したころの社員数は約8000人でほぼ日本人。わざわざ価値観を共有する必要がなかったが、グローバル化し、社員の多様性が進み、いまこそ理念を求心力にグループとしてベクトルを合わせていきたい」とした。同社はサントリー大学や森林保全活動を通じて人材教育に力を入れている。

日本ロレアルのデルフィーネ所長は「インターナショナルで良いと思ったことを実行しているが、ローカルの人たちがどう考えているのか、ロレアルは学んでいかなければならない」とし、日本でのシングルマザー支援などの取り組みを紹介した。

タイでSB国際会議を主催するブランドコンサルタントのヌイ氏は、「毎年、日本に来ているが、日本はほかの国よりもパーパスの意味を理解している」と話す。日本語の「生きがい」はパーパスに通じるとし、タイの企業経営者にも広まりつつあるという。

「パーパスは『why』(理由)、ミッションは『how』(方法)、バリューはガイドライン。これらはつながっている。マネジメントの基盤があって、山を登るようにビジョンを達成していくためには、適切なパーパス、ミッション、バリューが必要不可欠である」(ヌイ氏)

ヌイ氏は「『サステナブル・ブランド』とは、永遠に続くブランドではなく、社会の持続可能性をサポートできるブランドという意味。企業が社会に貢献して生まれた副産物がサステナブル・ブランドだと思う。そしてそれがパーパスではないか」と話した。

吉田 広子 (よしだ・ひろこ)

株式会社オルタナ オルタナ編集部 オルタナ副編集長
大学卒業後、ロータリー財団国際親善奨学生として米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。2007年10月に株式会社オルタナに入社、2011年から現職。

「オルタナ」は2007年に創刊したソーシャル・イノベーション・マガジン。主な取材対象は、企業の環境・CSR/CSV活動、第一次産業、自然エネルギー、ESG(環境・社会・ガバナンス)領域、ダイバーシティ、障がい者雇用、LGBTなど。編集長は森 摂(元日本経済新聞ロサンゼルス支局長)。季刊誌を全国の書店で発売するほか、オルタナ・オンライン、オルタナS(若者とソーシャルを結ぶウェブサイト)、CSRtoday(CSR担当者向けCSRサイト)などのウェブサイトを運営。サステナブル・ブランドジャパンのコンテンツ制作を行う。このほかCSR部員塾、CSR検定を運営。